122 『なんだか知らないけどとにかくよしだよ!」』
「ワタシたち二人でさ…ううん、ワタシたち三人でぶっ飛ばしちゃおうよ、こんな意地悪な運命なんてさ!!」
ワタシは、覚悟と決意をマシマシで台詞にトッピングした。
だって、絶対に助けるんだ。
リリスちゃんも『花子』も。
二人とも、その手を放さない。
みんなで手をつないで帰って、一緒にご飯を食べるんだ。
みんなで揃って食べるご飯が、最っ高に美味しいからね!
「だから、お願いりりすちゃん…ワタシに、力を貸して」
「私にできることならなんでもしますけど…そろそろ離れてくれませんか、花子さん」
不退の決意を語る間もずっとワタシはりりすちゃんに頬ずりをしていたのだが、りりすちゃんは拒絶をする猫のようなポーズでワタシを押し返そうとしていた。
…さすがにしつこいとウザがられたようだ。
マズい、りりすちゃんのもちもちほっぺに我を失っていた。そろそろ自重しないと、この子の中の健全で立派な花子ちゃん像にヒビが入ってしまうではないか。
「ですが、花子さん…どうやってリリスさんたちを助けるんですか」
物理的、精神的に一定の距離を保ちながら小さなりりすちゃんが問いかける。
そんなりりすちゃんに、ワタシは自信満々に言った。
「『神託』に従えばいいんだよ」
「…『神託』、ですか?」
そこで、りりすちゃんは眉間に皺を寄せていた。無垢な子供がしてはいけない表情になっていたけれど、そうなるのも無理はないか。何しろ、その『神託』を伝えてきたのはこの世界で最も胡散臭いディーズ・カルガだ。りりすちゃんだって、あの怪人物のことは微塵も信用していないと思われる。
「りりすちゃんがそんな顔になるのも無理はないけど、『神託』は信用していいんだよ」
「そう…なんですか?」
安心してと口にすればするほど、りりすちゃんの心はワタシから離れていくようだった。この土壇場でいきなり「『神託』を信じて!」などと言い出せば、ワタシの心が壊れたと疑われるのも無理はないけれど。
「大丈夫だよ、りりすちゃん!『神託』は安全なんだ」
…言ってから、なんだかイケないお薬を勧めてるヤバい人みたいだと思ってしまった。
「でも、花子さんだってさっきまでは『神託』を信じていなかったんじゃないですか…」
「確かに、りりすちゃんからすればワタシが豹変したみたいに見えるよね…でも、『神託』の正体が分かったんだ」
「『神託』の正体…?」
「だから、シロちゃんも…ワタシたちに『力』を貸して!」
まだ腑に落ちない表情を浮かべていたりりすちゃんだったけれど、ワタシはそこでシロちゃんを呼んだ。
「シロちゃんに何をさせるつもりなの、花ちゃん…」
シロちゃんの傍にいた繭ちゃんが、心配そうに問いかける。
「シロちゃんの力を、その『声』を、ワタシに貸して欲しいんだよ…リリスちゃんと『花子』を助けるために!」
『勿論、ぼくにできるお手伝いならさせてもらうけど、花子お姉さん…』
シロちゃんは、おずおずと歩いてきた。けれど、そのふさふさ尻尾は、しゅんと萎んでしまっている。
「やっぱり、シロちゃんも怖いよね…」
ワタシは、そんなシロちゃんを軽く抱きしめた。
怖くないはずなんて、ないよね。
そもそも、シロちゃんは、この異世界ソプラノの住人ではない。
別世界から、たった一人でこの異世界に流れ着いた『漂流者』だ。不安じゃないはずがないし、寂しさを感じていないはずもない。
…そして、現状はこの地獄絵図だ。
異世界に流れ着いた上に、唐突に世界の終末に巻き込まれてしまった。
シロちゃんからすれば、世界を跨いだ最悪のとばっちりだ。
