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魔の森のある世界に生きている

ミイラ取りがミイラになるってよくあることよ。何もかも忘れたウサギ聖女は今日も魔の森でもぐもぐする。

R15は誘拐行方不明事件のため。

前回投稿した異世界で勇者と暮らしたら自立してない女は嫌だとかいいだしました。の続編?です。主人公はリコではなく魔王征伐の仲間、聖女になります。

ウサギがもぐもぐする気持ちになってお話を書いてみました。


モフモフがもぐもぐ。最強か!


短編で読めるようにしたいのでシリーズと言う形で書いております。

あんのクソ魔法使い!!

うさぎキックで無駄なイケメン面ふっ飛ばしてやる!!


っといきり立っていたときが私にもありました。もぐもぐ。

こんにちは。私、ふわふわモフモフかわいいウサギさん、元ムース村娘、カティアです。え?なんで今ウサギかって?んーよく分からない。なんでかしら?むしろなんで元村娘?んー?もぐもぐ。


かわいいカティア、カティア、カティア。春の姫がきたよ。カティアに会いに。

わらべ歌のしらべにのせて私名前が歌われる。

優しいカティア、カティア、カティア。冬の王といくよ。青い空。

村の人達が歌ってた。なんだっけ、夏と秋はどうしたんだっけ?うーん。もぐもぐ、まあいいか。


カティア。金の髪のカティア。カティア、赤毛のカティア。黒髪のカティア。背高カティア。ちびっこカティア。泣き虫カティア。怒りん坊カティア。やせっぽっちのカティア。

呼ばれた名前。何度も何度も呼ばれたけれど。カティア?私はカティア?ほんとうに?

なんだか気になる。カティア。カティア。


お前はカティアだよ。低い声。

あら嫌だ!びっくりした。今誰かに耳元で囁かれた?

誰もいないわ…私はカティア。私は一人。私はカティア。


でも、あだ名が多すぎじゃない?金で赤で黒い髪?私の髪ってどんな色よ?背高でちびっこって?まあ、子供から見たら背高で大人から見たらちびっこかしらね。なんでも比較対象によってかわるってことよ。


ゾクリとした嫌な気持ちはブルリと全身をひとふるいして忘れてしまえ。足りない?もうひとふるい。ブルリ!

ふん、まあ、いいわ。重要じゃないわ。美味しいものを食べなくちゃ、もぐもぐ。しあわせしあわせ。もぐもぐ。私はウサギ、もぐもぐもぐ。


ええ、私がカティアだったのは多分だいぶ昔のこと。毎日毎日魔の森でもぐもぐご飯を食べているとなんにも特別なことをしてないのに月日が過ぎちゃうので、もぐもぐ。

なんだか大事なことを忘れている気がするんだけどね、もぐもぐもぐもぐもぐ。美味しいもの、もぐもぐ。食べなくちゃ。もぐもぐ。ウサギのお仕事もぐもぐもぐ。


朝が来てお日様が森の中まで差し込むと、この魔の森の空気に含まれる魔素がキラキラ輝いてとってもきれいなの。キラキラキラキラ。きれいだな。嬉しいなぁって思いながらお鼻ひくひく、いい匂いをたどって毎日ごちそう、もぐもぐ。魔の森にいる肉食獣のようなこわーい敵は超高性能な私の耳で察知。おかげさまで今まで一度も危険な目には会ったことないのよ。


たまに猟師かしら?罠を仕掛けたり、猟犬と森に来るけどあんな奴らは屁でもないわ。ほほほ、今日もおいしく刺草フォゲタフルをもぐもぐ。いいでしょう?もぐもぐもぐ。ちょっとね、癖があるけどね、触り方間違えると棘が刺さって痒くて大変だけどね、向きを間違えなければ平気平気。もしゃもしゃもしゃもぐもぐもぐ。よく噛む、大事。もぐもぐ。美味しい、しあわせ。もぐもぐもぐもぐ。


時々無性にイライラするというかもやもやするというか、ご飯に集中出来ない時があるの。どうしてかそういうときは黒髪の若い男の顔が浮かぶのよね。ここ魔の森ではよく見かけるきれいな声でさえずるクロウタドリみたいな黒くて艶のある長い髪に、森の奥にある精霊の湖のほとりで咲くラッパみたいなリラナツィセみたいな濃い紫の瞳。


