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転生者なんか送ってくるな! ~看板娘(自称)の異世界事件簿~  作者: 榊 謳歌
Case4 『駄女神転生』 2幕 『祭りの始末』
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クリスマス特別編

花子「とーくべーつへーん!」

慎吾「…………」

雪花「…………」

繭 「…………」

花子「あれ、聞こえなかったかな?じゃあ、もう一回いくよ…とーくべーつへーん!」

慎吾「いや、聞こえてたんだよ…聞こえてたから沈黙してるんだよ」

繭 「ボクとしては聞こえなかったことにしたかったけどね…」

花子「え、だってクリスマスだよ。クリスマスっていったら特別編だよね?」

雪花「そんな『クリスマスにはチキンだよね?』みたいなノリでぐいぐい来られてもこっちも困惑するのでござるが、主に心の準備的な意味で」


花子「でも、特別なイベントの時には特別なことをするべきだよ」

慎吾「花子の言いたいことも分かるけど…このタイミングでいきなりわけの分からない特別編を挟むっていうのはどうなんだ?」

雪花「そこそこシリアスが続いておりますし、前話との振り幅が大変なことになるのではござらんか?」

繭 「アルテナさまなんて胸に風穴が開いたままなんだけど…」

花子「特別編はメタ時空なので関係ありません…というわけで始めるよ、とーくべーつへーん!」

雪花「特別編のたびに花子殿の(たが)が外れるのはどうにかすべきだと思うのでござるが…」

繭 「特別編って言葉を免罪符扱いするのやめた方がいいよ、花ちゃん…」


雪花「…それで、特別編って具体的に何をするのでござるか?」

繭 「やっぱりクリスマスだし…プレゼント交換とかするの?それとも、皆でクリスマスソングでも歌うの?」

花子「漫才、やるよ!」

雪花「…………」

繭 「…………」

花子「漫才、やるよ!!」

雪花「そんなガ〇ダム、売るよ!みたいなテンションで言われても困惑しかないのでござるが…」

花子「というわけで、漫才やるよ」

雪花「誰一人として賛同していないのに押し切ろうとしているでござるな、この花子殿…」

繭 「どれだけ横暴な王さまでもここまで理不尽な圧政はしないと思うんだけど…」


花子「それから、繭ちゃんはワタシの相方ね」

繭 「拒否権とか発動したいんだけど…」

花子「ごめんね、その権利はついさっき失効したんだよ」

繭 「児童相談所とかに相談したら助けてくれないかなぁ…」

花子「あと、コンビ名はキューティベアね」

繭 「当たり前のように相談なしでコンビ名が決められてる…」

雪花「そのコンビ名はダーティな二人組のリスペクトですかな?それとも、女子プロレスの方のオマージュですかな?花子殿なら()えて後者から選びそうでござるけれど」

花子「そうだよ、どっちかと言えばプロレスの方からインスピレーションを受けたかな。さすがは雪花さんだね」

雪花「いやあ、それほどでも」

繭 「雪花お姉ちゃんが花ちゃん寄りになっちゃうと相対的にボクが孤立しちゃうんだけど…」

花子「大丈夫、その分だけワタシが寄り添ってあげるからね」

繭 「花ちゃんにはもうちょっと適切な距離感から学んで欲しいところなんだけど…」