『大丈夫だよ、花子お姉さん…ぼくには、繭ちゃんもいるから』
ワタシにハグされたまま、シロちゃんは答える。
その声は少しだけ恥ずかしそうで、少しだけ怖さに震えていたけれど、ワタシたちに向けたやわらかい熱もこもっていた。
…うん、シロちゃんもやっぱり、ワタシたちの家族だ。
そのことを再確信したワタシは、シロちゃんに言った。
あの『神託』の成就には、この子の信頼が不可欠となる。
だからこそ、シロちゃんがここに『いる』タイミングであの『神託』は届けられた。
大丈夫、全ては、予定調和の既定路線だ…。
ワタシは、自分にそう言い聞かせた。
「じゃあ、シロちゃんお願い…ワタシの背中に手を添えてくれるかな」
ワタシはシロちゃんに背を向け、リリスちゃんに向き合った。
ここからは、本気で気合を入れるよ。
…もう少しだけ待っててね、『花子』。
絶対、『花子』も助けるからね。
『でも、ここから何をすればいいの、花子お姉さん…』
ワタシに言われた通り、シロちゃんは素直にワタシの背中に手の平でそっと触れる。その手の平から、シロちゃんの熱がワタシに伝わってくる。
「前に、シロちゃんの『声』でリリスちゃんの毒の霧を掻き消してくれたことがあったよね」
『え、うん…』
シロちゃんの『咆哮』には魔を清める効果がある。それが、『オオカミ族』の持つ浄化の力だ。リリスちゃんから発せられていた『魔毒』にも効果はあった。
…ただ、暴走状態のリリスちゃんを元に戻すには、至らなかったけれど。
「もう一度、シロちゃんの『声』を聞かせて欲しいんだ」
『でも、花子お姉さん…今のリリスお姉さんには、効果がなかったよ』
シロちゃんの声は尻すぼみに小さくなっていった。前回は役に立てなかったと、シロちゃんは自分を責めている。シロちゃんが役立たずなんてこと、あるはずないのに。
「そんなことはないよ…次はきっと、シロちゃんの『声』はリリスちゃんに届くから」
背中越しに、ワタシはシロちゃんに声をかけた。
想いを乗せた声は、きっと届くと。
『花子お姉さん…』
「だから、ワタシの信じるシロちゃんを信じて!」
そう、おそらくは、上手くいく。
あの『神託』が、このタイミングでワタシに届けられた時点で上手くいくようになって『いる』はずだ。
それが、『神託』の骨子だ。
『花子お姉さん…』
シロちゃんは、ゆっくりと息を吸った。肺の中を新しい空気で満たして、心を整える。
『分かった、いくよ…花子お姉さん』
「あ、ちょっと待って、シロちゃん」
『え…?』
準備完了したところでストップをかけられたシロちゃんはちょっと戸惑う。
「シロちゃんのその『声』をね、ワタシの『念話』でリリスちゃんに届けて欲しいんだ」
『花子お姉さんの『念話』で…?』
シロちゃんはそこで不思議がる。どうして『念話』なのか、と。
「シロちゃんも『念話』でお話ししたことはあったよね?」
『うん、前に花子お姉さんが繭ちゃんの大事なオヤツを盗み食いして本気で怒らせた時、ぼくが『念話』で花子お姉さんと繭ちゃんの仲裁をしたから…』
「…まあ、経緯はどうあれ『念話』で話した経験はあったよね」
兎に角、初めてではないなら難しくはないはずだ。
「あの時と同じように、『念話』でシロちゃんの『吼える声』を届けて欲しいんだよ」
『ぼくの『吼える声』を、『念話』で…?』
ワタシの言葉に、シロちゃんは犬耳をピンと立てて驚いていた。
「そう、シロちゃんの『声』を、ワタシの『念話』で直接、リリスちゃんの心に届けて欲しいんだ」
『でも、それで大丈夫なのかな…』
シロちゃんは、不安そうに先ほど立てていた犬耳を今度はペタンと伏せてしまった。
