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転生者なんか送ってくるな! ~看板娘(自称)の異世界事件簿~  作者: 榊 謳歌
Case4 『駄女神転生』 2幕 『祭りの始末』
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クリスマス特別編 2

花子「それじゃあ、クリスマス特別編その2…はーじめーるよー!」

繭 「せっかくのクリスマスなのにこの展開を続けるとか、正気の沙汰(さた)とは思えないんだけど…?」

花子「特別編は羽目を外すためにあるのです」

繭 「だからって、花ちゃんが私物化していい理由にはならないと思うんだけどなぁ…」


花子「さて、そろそろ『花ちゃん繭ちゃん』の方向性も見えてきたね」

繭 「いつの間にかダサい方のコンビ名に()げ変わってるんだけど…」

花子「ここでワタシから繭ちゃんに大事な質問があります」

繭 「ボクの質問は全力で見殺しにしたのに?」

花子「漫才において、コンビ間でもっとも意識を共有しないといけないことってなんだと思う?」

繭 「コミュニケーションだと思うよ…今のところ(ないがし)ろにしかされてないけど」

花子「色々あるとは思うけど、ワタシはテンポだと思うんだ」

繭 「やっぱりコミュニケーションは蔑ろにされてるよね…」

慎吾「確かにテンポは大事だな。テンポ次第では同じ漫才でも全くの別物になる」

繭 「なんでそこで花ちゃんに肩入れしちゃうかな…」

慎吾「けど、そこに気付いたのは目の付け所がいいな、花子」

花子「慎吾に褒められると自信になるよ、ありがとね」

繭 「花ちゃんがここまで調子に乗ってる責任の一端は慎吾お兄ちゃんにもあると思うよ…?」


花子「さて、繭ちゃんはどんなリズムで漫才をやりたいのかな?」

繭 「そもそもやりたいなんてボクは一言も言ってないんだけど…」

花子「分かるよ、やっぱり慣れないうちからアップテンポな漫才は尻込みしちゃうよね」

繭 「もしかして、ボクの喋ってることグー〇ル先生に誤変換とかされてるの?」

雪花「漫才ってテンポが速い方がいいのでござるか?」

花子「そうだね…一概にそっちがいいとは言い切れないとは思うけど、速い方が盛り上がると思うんだよね」

慎吾「最初から速くするよりも、少しずつテンポを上げていく方が盛り上がるんじゃないか」

花子「なるほど…その通りだね」

慎吾「最初から飛ばしていくより、終盤にかけてボケとツッコミの掛け合いのスパンを短くしていけば客席のボルテージも上がっていくはずだ」

花子「ふむふむ、面白い分析だね」

繭 「その分析ができて、どうしてボクの気持ちは分析してくれないのかな…」


慎吾「漫才のコンテストでチャンピオンになったコンビも、後半で盛り上がる漫才が…所謂(いわゆる)しゃべくり漫才が多かった。フットボー〇アワーやチュートリ〇ルなんかもそうだし、アン〇ッチャブルも後半で畳みかける怒涛の展開だった。もちろん、初代チャンピオンの『中〇家』なんかはテッパンのしゃべくり漫才だ」

繭 「…この特別編で一番、特別なのって普段よりもよく喋る慎吾お兄ちゃんなんじゃないの?」

慎吾「賞レースの最終決戦でも、客席の盛り上がりが最後の決め手になったりしているみたいだしな」

繭 「もしかして、今日の慎吾お兄ちゃんって中身が別の人なの…?」


花子「やっぱり、テンポって大事なんだね」

慎吾「けど、ゆったりしたテンポの漫才が面白くないってわけじゃない。(むし)ろ、周りがアップテンポな漫才ばっかりだったら、ゆったりしたテンポの漫才が相対的に目立つことになる」

