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転生者なんか送ってくるな! ~看板娘(自称)の異世界事件簿~  作者: 榊 謳歌
Case3 『リアルかくれんぼ』

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21 『勝手に戦え!』

「これが、その『課題』ですか?」


 ワタシと彼女(?)は、対戦型だという『課題』を挟んで対峙した。


「ああ、勝った方だけが『お宝』を獲得できる」


 ワタシの目の前で『勇者』さんは笑う。その笑みは不敵で、それだけで、彼女が修羅場を何度も超えてきた人だと理解できた。その笑顔のまま、勇者さんは言った。


「じゃあ、時間も限られていることだし、さっそくやるかい?」

「…そうですね」


 とは言ったけれど、このまま勝負を始めても勝てる気はしなかった。


「そういえば…ワタシ、あなたの名前も知らないのですけれど」


 この元男の現女『勇者』さんと話をする時は、いつもばたばたとしていた。最初に会った時はこの『リアルかくれんぼ』が始まる直前だったし、その次は、この人に鬼をけしかけられた。


「そういえばそうだったね。俺の名はカールだ。よろしくな」


 カールさんは、そこで快活(かいかつ)に笑った。呪いとやらで性別が女性になったそうだが、この笑みがあるなら男でも女でもモテたんだろうな。そんなカールさんに、ワタシも名乗る。


「ワタシは、花子ですよ…田島花子です」

「そうか、いい名前だな」

「誰にでもそう言ってるんじゃないですか?」

「ああ、名前ってのは親から最初にもらうプレゼントじゃないか。だったら、それはステキなもののはずだろ?」


 カールさんは、またも笑う。少し話しただけだが、少しだけこの人のことが分かった。この人の主軸は、おそらくブレない。それが、この人の強さの土台になっている。

 どんな『課題』かはわからないけど、この人の軸を崩さなければ、ワタシのようなただの看板娘には勝機はないはずだ。確信めいたそんな予感を、ひしひしと感じていた。


「さて、どんな『課題』なんだろうな」


 カールさんは、本当に楽しそうにしていた。そして、テーブルにかけられていた布を捲る。『課題(対戦型)』と書かれた看板は立っていたが、この場にあったテーブルには布が被せられていてその内容が分からなかった。


「…おや?」


 そこで、初めて『勇者』さんの眉が動いた。けど、それ以上にワタシの眉が動いていた。

 いや、困惑するよ、こんなの。


『勝手に戦え!財宝争奪ゲーム!』


 テーブルには、でかでかとセンスを疑う文字が羅列(られつ)されていた。

 誰だよ、この『課題』を作ったの。戦わせるなら責任くらい持ってよ。


「ええと…なになに?」


 勇者さん…カールさんがテーブルに置かれていた紙に目を通す。ワタシも、彼女(?)と同じようにその紙を覗き込む。どうやら、そこに記されていたのは、この対戦型『課題』のルールだった。


「この三枚のカードと、小さな箱…それから、この二つの三角錐を使うようだな」


 言いながら、カールさんはテーブルの端に置かれていたその三つ…三枚のカードと小さな箱、そして、二つの三角錐を手に取った。


「…これを使って勝負をするということですか」


 テーブルの反対側には、同様のその三つが置かれていたので、ワタシはそれらを手に取った。

 そして、テーブルに置かれた紙にはこうルールが記されていた。


『財宝探しゲーム』

『ルール1 海賊と兵士に分かれる。海賊は三枚のカード、『海』『山』『街』を裏返し、その一つに財宝(三角錐)のどちらか一つを隠す(箱に入れ、カードの上に置く)』


『ルール2 海賊が『海』『山』『街』のどこに財宝を隠したのか、兵士は当てる。兵士が当てられなければ、財宝は海賊のものとなる(海賊は得点を獲得)。逆に、兵士が財宝の()()を突き止めれば、海賊は財宝を奪われる(兵士に得点を奪われる)』


『ルール3 財宝をどこに隠すかで、海賊が獲得できる得点が異なる。『海』なら1点『山』なら2点、『街』なら3点(海賊が兵士に得点を奪われる場合も、その得点となる)』


『ルール4 1ターンで交互に海賊と兵士を行う。これを3ターン繰り返し、最終的に獲得した得点の高い方が勝者となり、『お宝』を獲得できる」


『ルール5 敗者はこのゲームそのものから脱落することになる』


「…負けた方はリタイアなんですか!?」


 最後のルールを確認したワタシは、思わず声を出してしまった。


「どうやらそのようだ。まあ、俺は負けないけど」

「…自信満々ですね」


 これ、要はゲームだよ?

 しかも、体を使ったゲームじゃない。さらに言うなら、運の要素がかなり高い。これなら、どっちが勝ってもおかしくないはずだ。

 …にもかかわらず、この人は余裕の態度を崩さない。


「おや、まだ追加のルールがあったようだ」


 勇者さんが言ったように、最後に一つ、ルールが付け加えられていた。


『ルール6 赤い財宝を隠せば、得点は上記の通りとなる。ただし、青い財宝は得点が反転する。『海賊』が青い財宝を隠し、それを『兵士』に発見された場合、『海賊側』が『兵士側』の得点を奪うことができる』


「このゲームって、基本的に『海賊側』じゃないと得点は奪われないルールみたいですけど…この青い財宝を使った時だけ、『海賊側が兵士側から得点を奪える』んですね」


 ワタシは、言いながらルールを脳内で反芻(はんすう)していた。

 少しややこしいが、理解できないほどではない。

 要は、『兵士』に青い財宝の場所を当てられれば、『海賊』は『兵士』から逆に得点を奪えるということだ。


「ルール6はまだ続きがあるみたいだけど」


 勇者さんが言ったように、ルール6はそれで終わりではなかった。


『ただし、青い財宝を使って『兵士』に当てられなかった場合、『海賊』は1000ポイントを『兵士』に奪われる』


「バラエティーの最後に出るクイズかよ!?」


 なんで1000点も奪われないといけないんだ!?

 怖くて使えないよ、この青い財宝!

 …いや、このルール6は完全に後付けだ。

 ほぼおふざけで追加されたな。


「よし、大体は把握したよ。さっそくだけど、始めようか」


 ワタシがツッコミを入れている間に、カールさんは心の準備も終えたようだ。

 猛禽のような視線で、カールさんはワタシを見据えていた。

 …軽くちびりそうなくらい怖いんですけど。


「花子ちゃんは先に『海賊』がやりたいかい?」

「…ワタシ、『兵士』がいいです」

「そうか、俺は最初は『海賊』がいいんだけど…とりあえずじゃんけんしようか」

「…なぜですか?」


 先攻め後攻めに関しては特に規定はなかったはずだ。

 けど、勇者さんはじゃんけんを求めてきた。


「…しょうがないですね」


 この異世界ソプラノにもじゃんけんは伝わっていた。おそらく、ワタシたちよりも前に来た日本人の転生者が教えたんだろう。

 そして、ワタシが『兵士』に、カールさんが『海賊』になった。


「さあ、ゲームを始めよう」


 カールさんは、さらに不敵に微笑む。

 こうして、『勇者』VS『看板娘』の火蓋が切って落とされた。

 …自分で言うことじゃないけど、こんなお祭りの時じゃないと絶対に実現しないカードだな。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

少し感覚が開いてしまい、すみませんでした。

『謎解き令嬢VS謎を解かせたくない執事』などという新しい話を書いておりました。

そちらも読んでいただけますと、とても嬉しいです。

それでは、次回もよろしくお願いいたしますm(__)m

…大谷は、なぜあの体勢でホームランが打てるのでしょうね。

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