「大丈夫、ワタシを信じて…ワタシは、シロちゃんを信じるから」
何より、今のワタシたちには『神託』という後ろ盾がある。
ワタシは、その『神託』の『結果』を引き出すために逆算をすればいい。
きっと、この場にいるワタシたちだけで、何とかできるはずなんだ。
「…じゃないと、ここであの『神託』が届けられるはずがないんだ」
『届けられるはずがない…?』
「ああ、ごめんね、シロちゃん。ちょっとした独り言だよ」
さすがに犬耳だけあって、ワタシの独り言もシロちゃんには筒抜けだった。
『でも、分かったよ…ぼくも、花子お姉さんを信じるよ』
シロちゃんは、再び息を整えた。
「よろしくね、シロちゃん…『念話』の準備はできてるから」
『うん、いくよ…花子お姉さん」
小さく頷いてから、シロちゃんは吼えた。
ワタシの『念話』を通して、心の中で叫ぶ。
『『ウオオオオゥッ!』』
気高き『オオカミ族』の咆哮が、ワタシの『念話』越しに届けられる。
全ての物理的な障壁を超越して、最短距離で。
その『声』は、リリスちゃんの心の深奥へ届けられる。
『…………!?』
リリスちゃんの表情に変化があった。
これまでは、ワタシたちのことなんて見ていなかったのに。
…そして、それだけではなかった。
赤錆色をした『魔毒』が、吹き飛ぶ。
それまでリリスちゃんの膝元あたりまで覆っていたはずなのに、あの赤く濁った靄が消えてリリスちゃんのキレイな膝小僧が露わになった。
「『声』…届いてるよ、シロちゃん!」
勿論『神託』による確信はあったけれど、それが机上の空論かもしれないという恐れはあった。
けど、こうして実際にリリスちゃんに対して効果があった。
リリスちゃんを覆い隠そうとしていた魔の毒素を、全てじゃないとはいえ吹き飛ばした。
…本当のリリスちゃんの全身が、徐々に現れる。
「シロちゃん、もう一回…いける?」
『『ウオオオオゥッ!ウオゥッ!オオオオオオオオォンッ!!』』
シロちゃんは立て続けに叫び続ける。『念話』を通しての『声』なので、実際に音は出ていない。それでも、その『声』は確実にリリスちゃんに届いていた。そのたびに、赤錆色の靄も吹き消されていく。
「リリスちゃん…」
…リリスちゃんが、小さくたたらを踏んでいた。
今までずっと、ワタシの声には無反応だったのに。
「かわいいシロちゃんの声には反応するなんて現金だなぁ、リリスちゃんは…」
リリスちゃんが反応してくれたことに、ワタシの涙が溢れそうになる。
…でも、まだだ。
まだ、泣いていられる状況にはない。
リリスちゃんを本当に取り戻すのは、これからだ。
『『ウオゥン!ウオゥッ!オオオオオオオオオオオオオォンッ!!』』
シロちゃんは、矢継ぎ早に吼え続けた。
そのたびに、リリスちゃんを覆い隠す赤錆色の靄が晴れていく。
…一瞬、ワタシには、見えた。
今の無表情を張り付けたリリスちゃんではなく、ワタシと一緒に屈託なく笑っていた、あのリリスちゃんの笑顔が。
「いける…きっと、いける」
あの『魔毒』が完全に浄化されれば、きっと、ワタシたちの『声』もリリスちゃんに届く。
その確信が、ワタシを高揚させた。
もうすぐ、あの小生意気な笑顔が帰って来る…。
『…………』
…けれど、そこで場が静まり返った。
いや、もともと『念話』での『声』だったので、静かと言えば静かだったのけれど。
しかし、一切の『音』が、そこで途絶してしまった。
「シロちゃん…?」
そこで、シロちゃんの『声』が途切れたことにワタシは気が付いた。後ろを振り返ると、シロちゃんが片膝をついていた。その額には脂汗が浮かんでいる。
「シロちゃん…シロちゃん!?」