花子「相対的に、か…そういう考えもあるんだね」

慎吾「こればっかりはタイミングだけどな」

花子「でも、ゆったりした展開の漫才って難しそうな気もするんだよね」

慎吾「まあ、速いリズムの漫才が簡単ってわけじゃないが、ゆっくりした漫才は誤魔化しが効かない気はするな」

花子「だよね、だよね」

繭 「さっきから言ってるけど、話の通じる花ちゃんと慎吾お兄ちゃんでコンビを組んでくれないかな…」


慎吾「スローテンポで笑いをとるのは、本当に難しいと思うんだ。数が打てないから、一つ一つのボケやツッコミの質が重要になってくる。そういう意味じゃ、『スリ〇クラブ』や『ミル〇ボーイ』は本当にさすがだよ」

花子「ふうむ…」

慎吾「それからネタのテンポも大事だけど、オレ個人としてはネタの着眼点も重視しないといけないと思うぞ」

花子「ネタの着眼点?」

慎吾「何を『軸』にしてネタを作るかってことだよ。たとえば、『笑〇飯』の『鳥人』のネタの着眼点はすごかった。しかも、あの奇抜さなのにきちんと漫才のバランスがとれていたんだ。そりゃ、満点だってでるよ。普通はでないんだよ、賞レースで満点なんて。今でも語り草にもなるのも納得だ。他にも、さ〇香の『免許返納』のネタなんかは個人的に大好きだったなあ。こっちは誰でも耳にしたことのある話題をうまく(さば)いて漫才のネタに昇華させていた」

花子「なるほど、ネタの着眼点かぁ…」

繭 「二人だけで漫才談義するならもうこの特別編も締めちゃっていいんじゃないかな…」


慎吾「着眼点っていう話をするなら、花子たちならいっそ女性コンビを参考してみるのもいいかもしれないな」

花子「女性コンビ?」

慎吾「男性コンビのネタの着眼点の特徴は…ああ、当然、一括(ひとくく)りにはできないんだけど、発想を広げるって感じがする」

花子「発想を広げる?」

慎吾「オレの個人的な感想だし、うまく言語化できているか分からないけど…さっきの『鳥人』や『免許返納』のネタ、他にも『フットボー〇アワー』や『アンタッ〇ャブル』が優勝した時の『SMタクシー』のネタや『娘さんをください』のネタは、それぞれの着眼点から発想を広げていってできたネタだと思うんだよ」

繭 「今日の慎吾お兄ちゃんって漫画に出てくるデータキャラくらいよく喋るよね…」


慎吾「けど、女性コンビの漫才は共感を重視している気がするんだ」

花子「共感?」

慎吾「漫才を見に来てる観客…特に女性客が共感しやすいネタを演じてるんじゃないかな。まあ、これもオレの感想だけど」

花子「女性客が共感しやすいネタかあ…」

慎吾「そして、その共感を得るためには、ネタの着眼点は分かりやすいものにしなければならない。『女性客×共感×分かりやすい』が、女性漫才師の特徴じゃないかな。そして、その三つを満たすために必要になってくるのが繊細さだ。傍目(はため)には『ハイ〇ール』や『やすよ〇もこ』の漫才は図太く見えるかもしれないけど、あれは女性ならではの繊細な視点に裏打ちされた、完成度の高い漫才なんだ」