雪花「とりあえず、コンビ名は無難な感じでいいでござるな」

繭 「まあ、意味不明でヘンテコなコンビ名よりかはマシかもしれないけど…」

慎吾「いや、コンビ名に意味がなくても問題はないんじゃないか」

繭 「…慎吾お兄ちゃん?」

慎吾「確かに、名前に意味があった方が憶えてもらいやすいという利点はあるが、ちゃんとした漫才をすればコンビ名は憶えてもらえるはずだ」

繭 「……慎吾お兄ちゃん?」

慎吾「たとえば、『霜降り〇星』なんかはそれぞれが選んだ単語を適当にくっ付けただけだから意味は分からないけど、ちゃんとみんなに憶えてもらってるだろ?」

繭 「………慎吾お兄ちゃんんん?」


花子「他には、『花ちゃん繭ちゃん』っていう代案もあったんだよ」

繭 「そっちはストレートにダサいんだけど…」

慎吾「いや、そうとも言い切れないよ」

繭 「…………だから慎吾お兄ちゃん?」

慎吾「ジンクスだよ」

繭 「…ジンクス?」

慎吾「最近のトレンドじゃないけど、以前はあったんだ。コンビ名に『ん』が入って似たような単語を繰り返す名前のコンビは売れるっていうジンクスが」

雪花「そんなのがあったのでござるか?」

慎吾「ああ、たとえば『紳助〇介』や『ダウ〇タウン』、それに『ナイン〇ィナイン』に『キン〇コング』とかだよ…それに『阪神〇人』ってコンビ名もそのカテゴリに入るのかな。だから、事務所側も意図的にそういう名前を付けるようにしていたんだよ、売れそうな若手のコンビには…あと、事務所は違うけど『ウッチャ〇ナンチャン』もこのジンクスには当てはまるかな」

花子「へえ、そんなジンクスがあったんだね」

慎吾「なんだ、知ってたわけじゃないのか」

花子「知らなかったよ。でも、ひとつ勉強になったね」

繭 「…とりあえず、ボクとしては不穏な展開にしかなってないんだけど」


花子「それでね、繭ちゃんがツッコミ担当ね」

繭 「…え、もうそんなことまで決まってるの?」

花子「繭ちゃんがツッコミの方が引き締まる感じがすると思うんだ」

慎吾「確かに、ツッコミはしっかりしてる方が担当することが多いな」

繭 「…またもや慎吾お兄ちゃん?」

慎吾「ボケがふわっとした感じで笑いを取った後、ツッコミがその弛緩(しかん)した空気を引き締めることで笑いに緩急が生まれるんだ。というか、暴走する花子の手綱を握る必要があるから、繭ちゃんがツッコミの方がいいとオレも思うよ」

繭 「……だから慎吾お兄ちゃん?」


花子「まあ、どうしても繭ちゃんがボケをやりたいっていうならダブルボケ漫才っていう手もあるけどね、『笑〇飯』みたいに」

雪花「ああ、ボケが途中で入れ代わる漫才でござるな。拙者でも知っているでござるよ」

慎吾「けど、あれは言うほど簡単じゃないぞ。どっちもボケるってことは、どっちもツッコミをいれなきゃならなくなってくる。それは、どっちにもボケとツッコミの両方のスキルが必要になってくるんだ」

繭 「今日の慎吾お兄ちゃん花ちゃんより絡みづらいんだけどぉ!?」


花子「とりあえずダブルボケでいくかどうかは保留にするとしても、印象的なツッコミとか欲しいよね」

繭 「ボクもう既に今日だけで一週間分くらいツッコんでる気がするんだけど…」

慎吾「なるほど、『タカアンド〇シ』の『欧米か!』みたいなヤツか。セリフじゃないけど、インパクトのあるポーズとかでツッコミを入れるっていう手もあるな、『霜降り〇星』みたいに」