『大丈夫だよ、花子お姉さん…ちょっと目が回っただけだから』
シロちゃんはそう言ったが、顔も上げられないほど疲弊していた。
そして、何度か咳き込む…。
…迂闊、だった。
「ごめん、ごめんね、シロちゃん…無理をさせちゃってたんだね」
屈みこんでシロちゃんの背中をさすった。
ワタシは、シロちゃんの疲労のことを何も考慮していなかった。
「そうだよね…浄化の力なんだから、負担がないはずがないよね」
シロちゃんの『咆哮』だって奇跡の一種だ。しかも、『念話』を通して連続で発動している。リリスちゃんの心にダイレクトにその『声』を届けているのだから、そこに無理が生じてもおかしくはない。
…それなのに、ワタシはシロちゃんの『咆哮』を、無計画に使わせてしまった。
「ワタシの怠慢だ…」
あの『神託』によってリリスちゃんも『花子』も救えるのだと、そう思った瞬間にワタシは舞い上がっていた。シロちゃんの負担なんて、これっぽっちも見えていなかった。
「シロちゃん、あのね、もうこれ以上は…」
『続けるよ、花子お姉さん…』
シロちゃんは、顔を上げた。
膝に手をついて、ふらつきながらも立ち上がる。
「けど、シロちゃんの体が…」
『ずっと、考えていたんだよ…どうして、ぼくがこの世界に連れて来られたのかなって』
シロちゃんが、静かに語る。
『ぼくは、この世界の人たちが持っているようなスキルなんて持ってないし、繭ちゃんみたいに歌や踊りでみんなを元気にすることもできない…それなのに、スキルも得意なことも何もないのに、どうしてぼくはこんな異世界に迷い込んだんだろうって、ずっと考えていたんだよ』
シロちゃんの口調は静かで、沈んでいた。
そこで、ワタシは思い出していた。シロちゃんはいつもいい子だった、と。
みんなの輪を乱さないように、誰も傷つけないように、シロちゃんは誰に対してもやさしかった。
…それはシロちゃんの配慮でもあったけど、遠慮でもあったんだ。
シロちゃんはいつもこの世界から一歩、引いていた。
『何もできないぼくは、この異世界に居場所なんてなかった…お父さんもお母さんも友達もいないこの世界に迷い込んで繭ちゃんに見つけてもらうまで、ぼくはずっと一人で心細くて、お腹もすいて、寂しくてずっと泣いてたよ』
…そうだよね。
シロちゃんは本当に一人ぼっちでこの異世界ソプラノに召喚されてしまった。
ワタシや繭ちゃんたちは事前にアルテナさまから事前知識というワンクッションを与えられていたけれど、シロちゃんにはそれがなかった。
その差は決して、小さくはない。
『でも、繭ちゃんに見つけてもらった後も、ぼくは一人だったよ…繭ちゃんや花子お姉さんたちはぼくにやさしくしてくれたけど、ぼくは、この世界の人たちと同じじゃなかったから』
…同じじゃなかった、か。
確かに、シロちゃんには犬耳に犬尻尾という特徴がある。この異世界ソプラノには存在しない『オオカミ族』だ。
みんなと違うその差異が、シロちゃんには重く圧し掛かっていた。
そして、その差異は恐怖となってシロちゃんに纏わりついていた。
他の人と違うことがどれほど怖いか、難病に侵されていたワタシなら知っていたはずなのに。
況してや、シロちゃんからすればここは異世界ど真ん中だ。
シロちゃん以外の人たちはスキルとかいうわけの分からない特技を持っていて、シロちゃんの世界にはスキルなんてものはなかった。いや、ワタシが麻痺していただけで、スキルのない世界こそが普通なんだ。
それなのに、そんな突飛な世界にシロちゃんはたったの一人で放り出された…。
放り出されたまま、放置されていた…。
繭ちゃんと、出会うまで。