彼が言う言葉は聞き取れない。いつも怒ってる?なんでかな、なんでそんなに悲しそうな目なのかな?うーん、分からない。もぐもぐ。まあ怒っていても悲しんでいても彼の美貌がそこなわれることはなくて、うん、イケメン人面だわよ。まあ私はウサギだからね。どうでもいいな。人間の顔面については心底どうでもいい。もぐもぐもぐもぐ。人面で腹は膨れぬ。くるしゅうない、ちこうよれリラナツィセ、もぐ。うまーあまーもぐもぐ。


リラナツィセは球根が美味しいんだけど全部食べちゃうとお花が咲かないからいつもひとかじりして我慢。お花が咲いたらお花も甘くて美味しいの。だから他の動物が食べちゃわないようにリラナツィセの咲く春の時期は私精霊の湖のほとりで過ごしてるの。春の初めは雪が降ったりするからずっと湖のほとりに居るもの辛いんだけど。美味しいもののためにはしょうがないじゃない?冬眠明けでお腹をすかしたハネツノリスとかに取られたくないんだもの。ハネツノリスといえば、あの子達体は小さいけどすごい食いしん坊で前の春はリラナツィセの球根食べ尽くしてお花が咲かなかったのよね。ほんと食いしん坊って迷惑だわ!その点私はちゃんと、節度をもって、ひとかじりして花が咲くまで待ってるもの。お利口さんだわ。私。もぐもぐ。あ、ちょっと食べ過ぎた?もぐ?


まぁリラナツィセだけじゃなくて春から夏にかけては甘くて美味しいものがいっぱいあるのよね。夏なんてエメラルドグリーンのクロイタベアの茂みのなかで、私の体中クロイタベアの果汁で緑に染まっちゃうくらい一日中クロイタベア食べてるの。小さな実が球状に集まって大きな実を作っているからかじると小さな実の中の種がプチプチするんだけど、その舌触りにうっとりしちゃうのよね。

もぐもぐが止まらない、爽やかな甘酸っぱさ。人間が食べると死んじゃうって言われてたけど、まぁ私うさぎだしね。もぐもぐもぐ。え?人間?さあ、戻れなくても私いま幸せよ?美味しいものを食べなくちゃ。もぐもぐ。美味しいものを食べてしあわせにならなくちゃ。しあわせ、しあわせ、美味しいもの。


もちろん秋には秋の、冬には冬の恵みがあるのよね。魔の森って素敵。毎日おいしいわ!お鼻ひくひく、うーん、次のごちそうは何かなぁ♪美味しいものを食べなくちゃ。大事だいじ♪

ウサギには怖いものがなーいの。毎日もぐもぐしーあーわーせーよー♪


なんてのんきな毎日も、どうやら今日で終わりらしい。只今私は愛想もこそうもない檻の中。錆びた金属なのだけどどうやら強化魔法がかけてあるみたい。体当りしてもびくともしない。世界で一番硬くて美味しいと言われる魔鉄キノコもザクザク切断する私の前歯でも歯が立たない。

なんだかすっごく美味しそうな匂いがしたからついついよく見えない枯れ葉の山にはいっていってしまったのよね。そこで見つけたのがあまーいあまーいチョコレートクッキー。あれ?私なんであれがチョコレートクッキーだってわかってたのかしら?ぬ?げせぬ。チョコレート、チョコレート、甘くて美味しい幸せの味。誰と食べた?

「はい、どうぞ」

「ありがとう XX」

誰がくれたの?誰だっけ・・


思い出せない。

・・・もぐもぐしたい。精神の安定になにかもぐもぐが必要だわ・・・


かわいそうな私。このままかわいいモフモフウサギとして食べられちゃうのかしら。毛皮は人間のマフラー?帽子?お肉はウサギパイにされちゃうのかな?お肉だけだと栄養バランスが崩れるもの、きっと野菜と一緒に煮込まれちゃうわね。ウサギ肉は癖があるもの、ニオイ消しには真鉄キノコと煮込むといいんだけどな。あれ、私の好物なのよね。お肉になっちゃったらもうもぐもぐ出来ないわね。たとえ隣同士で煮込まれたって、私の好意はキノコには伝わらないわね。切ないわ。一方通行の思い。片思い?これが恋?