花子「そうそう、そういうのがあるとお客さんにも憶えてもらいやすいと思うんだよ」

繭 「もう花ちゃんと慎吾お兄ちゃんの二人で夫婦漫才とかやってくれないかなぁ…」


慎吾「けど、『欧米か!』はこの異世界じゃ使えないからな、何か代わりになるものは…」

繭 「当たり前のようにボクの発言はスルーされてるけど、こういうのもネグレクトに該当するんじゃないかな…」

慎吾「フレーズやポーズが印象的なツッコミじゃなくても、ツッコミそのものが印象的なコンビっているよな」

花子「え…どんな?」

慎吾「そうだな、ボケが坊主頭だったりすると、叩いた時のツッコミそのものがいい音をさせるんだよ。ほら、『〇鯉』とか」

花子「なるほど…覚悟を決めてワタシも坊主にした方がいいのかな」

繭 「坊主頭の花ちゃんとコンビ組むとか、ボク絶対に嫌だからね!!」


花子「ふう、ある程度はコンビ間の意識の差が埋まってきたね」

繭 「溝が深まってきてるとしか思えないんだけど…」

雪花「それで、花子殿はどんな漫才がやりたいのでござるか?」

繭 「これ以上、安易に花ちゃんにエサを与えるの止めてほしいんだけど…」

花子「そうだね…理想はいろいろあるんだけど」

繭 「もうその理想は箱にしまってこれ全部なかったことにならないかなぁ…すでにダダ滑りなんだし」

花子「そこそこ固まってきたから、あとはやりながら煮詰めていく感じで大丈夫じゃないかな」

繭 「何一つ固まってないまま見切り発車をしようとしてるんだけど…」


花子「それじゃあ、最初は展開をリードするって意味でもワタシがボケをやるね」

繭 「せめて台本とかないの…?」

花子「ワタシたちの漫才は自由の中から生まれるんだよ」

繭 「ボクには一切の自由が与えられてないのに…?」

慎吾「けど、花子、ある程度の流れくらいはないと繭ちゃんだってやり辛いんじゃないか?」

繭 「慎吾お兄ちゃんがやっとボクの方を向いてくれたけどもう手遅れだよ…」

花子「そうだね、悲しいけどワタシたちはど素人だからね。先ずはお手本通りにやってみようか」

繭 「どうしてそういうとこだけ律儀に教科書通りにやろうとするんだろう…」

慎吾「お手本っていうと、どういうタイプのヤツなんだ?」

花子「ええとね、『〇〇をやってみたいんだけど、ちょっと付き合って〜』みたい導入のヤツかな」

慎吾「ああ、確かにそれなら素人でも流れが掴みやすいか」

繭 「どうしてボクよりツーカーな二人でコンビを組まないんだろう…」


花子「じゃあいくよ…あのね繭ちゃん、ワタシ、小さい頃からやってみたいお仕事があったんだ」

繭 「ええと…どんなお仕事がしたかったの、花ちゃんは?」

花子「お花屋さんだよ」

繭 「花ちゃんほど花より団子って言葉が似合う人もいないと思うんだけど…」

花子「兎に角…お花屋さんがやりたいんだよ!」

繭 「…まあ、いいんじゃないかな、花ちゃんには向いてると思うよ」

花子「でも自信がないんだよね…お花も生き物だから色々と大変だと思うし」

繭 「そうだね…覚えなきゃいけないことは多いと思うよ」

花子「それでね、ちょっと練習したいから繭ちゃんがお客さんやってよ。ワタシがお花屋さんをやるから」

繭 「うん…いいよ」


花子「とりあえず…出だしはこんな感じでいいのかな?」

慎吾「ああ、全くの素人にしてはいいんじゃないか」

花子「あ…でも、肝心なことを忘れてたよ!」

繭 「…こういうテンションの時の花ちゃんって大体ろくなこと言い出さないんだよね」

花子「漫才の(しょ)(ぱな)っていうと、先ずは自己紹介の挨拶だよね」

繭 「あ、意外とまともだった…」

花子「でさ、何かワタシたちにしかできない挨拶とかしたいよね」

繭 「あ、やっぱり雲行きが怪しくなってきた…」

慎吾「最初に特別なことか…たとえば、『〇鯉』の『こーんにーちはー』って大声の挨拶とかか?他には『ミル〇ボーイ』の『こんなになんぼあってもいいですからね』もあるか」

花子「そうそう、そういうのだよ、さすが慎吾だね。さす慎だね」

繭 「慎吾お兄ちゃんがたまに花ちゃんにムチャクチャ甘くなるのって何なの…?」


花子「よしよし、いい感じに漫才の屋台骨ができてきたね」

繭 「ボクにはその屋台骨が虫食いだらけに見えるんだけど…」

花子「じゃあ、次は中身を煮詰めていこうね、繭ちゃん!」

繭 「先ずは、ボクと花ちゃんのテンションが完全に乖離(かいり)してることに気付いてほしいなぁ…」

花子「というわけで次回に続きます」

繭 「ちょっと待って!?こんなふざけた特別編で前後編に分かれるの!?」

花子「もしかすると三部作になったりして」

繭 「こんなくそ茶番でそんな大作映画みたいなこと許されないと思うよ!?」

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