第25話 収集癖
翌日。
結局昨日はサナとベッドの上でだらだらしながら過ごしてしまった。
ベッドの上で―――だらだら。
なんか卑猥な響きだな……。別にやましいことはなかったんだけど。
……本当だって。信じてよ。
「イル君、考え事ですか?」
サナの声で、僕は我に返った。
「あ、いや、なんでもありませんよ」
「そうですか? 悩み事があるなら相談してくださいね?」
言いながら、サナは洗濯かごから洗濯物を取り出し、僕に手渡す。
「ありがとうございます、お嬢様」
僕はお礼を言って、皺を伸ばしたそれを物干し竿にひっかける。
そして再びサナの方を見ると、サナは既に次の洗濯物を両手で握っていた。
それから無邪気な笑顔を浮かべた間、僕にそれを手渡す。
「はい、イル君」
「……お嬢様、洗濯物など僕一人でやっておきますよ? わざわざお手伝い頂かなくても大丈夫ですから」
「……それはつまり、私が足手まといだということなのですか?」
サナが唇を尖らせながら言う。
「い――いえ、そういうわけではりありませんが」
慌てて弁明すると、サナは再び無邪気な笑顔を浮かべた。
「冗談なのです。とにかく、私はイル君と一緒にお洗濯がしたいのです。これは主人たる私の命令なのですから、イル君に拒否権はないのですよ?」
「……分かりました」
やれやれ、そういうことなら仕方ない。
それに、隣にサナが居ることに幸せを感じないわけでもないし。
っていうか、むしろずっと居てほしいし。
洗濯物をやってるだけで一日が終わっちゃったとしても、まあ、それはそれでいい気もするし。
そこでふと思い当たる。
サナが突然洗濯物を手伝うと言い出したのは、まさか昨日の――僕がサナの下着を前に動揺したことが原因か?
僕はもう一度サナの顔を見た。
「どうしました?」
サナは笑顔のまま首を傾げる。
「いえ、何も……」
考えすぎだろう。
真実はサナの胸の内にある、ということにしておこう。
「ほらイル君、次の洗濯物ですよ――っと、これは私が干しておきますねっ!」
サナは慌てたように洗濯物を背後に隠す。
しかし、剣の稽古で鍛えた僕の動体視力は捉えていた。
その洗濯物が、やはり布面積の少ない下着らしきものだったということを。
めちゃくちゃ股上が浅いタイプだったけど……お嬢様、ひょっとしてそういう下着しか持ってないのか?
今まであまり気にしてなかった。もっと洗濯物を干すときに気にしておけばよかった――いや、それはそれで執事として間違っている気がする。
別にお嬢様にエロ下着の収集癖があったっていいじゃないか。
この件についてはこれ以上考えない。僕はそう心に誓った。




