表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/72

第2話 オークの襲撃


 隣町までは歩いて数時間もかからない。

 

 買い物はすぐに終わった。


「にしてもゴブリンの耳なんて、何に使うんだろう?」


 まだ屋敷にいくつか残っているはずなのに。


 そんなことを考えながら、隣町から屋敷へ向かう細い道を歩いていた。

 深い森を通っているこの道は人目につきにくく、夜だと盗賊に襲われる危険もあった。

 今はまだ昼過ぎだし、そんな心配は―――。


 いやな予感がして足を止めた。


 その瞬間、森の陰から飛び出してきた巨獣が、僕めがけて片腕を振り下ろした。


「……!?」


 人型の巨獣、オークだ。


 丸太のように太い腕が地面にヒビを入れた。

 オークの澱んだ両目が僕を見る。


 明らかに狙われてますよね、これ……。


「オオオオオオ!」


 オークが叫び、僕に襲い掛かる。


 この森にこんなモンスターがいたなんて聞いてないし、多分今まで出現したことはない。

 剣も使えない僕じゃ、絶対に殺される! ……そもそも今手元に剣はないし、使えたところで殺されることには変わりないだろうけど。


 地面を転がりオークと距離を取る。


 敵のリーチは僕の倍はある。


 戦うより逃げる方が良いだろう。


 しかしどうやって逃げ切れば―――。


 一瞬僕は逃げ道を探した。

 それが命取りだった。


 急接近して来たオークに気付けなかった僕は、その腕で吹き飛ばされていた。


「ぐはっ!」


 全身が痺れるような衝撃。

 地面に叩きつけられ、目の前が真っ赤になった。

 口の中に込み上げてきたものを吐き出すと、血だった。


「い……痛い!」


 オークは僕に追撃をかけようと、再び接近してくる。

 立とうとして腕を地面についた瞬間、再び激痛が走る。ダメだ、腕が折れたみたいだ。

 剣の才能がなかったばかりに雑用係を押し付けられ、挙句こんな森の中で死ぬなんて――。

 僕は無意識の内に、迫りくるオークめがけ左手を伸ばしていた。


「――【放水(ヴァッサ)】」


 魔法陣が発動し、勢いよく水が放出される。

 水はオークの頭部に直撃し、オークは驚いたように足を止めた。

 【放水(ヴァッサ)】は元々洗いものをするために組んだ魔法だ。こんなときに役立つとは思わなかった。

 僕は動きを止めたオークに接近し、左手を当てた。


「【粉砕(コンテリツィオ)】」


 再び魔法が発動する。


 本来は食材を粉々にするときに使う魔法――それが生物の体内めがけて発動されればどうなるか。


「グオオオオオ!」


 オークは目や口から血を噴き出しながら地面に倒れこみ、しばらく痙攣していたがやがて動かなくなった。


 な―――なんとかなった。


 僕はその場にへたり込んだ。


 心臓が今更高鳴りはじめ、全身から冷や汗が出た。


 急いで帰らないと、少しでも遅れれば何を言われるか分からない。


 オークの死骸をそのままに、僕は痛む身体を必死に動かし屋敷への帰路を急いだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご愛読ありがとうございます!
気に入ってくれた方は
『ブックマーク』
『☆評価』
をいただけると嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