おかしいな、なんだか考えがまとまらない。

キノコ、魔鉄キノコ…


そうそう、魔鉄キノコって恐ろしく硬いんだけど、魔力を繊維状に固めてるから繊維の向きを見極められればあら不思議、長い麺状に裂いてツルツルとしたのどごしを感じるもよし、パリッとした歯ごたえを楽しんでもよしの私のお気に入りなんだけど、そういえば最近食べてなかった。私の秘密の場所で群生してたんだけど。誰かに見つかったら根こそぎ取られちゃうんじゃないかしら。たしか錬金術の素材だったもの。高く売れるはず。まあ、あの窪地は深いから普通の人間には登れないわよね。魔鉄キノコを見つけても、売りには戻れないわね。金とか赤とか茶色の糸が敷きつめられた日当たりの悪いあそこ。白い枯れ木の枝がいたるところにあってあまり居心地がよくない。


白い枝…


わたしにはふわふわの毛があるからささったりはしないけど。私みたいな垂直跳躍が得意な種族じゃないとまあ窪地からは出てこれないかな?カリカリ爪を立てて登れない・・・登れない・・・出られない・・・出られなかった。誰も・・・誰が?


いやだわ。もぐもぐしたい。気持ちがザワザワする。もぐもぐしたい。美味しいものを食べなくちゃ。もぐもぐ。美味しいものを…


あら?あらあら?チョコレートクッキーがあらわれたわ!さっき全部食べたと思ったのに!いただきまーす。もぐー

やーん。しあわせーおいしいーもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。

はぁーん。なんだかしあわせ。いつもよりしあわせーポカポカする。もぐもぐーしあわせ~


「おいしい?フェリ?」

うん、おいしいーもぐもぐもぐ。フェリ?フェリってしってるわ。

「もうひとつ、はいどうぞ」

あら、また、はいどうぞされたわ。優しい声。私知ってるわ。この声・・・リコ?


あら?あらあら?私なんだか光ってる?何かしら?頭がくらくら?


聖女様。ありがとう。あなたの幸せが悪霊となった私達の悲しみを癒やしてくれました。これで私達もやっと自由になれました。

かすかな囁きは少女の声。何人もの。嬉しそうに感謝を伝えてくれる。あたたかな光。包まれて私ポカポカ。

うれしい・・・よかった・・・ありがとう、ありがとう、聖女様。


聖女様…あぁ!!

わたしか!じゃない、わたくしね!!くらくらしていた頭がだんだんすっきりとしてきて、ウサギでもカティアでもない記憶が思い出される。

聖女、聖女フェリシア、そうね、わたくしね!


たくさんの光が私の体からこぼれ出る。カティアと呼ばれた少女たちの魂が光に変わって消えていく。

ごめんなさい。間に合わなくて。ごめんなさい。あなた達のような目に合う人が二度とでないように全力をつくします。どうか安らかに。


ウサギの頃は忘れていた祈りを捧げる印を指をからめて組む。


光の神殿の聖女フェリシアより輪廻を回される女神様へお願いいたします。どうか少女たちの魂が苦しみ悲しみを忘れ次の生を受けるまで安らかに眠れますことを。

私は消えていく光に向かって手を伸ばし祈りを捧げた。


「フェリシア様!あれだけ私が申し上げましたのに!本当にリコ様がきてくださらなければ見つけることが出来たかどうか。本当に、もうやめてくださいね。」


私はいつの間にか黒髪の紫の目をした男性に抱き込まれていた。そのまま彼がよよと泣き崩れる。近い!距離が近い!誰だっけ・・

あ、思い出した。これは神殿長のコンスタンティン。すごい心配性なのよね。小さい頃から面倒を見てくれてるけれど、すこし過保護なところがあるのよね。そしてお説教が長い、長い、とっても長い。

途中で寝てしまうくらい長い。そしてさらにまた怒られるんだけど。


「変身魔法は危険だと申し上げましたのに!!大丈夫、大丈夫と!

いつもいつもフェリシア様の大丈夫は大丈夫じゃないのです。魔の森で動きやすいようにウサギに、その後3年も行方知れず・・・とうの昔に魔の森に生贄をささげ錬金術の糧にしていた邪教徒どもの村は一掃しました。事件は解決、されど聖女様は行方知れず。変身魔法をかけてくださった大魔法使い様におかれましては呆れられ、ウサギになったから頭の中身まで畜生になるとは元からの素養がその程度のものだったということ。聖女などという大層な呼び名で祭り上げていたお前たち神殿のいい面汚しよ。と、あまりにもひどいお言葉。その後も大聖女選定会議にも顔を出されては、ウサギ聖女はそのまま野に帰すが一番などと。フェリ様の優しいお心遣いよりも生来の落ち着きの無さを強調されて!せっかく魔王征伐以降は、フェリ様の光魔法の強さと女神様の祝福を受けたということで大聖女様の後継候補一番の地位を得ておりましたのに!私ども光の神殿一同、他の神殿からウサギ神殿と陰口を叩かれるようになって・・・一応魔の森は危険のないように許可のないものが入れないように、封鎖していただきましたけども、あなた様は森のなかでは小回りのきくウサギ!捜索隊から上手に逃げ回っていただきまして。もう!」


