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第21話 笑っていた方がいい


 ロデリアさんはため息をついて項垂れた。


「……分かりました。では、この辺りで失礼しましょう。我々は戦争を止めるため、別の方法を考えます」


 顔を上げたロデリアさんは、悲しそうに笑っていた。


「すみません、力になれなくて」

「いえ、我々も失礼なことをしました。サナ様がご家族を失われたのは我々の責任です。その点に思慮が足りませんでした。……では、イル様。お茶をありがとうございました。美味しかったです」

「それはどうも。あの……無責任なことを言いますけど、あなたの考えも間違っていないと思います。僕の住んでいた家には、他人を多く殺した人間が偉いって考える人たちしかいませんでした。でも僕は、そういうのあんまり理解できなくて……それよりも、みんなが平和に生きていられる方が良いと思ってます。だから、頑張ってください。ロデリアさん」


 ソファから立ち上が棟としていたロデリアさんは、一瞬動きを止めて、今度こそ微笑んだ。


「私もあなたと同じ考えですよ、イル様。みんなが平和に暮らせるよう、頑張ってみますね」


 その笑顔からは最初に受けた高圧的な印象はなくて、むしろ見た人を安心させるようだった。


「あ……ロデリアさん、笑っていた方がいいですよ、多分」

「え? ああ、そうですか? ありがとうございます、イル様。サナ様にもよろしくお伝えください」

「はい、伝えます」


 僕が言うと、ロデリアさんは少し頭を下げ、客間を出ていった。

 その後を追おうとした僕だったが、見送りはいりませんからと言われ、立ち止まった。

 戦争が起こる、か……。

 当然僕の父親や兄も参加するのだろう。ナール王国の主戦力は屈強な騎士たちだ。

 きっと大勢の人間を殺して、多くの勲章を手に入れるのだろう。

 もしくは殺されてしまうか……いや、想像つかないな。

 さて、そんなことより僕は―――サナの様子を見に行かなければ。





 サナの部屋に行くと、その扉が少し開いていた。

 隙間から部屋の中を覗くとベッドに顔をうずめているサナの姿が見えた。

 僕はドアを軽くノックした。


「お嬢様、入りますよ?」


 サナはベッドから顔を上げなかったけれど、頷いたように見えたので、僕はそのまま部屋に足を踏み入れた。

 ベッドに近づくと、ようやくサナが少しだけ顔をこちらへ向けた。

 その目は真っ赤に充血していて、ついさっきまで泣いていたのだということがはっきり分かった。



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