『だから、ずっと考えてたんだ…どうして、ぼくはこの世界に来たのかなって』
「シロちゃん…」
『でも、もしかすると、ぼくがこの世界に呼ばれたのはこの時のためだったのかもしれないんだ。だったら、ぼくは頑張れるよ…そしたら、ぼくもみんなと同じになれるよね』
シロちゃんは、再び大きく息を吸った。
…けれど、そこでまた咳き込んでしまう。
「シロちゃん…!?」
シロちゃんに相当な無理をさせてしまったんだ、ワタシが…。
『大丈夫だよ、花子お姉さん…ぼく、ちゃんとお仕事するからね』
シロちゃんの瞳は、疲労のためか虚ろになっていた。
それでも、この子は立ち上がろうとしている。
本来なら、ワタシが止めなければならなかった。
…けれど、それを躊躇してしまう自分がいた。
もう少しで、リリスちゃんが助けられる…と。
「最低だ、ワタシは…」
ダレカを助けるために、他のダレカの犠牲にするのなら、それはワタシがそのダレカを見捨てたということになる。
…そんなのは、だめだ。
「シロちゃん。もう、いいん…」
だから、ワタシはシロちゃんを止めようとした…が。
「シロちゃんをバカにしたら、ボクが許さないよ」
「繭ちゃん…?」
そのワタシを止めたのは、繭ちゃんだった。
そして、繭ちゃんは続ける。線の細い眉を、固く結んで。
「シロちゃんはやるって言ってるよ…リリスちゃんを助けるって、シロちゃんはそう言ってるんだよ!」
「でも、繭ちゃん…その前にシロちゃんが倒れちゃうよ」
「倒れないよ。シロちゃんは、ボクと一緒にダンスの練習もたくさんやったし、お祭りの時も、神楽の練習をたくさんやったんだ…そんなシロちゃんが、簡単に倒れたりするもんか」
繭ちゃんはワタシとシロちゃんの間に立ち、一歩も引かない。
…本当なら、繭ちゃんが一番、シロちゃんに「もう休んでいいんだよ」と言いたいはずなのに。
「だからね…シロちゃんが、あんなよく分からない霧になんて負けるわけがないんだよ!!」
繭ちゃんはシロちゃんの体を支え、手を握る。白魚のような繭ちゃんの手が、微かに震えていた。
シロちゃんも、繭ちゃんの声と手に応える。
『繭ちゃん…こんなぼくのこと、信じてくれるの?』
「シロちゃんはボクの最高の友達だよ。ボクは、その最高の友達のいいところをたくさん、たっくさん知ってるんだ。だから、『こんなぼくのこと』なんてさみしいこと言わないでよ」
『繭ちゃん…』
「ボクが断言するよ。今ここで、シロちゃん以外の何を信じろって言うのさ」
『繭ちゃん…ぼくは、この世界で最初に最高のお友達に出会ってたんだね』
シロちゃんの手をしっかりと握り、繭ちゃんは顔を上げた。
その瞳には、微塵の恐れもなかった。
そして、繭ちゃんが吠える。
「ボクとシロちゃんが組んだら最カワだからね…そんなボクたちが、あんなかわいくない色の毒に負けたりするはずがないんだよ!」
繭ちゃんはほんの少しの怯えもなく真っ直ぐにあの『魔毒』に吠える。
あんな霧なんてかわいくない、と。
かわいくないから、負けやしない、と。
「そうだよね、繭ちゃんシロちゃんが最カワだよね…だったら、なんだか知らないけどとにかくよしだよ!」
繭ちゃんの言葉を受け、ワタシも吼える。
そして、繭ちゃんの声を受け、シロちゃんも真っ直ぐに顔を上げた。
ワタシたちの言葉は、つながる。
そのつながりは、決して伝説に語られる魔獣にも負けたりはしない。
だから、シロちゃんも叫ぶ。
『花子お姉さん…あの濁った赤色の霧は、ぼくと繭ちゃんが吹き飛ばしちゃうよ』
それは、シロちゃんによる…いや、シロちゃんと繭ちゃんによる、完全なる最カワ勝利宣言だった。