コンスタンティンの言葉に思い出したのは、怪しい錬金術の素材が出回っているという噂から、幼い少女たちの行方が知れなくなることが近年度々だということで魔の森付近の村があやしいということになったのだけど、なかなか調査が進まなくて、私が様子を見に行ったのよね。

被害にあっていると思われるのが幼い少女たちだということで、神殿で報告を待つだけなんてできなかったのよ。


さらにぎゅーぎゅーと抱きしめられる。彼は私にとってのお父さんというかお兄さんというか一番近くに居てくれた本当の家族よりも家族らしい存在、ちょっと心配させすぎたかな。さっきから抱きしめる腕が小刻みに震えている。ごめんなさい。私もあなたにまた会えてうれしいよ。イケメン人面どうでもいいとか思ってごめんなさいね。今なら人面は大事だと思う。ウサギ目線から回復してるよ。だからちょっと離してほしいな。一応わたし淑女だし。人前でぎゅーぎゅーされてるとまた品性がどうのとか言われると思うのよね。


「あの、コンスタンティン。心配かけてごめんなさい。でも大聖女選定までにはもどってこようとおもっていたのよ。すぐのはずだったの本当よ?」


人の姿では気づかれずに魔の森を捜索できないということで、変身魔法が得意な昔馴染みの大魔法使いに手伝いを頼んだのだけど、俺に任せておけという彼に任せたのが運の尽き、ウサギになった私はウサギの本能のまま美味しいものをもぐもぐし続けてしまったという・・・違うのよ。なんだか幸せな気持ちをたくさん感じないといけないって、そう思ったのですもの。だから美味しいものを食べなくちゃ!って。悲しい気持ちや嫌な気持ちを消さなくちゃって。まあ、美味しいものがたくさんあったので、つい気持ちが高ぶったのは認めますわ。くぅ・・・毎日毎日おしとやかな光の聖女として猫かぶって神殿でお勤めしていたのですもの、つい大自然にちょっと帰ってしまったのですわ。魔の森で魔王征伐のときの楽しかった日々が思い出されてしまったのよね。


「フェリシア様のすぐは信用できないということはわかっていました。それがまさか3年ものかくれんぼになるとは・・週に一度は私も捜索隊に参加しておりましたけれど、思念を飛ばせども飛ばせどもこたえてくださらず。もう本当にウサギからもどってこられないかと、密猟者にウサギパイにでもされてしまったらと、心配で。大魔法使い様におかれましてはかわりにウサギを聖女の姿にしてやるからそれを神殿で供えておけば誰も気づかぬだろうと。フェリシア様になんの恨みがあるのかあの方は」


ウサギがわたしの代わりに?腹黒魔法使いめ!彼が変身体にウサギを選ばなければこんなことには…もとからの素養がどうだのと、大聖女の選定にひびきそうなことを皆に吹聴して!次に会ったら絶対お返ししてやるわ!


「それでももとを正せばフェリシア様がむちゃをなさるから!本当にお立場をお考えください!あなたに癒やしてほしいと遠方からも人が来るようになった先の失踪事件!大聖女選定では本当に今光の神殿の聖女は下位になっておりますからね!!」

コンスタンティンの長々続くお説教に私の心のウサ耳がへにょりとたれた。


ウサギから聖女フェリシアに戻った翌日に私は久しぶりに友に会うことになった。

昨日はコンスタンティンの長々お説教と嘆きを聞いてるうちに寝落ちしてたのよね。やっぱり疲れてたのかしらね。ウサギ生活で体力ついたと思ってたのだけれど。リコは昨日のあの場にいたはずなのにコンスタンティンに視界を遮られてて、クッキーをくれたときの声しかきこえてなかったのよね。


そういえば魔王征伐のときはまだ15歳で体が小さいかったから体力がなくて、みんなに迷惑かけたのよね。


でも私以上に体力がなかったのはリコだったわ。あんまりにも歩くのが遅いって荷物みたいに勇者に背負子で背負われて真っ赤になってたわね。ふふふ。懐かしいこと思い出しちゃった。


わたしも誰かに背負ってほしいって冗談だったのに魔法使いの野郎に楽させてやるって突然転移魔法を使われて、人食い跳魚のいる池の浮島に飛ばされたんだったわ!軽く死ぬとこだったわ。そういえば!