花子「女性ならではの繊細な視点か…ワタシと繭ちゃんにはぴったりかもしれないね!」

繭 「今のところ花ちゃんにはその繊細な視点とやらは皆無だけどね…」


花子「うん、かなり地盤は固まってきたし、あとはワタシたちだけの個性みたいなものが欲しいよね」

繭 「さっきから気になってたんだけど、花ちゃんって漫才っぽいことがしたいだけだよね?」

花子「なら、歌ネタをやるのはどうかな?」

繭 「歌ネタ…?」

花子「ほら、漫才の途中に歌を入れて、そこからボケやツッコミにつなげていくアレだよ。『おいで〇す』とかが得意なネタかな。繭ちゃんは歌もうまいしピッタリだと思うよ」

繭 「歌…かぁ」

慎吾「歌ネタの取り扱いに気を付けないといけないぞ、花子」

繭 「今日の慎吾お兄ちゃんは漫才を語る幽霊とかに憑りつかれてるの…?」


花子「気を付けるって…なにを?」

慎吾「確かに歌ネタはウケやすい。それにリズムも取りやすいから客席も盛り上がるし、みんなが知ってる歌なら印象にも残りやすい」

花子「いいことづくめじゃない」

慎吾「けどな、歌ネタには壁があるんだよ…著作権っていう大きな壁が」

花子「なるほど…その壁は確かに高いね」

繭 「ボクも、今日の二人からはその壁とやらを感じてるんだけどね…万里の長城くらい高いやつ」

慎吾「どれだけその歌ネタが受けたとしても、著作権に引っかかる歌を題材にしていたら大変なことになる…」

花子「具体的には…?」

慎吾「著作権に引っかかった場合…そのネタはDVDに収録されなくなるんだよ」

花子「それは…ホントに大変なことになるね」

繭 「…このボケもボクが拾わないといけないの?」


花子「あとは…漫才の締めに何をするかだね」

繭 「雪花お姉ちゃんがさっきからあっちで漫画とか描き始めてるんだけど…」

花子「定番の『もうええわ』ももちろんいいんだけど…」

繭 「さっきからそれと似たセリフをボクもう何回も言ってるんだけど…」

花子「どうせならワタシたちにしかできない『もうええわ』が欲しいよね、繭ちゃん」

繭 「ボク、今日は何一つ花ちゃんに同意してないからね…」

慎吾「けど、花子…締めに関してはあんまり奇抜なことをしない方がいいんじゃないか」

花子「慎吾がそう言うならそうなのかもしれないけど…」

繭 「なんで花ちゃん慎吾お兄ちゃんの言うことだけはちゃんと聞こえてるの?」

花子「よし、ここは気合を入れて繭ちゃんと『だっちゅーの』でもやるよ」

慎吾「花子…それは持たざる者には無理を通り越した無謀だよ」

花子「持たざる者なんかじゃありませんけどぉ!?」

繭 「あ、やっと花ちゃんと慎吾お兄ちゃんの間に亀裂が入ったかな?」


花子「ふぅ…とりあえず漫才っぽいことができてワタシは満足かな」

繭 「ボクさっきそれ言ったよね!?」

花子「繭ちゃんだってたくさんツッコミができて楽しかったよね」

繭 「気苦労しかなかったよ!?というか、ボクもう本編ではツッコミなんてしないからね!」

花子「いやあ、シリアスが続いてたから羽を伸ばしたかったんだよね」

繭 「アルテナさまから石とか投げられてもボク知らないからね…」

花子「大丈夫だよ、アルテナさまは慈愛の女神さまだから…(震え声)」

繭 「というか、なんで花ちゃんは漫才の真似事なんてしたかったの?」

花子「今年のM1がクリスマス決戦だったからだよ」

繭 「想像以上に聞いて損する理由だった!?」


花子「…というか、これをクリスマスの特別編と言い張っていいのかな?」

繭 「今になってそんなこと言い出さないでくれるかな!?」

花子「でも、他の人たちとの差別化は必要だし、絶対にやらないから未開拓だと思ったんだよ」

繭 「どこでフロンティアスピリットを発揮してるのさ…」

花子「まあ、もうやっちゃったものは仕方ないよね」

繭 「ボクとしては花ちゃんからもらい事故にあったみたいなモノなんだけど!?」

花子「やっぱり、季節感のある特別編は大事だよね」

繭 「じゃあ、お正月には駅伝の特別編とかやるんだね?」

花子「…………」

繭 「花ちゃんも走るんだよね?」


花子「…それでは、よいお年をー」

繭 「ちょっと待ってこれを一年の締めにするつもりなの!?」

花子「今年も一年お世話になりましたー」

繭 「ホントにこれで終わりにするつもりなの!?」

花子「ほら、繭ちゃんもちゃんと挨拶しないとね」

繭 「なんとか花ちゃんのお尻を引っ叩いて更新できるようにしますのでよろしくお願いします!」

花子「このお話を気に入ってくれたら、ピンポンダッシュくらいの気軽さで評価やブクマのボタンを押してくれると嬉しいです」

雪花「ピンポンダッシュだと気軽に押していいものではないでござるが!?」

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