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第33話 二人くらいは


「辱められながら……ですか」

「彼らは自分たちの利益のためなら、他人の尊厳や想いなど平気で踏みにじるのです。そして、その中で死んでいった者の恨みや絶望さえも自分たちの立場を優位にするため利用する。そうした利害関係の中で命を奪われるくらいなら、魔物の本能のままに殺された方がマシだと私は考えているのです」

「そう――ですか」


 僕の返事に、サナは微笑む。


「だけど私にはイル君がいます。あなたがいる限り、私は何も怖がる必要はない。そう信じているのです」

「……………………分かりました。僕に任せてください」

「うん? 今ちょっと沈黙が長かったのですよ? 大丈夫なのですか?」

「だだだ大丈夫ですよ。あ、安心してくださいよ」


 しまった。

 こんなに信頼されちゃって大丈夫なんだろうか。


 サナに僕が守るから大丈夫って言いすぎたかもしれない。


 大した実戦経験もないのに自分のハードルを上げすぎた。


 僕が倒したのはせいぜい黒服のチンピラ数名と……あのオークはまあ、なんとかなった。

 人間その気になれば案外なんとかなるのかもしれない。僕の潜在能力に期待しよう。


 自分で自分をなだすかしていると、サナが小さくあくびをした。


「明日に備えてそろそろ寝ましょうか、イル君」

「ええ、僕もそうしたいところですが―――しかし」


 僕は部屋の壁際を見た。


 そこにはまあまあの存在感を放つベッドが――ひとつ。


 どういう気の利かせ方だよ、メイリャさん。

 まさか僕とサナを同じベッドに―――いや、違うな。


 おそらくこれはサナ一人のためのもの。執事たる僕は床で寝るべき……というか、執事なのだから寝ずに主人の番をするのが当然というわけか。


 寝ることさえ甘えだとする、メイリャさんのメイド根性を垣間見た気がする。


「仕方ありませんね。イル君、今日は疲れたでしょう。ベッドで休むのです」

「えっ⁉ いやいやいや、僕は執事ですよ。お嬢様を差し置いて僕一人がベッドで眠るなんてできるわけないじゃないですか」

「ああ、いえいえ、大丈夫ですよ」


 サナは言う。


「あのベッド、二人くらいは寝れそうです」



※※※



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