第3回
風の音符の便りでフリー俳優のファオに呼ばれた渉夢は、ワールドタウンでたまたまENCOURAGEのメイクに会い、モッズドタウンへ続く音符のトンネルを作ってもらいました。
メイクの作った音符のトンネルをくぐり、モッズドタウンへ来た渉夢は、ファオの姿を探したところ、すぐに見つけられます。彼はギターのベンチの上に座っていました。
ファオがベンチの上を立ち上がるとき、ギュインと音がします。
「ゴー、早かったな」
「ワールドタウンでメイクさんに偶然会って、ここまでの音符のトンネルを作ってもらえました」
「ENCOURAGEのメンバーって不思議だよな。音符のトンネルもそうだけど、歌って別のところへテレポート出来たりさ」
「そうですよね、他にそういう魔法が使える歌手たちっていないですよね。歌唱魔法力がかなり高いENCOURAGEはすごい。ところで、ファオさんはどうして、私を呼んだのですか?」
「ゴーに見て欲しい演技があるんだ」
「見て欲しい演技?」
渉夢が首を傾げる中、ファオは演技を始めました。
ファオは、鋭い目つきになり、渉夢に向かってこう言います。
「オレはお前みたいに優しい奴が苦手なんだよ。もう、あまり関わってくるな」
と、セリフはトゲトゲしていましたが、渉夢は目をパチクリしていただけでした。
「ゴー、どうかな?」
元の柔らかな表情に戻り、渉夢に感想を聞くファオです。
「デュールブさんのことを思い出しました。ファオさんの今の演技の表情が、私のことをムカムカするって言っていたデュールブさんの表情に似ていました」
渉夢はそのあと、考え過ぎの癖か、デュールブに嫌われ、彼が先輩の未莉と肩を組んで歩いて行く姿まで想像し、泣きそうになります。けれども、首を振り、ファオの返事を待ちました。
「やっぱり、デュールブっぽいか。オレ、モッズド俳優事務所に入る条件として依頼された今回の役、悪役なんだよね。悪役、演じるのはいいけど、ファンが、ロッビがガッカリしないか気になってな」
「それで私に演技を見て欲しかったのですね。でも、台本の最後ってだいたい、悪役の人も主人公の人と笑い合うシーンってありませんか?」
「ゴー、よく知ってるな。オレ、台本まだゴーに見せてないぜ。ゴー、エスパーだ」
「いいえ、私の故郷の地球ではドラマっていっぱいやっているから、パターンが少しだけど分かります」
「そうなんだな。うん、主人公と笑い合うシーンが確かにある」
「ファオさん、悪役が主人公に笑うところ、見せて下さい」
「いいよ」
と、ファオが渉夢に注文されたことを演じ、微笑んだ表情をしたとき、渉夢はどきっとなります。
「これは男女関係なくファオさんの演技にクラクラしますよ。ファオさんが悪役なの忘れます」
「うーん、それじゃあダメなんだよなー」
「異世界ミュージーンの俳優さんも大変ですね」
渉夢はそう言ったあとも、ファオの気が済むまで演技を見ていたのでした。
~第3回終止符~