他にも甘い果実水と言って果実酢を渡されたり。お花をくれたら花カマキリだったこともあった・・・他にも彼の側によると怪我をすることが多かったわ・・・


そういえば私より先に大魔法使いの称号を得て!!貴族のお嬢さんたちからちやほやされてるらしいし!きー!!思い出したらイライラするわ!

ウサギキックに値するわよ!プンプン!!


部屋付きの巫女にリコに会いたいことを伝えてもらうと彼女はすぐに私の部屋へ来てくれた。

久しぶりにゆっくり話したいと巫女には隣の部屋で控えてくれるようにおねがいする。


10年前に異世界から魔の森に現れた黒髪の少女は、10年ぶりだというのに別れたときとそう変わらぬ姿で不思議そうに私を見つめた。

あら?リコのことだから飛びついてくると思ったんだけど?おかしいな?

リコったら反応が薄いわ。どうしたかしら?


「ひさしぶりね、リコ。あなたすこし大きくなったかしら、でも私だって大きくなったでしょう?」

ふふ。10年で私の背が伸びたからリコったらびっくりしたのかしら。おめめがまんまるよ。ふふふ。

「助けてくれてありがとう。お茶でもいかがかしら?あなたのチョコレートクッキーほどではないけれど、美味しいお茶菓子も用意してもらったのよ」

にっこり彼女に椅子を示すとリコは遠慮がちに腰掛けた。テーブルには美味しそうな匂いをさせるお茶菓子と軽食が用意されていて、久しぶりの人仕様の食事に私のもぐもぐしたい気持ちもさっきからうずうずしてるのよね。

「キュィキュィ(さあ召し上がれ)」

あら?食べないならわたしから手を付けるわよ?

何かしら、リコったら久しぶりに見るわたしにくぎづけ?どうしたの?

美味しいわ。久しぶりに食べる人間の食事、おいしいわ。もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。


「フェリ?あのね、さっきからあなたがウサギ人間に見えるんだけど?き、気のせいかな?」


もぐもぐ?きゅーーーーーー!!


その日神殿から大魔法使いの勤める王宮の魔法研究所へ至急の面会を求める使者がたてられた。が、大魔法使い側は面会を拒絶。神殿長コンスタンティンが王宮へ乗り込む騒ぎとなった。


そんなわけで、リコはしばらく神殿でウサギ人間になったフェリと過ごすことになったのだが、

「リアルシルバニアファミリー」

「キュ?」

「あ、ごめんなさい。つい心の声が。チョコレートクッキーたべる?シュークリームとか、アイスクリームとかも出せるよ?」

ついつい、もぐもぐするフェリを愛でたくて生活魔法でせっせと甘いものを出してしまうリコである。ウサギ人間になったとはいえフェリシアはフェリシア、数少ない異世界での友人である。おまけに真っ白でふわふわでモフモフでトパーズみたいな光り輝く黄色の目はリコのモフモフ愛にどんぎまりである。言葉が喋れなくなったフェリシアではあるが、毎日お世話をしすぎて鼻息荒くキュイキュイと怒られているリコなのだった。


ちなみにリコは大魔法使いの行動がこじらせ小学生男子レベルであることを見抜いている唯一であるのだが、フェリシアは超鈍感娘であり、リコも誰も気づかないはずがないと思っているのでコンスタンティンの心労はしばらく続くのだった。


一方、王宮の魔法研究所では・・・

「好きな人にひねくれた態度をとってしまうので、魔法も明後日の方向に効果が出てしまうって大魔法使いの名が泣きますよ!!ほら早くでてきなさい!!」

ドンドンと扉を叩く大魔法使いの副官もしばらく苦労が続くのである。




カティアの歌はロンドン橋落ちたの歌のリズムかな?子供の歌は知ってしまうとちょっと怖いエピソードがあるものがあったりしますよね。ロンドン橋は人柱のエピソードがあったりとか・・・


評価してくださる方ありがとうございます。

少しでも面白いお話をお届け出来るようにがんばりますので、応援よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ジャンル恋愛なのか!と確認したらしっかりとダークがタグで付いていました。 シリーズ一作目が気に入り続きを読ませていただいています。ありがとうございます。
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