プロゲーマーのお方と
2020年 10/24(土)
都内某所のあるボードゲーム喫茶でのお話。
どうやら最近はプロゲーマーという職業があるらしい。ひたすら反射神経を鍛えて、コンピュータよりも精確に技を繰り出しながら、格闘ゲームを勝ち抜くのが仕事なんだとか。ならば機械学習させながらコンピュータがプレイすれば良くないか、などと考えてしまう俺は余程の捻くれ者なんだろう。
その方は、ゲーマーの世界ではそれなりに名の通ったお方らしい。自分のTwitterでのアカウントとかを誇らしげに見せていた。だが生憎と俺はプロゲーマーの世界には疎く、
『まぁ凄い人ではあるんだろうけど、どれ程凄いんだか解らないなぁ・・・」
という表情のままでいた。
プロゲーマー氏の横には、AKB48っぽい感じのアイドル染みた服装をした女性が座っていた。どういう関係なのか非常に気になる所だ。まさか恋人同士という事もないだろうが。
さてこのプロゲーマーさんとゴキブリポーカーをする。ゴキブリポーカーとは、要するに騙し合いだ。ゴキブリ、ネズミ、ハエなど6種類の害虫からなる手札をプレイヤー同士で押し付け合う。
やってみると解るが、だんだんと各プレイヤーの前にカードが置かれていく。すると各プレイヤーの手の内にあるカードが段々読めてくる様になる。それにゲームが進むにつれ、各プレーヤの手札が少なくなっていき、誰かを負かさねば自分が負けるという状況に追い込まれていく。すると嘘を付かざるをえなくなっていくのである。
その状況で相手が自分に嘘を付いているのかどうかを見抜かないといけない。
子供だましな様でいて、実際にやってみると手に汗を握る展開となる。大体嘘がバレてもその直後のターンでは、嘘を付いた相手に仕返しできないのだ。だから結局、全員が万遍なくお互いに嘘をつく様になっていく。
当初プロゲーマー氏は、自信満々な様子であった。
ー自分はゲーマーとして反射神経に優れている。こんなボードゲーム屋にいる連中の嘘を見抜くなど造作もないこと・・・。
その筈だったのだろう。だがそうはいかない。そこに俺がいたからだ。プロゲーマー氏は俺に嘘を5回連続で見抜かれてしまった。
プロゲーマー氏「・・・なんで解るの・・?」
俺「声のトーンだよ。後は目つきだな。それで解るさ」
なんだか得体のしれないものを見る目つきになったプロゲーマー氏は、しまいには俺にカードを差し出さなくなってしまった。結局俺は勝利者として生き残ることになる。このあともう1回ゴキブリポーカーをやったが、またしても作者は最後まで生き残った。
結局、適当なところでゴキブリポーカーは切り上げるか、という事になる。
その途中で、プロゲーマー氏の横にいた女性が「あ、仕事の電話だ」といって席を立った。土曜日だというのにご苦労なことである。彼女の所属事務所からの電話なのか?そこは解らない。
次にやったのはドイツのゲーム、その名もゲシェンクというタイトルである。
ここでも俺の悪い癖が出た。本来であれば、このゲームはワイワイとした雰囲気で行うパーティーゲームとなる筈だったのだ。しかし俺は、最初から委細構わず出てきたカードを手当たり次第に引き取るというプレイをやった。
するとどうなるか?
まずこのゲームのルール上、連続したカードは値の一番低いものだけがマイナスとしてカウントされる。つまり前半で大量に引き取った分が帳消しとなってしまうのだ。
それに前半で手当たり次第に引き取ればそれだけチップが溜まる。すると後半、どのカードを引き取ってどのカードを見送るのかの余裕が出てくる様になる。
つまり、これまた手に汗を握る真剣勝負となるのである。本来であれば、女の子を横にして楽しいひと時を過ごす筈だったのに、みんな急に難しい表情となってしまう。
「これそういうゲームじゃないからさぁ・・」
とプロゲーマー氏は何回か零していた。だが勝ちを目指すやり方は人それぞれだろう。
案の定、ゲシェンクを2回ほどやってから、プロゲーマー氏と横にいた女性はお店を出てしまった。
・プロゲーマー氏の人柄
ゴキブリポーカーをやっているときに、
「昆虫を粉末にしたものを食べたことがある」などと意味不明な自慢を始めたり、
「プロゲーマーですからね。反射神経は鍛えているんだ」として自分のTwitterアカウントをみせびらかしたりと、自分の凄さを見せつけることに忙しいという印象を受けた。それだけ自分に自身がないのだろうか?
更には横に女性がいることに触れて
「今日は横にこの娘がいるからね」
などと唐突に言い始める。
「普段は?」と尋ねてみると、
「え。。普段・・?そんな、まるで友達がいないみたいな、そんな」などと言い始める。(誰も彼の友達がどうたらなどという話はしていない)
プロゲーマーとして食べられているうちは良いだろうが、そうした職種がなくなったら苦労しそうだな、とは思った。だがどういう人生を送るのかは人それぞれだ。