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第2話 オークの襲撃

※


 隣町までは歩いて数時間もかからない。

 

 買い物はすぐに終わった。


「にしてもゴブリンの耳なんて、何に使うんだろう?」


 まだ屋敷にいくつか残っているはずなのに。


 そんなことを考えながら、隣町から屋敷へ向かう細い道を歩いていた。

 深い森を通っているこの道は人目につきにくく、夜だと盗賊に襲われる危険もあった。

 今はまだ昼過ぎだし、そんな心配は―――。


 いやな予感がして足を止めた。


 その瞬間、森の陰から飛び出してきた巨獣が、僕めがけて片腕を振り下ろした。


「……!?」


 人型の巨獣、オークだ。


 丸太のように太い腕が地面にヒビを入れた。

 オークの澱んだ両目が僕を見る。


 明らかに狙われてますよね、これ……。


「オオオオオオ!」


 オークが叫び、僕に襲い掛かる。


 この森にこんなモンスターがいたなんて聞いてないし、多分今まで出現したことはない。

 剣も使えない僕じゃ、絶対に殺される! ……そもそも今手元に剣はないし、使えたところで殺されることには変わりないだろうけど。


 地面を転がりオークと距離を取る。


 敵のリーチは僕の倍はある。


 戦うより逃げる方が良いだろう。


 しかしどうやって逃げ切れば―――。


 一瞬僕は逃げ道を探した。

 それが命取りだった。


 急接近して来たオークに気付けなかった僕は、その腕で吹き飛ばされていた。


「ぐはっ!」


 全身が痺れるような衝撃。

 地面に叩きつけられ、目の前が真っ赤になった。

 口の中に込み上げてきたものを吐き出すと、血だった。


「い……痛い!」


 オークは僕に追撃をかけようと、再び接近してくる。

 立とうとして腕を地面についた瞬間、再び激痛が走る。ダメだ、腕が折れたみたいだ。

 剣の才能がなかったばかりに雑用係を押し付けられ、挙句こんな森の中で死ぬなんて――。

 僕は無意識の内に、迫りくるオークめがけ左手を伸ばしていた。


「――【放水(ヴァッサ)】」


 魔法陣が発動し、勢いよく水が放出される。

 水はオークの頭部に直撃し、オークは驚いたように足を止めた。

 【放水(ヴァッサ)】は元々洗いものをするために組んだ魔法だ。こんなときに役立つとは思わなかった。

 僕は動きを止めたオークに接近し、左手を当てた。


「【粉砕(コンテリツィオ)】」


 再び魔法が発動する。


 本来は食材を粉々にするときに使う魔法――それが生物の体内めがけて発動されればどうなるか。


「グオオオオオ!」


 オークは目や口から血を噴き出しながら地面に倒れこみ、しばらく痙攣していたがやがて動かなくなった。


 な―――なんとかなった。


 僕はその場にへたり込んだ。


 心臓が今更高鳴りはじめ、全身から冷や汗が出た。


 急いで帰らないと、少しでも遅れれば何を言われるか分からない。


 オークの死骸をそのままに、僕は痛む身体を必死に動かし屋敷への帰路を急いだ。



※



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