第1回
ここは、異世界ミュージーンです。水色の空にシャープの月、きらきらの音符と、黒の音符がきれいに交差し合っている異世界になります。
ピースやオープの故郷のワールドタウンで進実渉夢は花のパンの畑で1人、花のパンを食べていました。
「うん、今回はゴーヤークリーム!」
渉夢が美味しそうに食べているところを見たオープはゲンナリした表情で、
「ゴーって、よくそんな味がよく分からないパンを美味しく食べられるよね」
と、言いました。ゴーとは渉夢の愛称です。
「ほら、私、そんなに食べ物の好き嫌いってないから」
「渉夢ちゃん、すごいね」
ピースが口笛を吹きながらやってきて、渉夢たちの目の前で腰を下ろします。渉夢はサイドの髪のあたりに手を当てながら、照れていました。
「いいえ、そんなことないです。ピースさんだって好き嫌いがないでしょう」
「いや、あるぜ」
よおと片手を上げ、ビリービングがピースの横に腰を下ろします。
「ビリービング……」
まずそうな表情で隣に座ってきた少年を横目で見たピースです。
「え、ピースさん、好き嫌いあったのですか?」
と、渉夢が言うと、ビリービングは首を振ります。
「食べ物じゃないんだけどな。ピースはな、ミュージーンのハチがダメなんだぜ」
「ハチ!?」
「ゴーが頭の中で想像している地球の毒針があるハチとちがうんだ。ミュージーンのハチの姿形は地球のハチと一緒だけど、ミュージーンのハチは耳元を狙って歌ってくるハチなんだ」
こう説明をしてくれたオープに渉夢は鳥肌を立てていました。
「それを聞いちゃうと、私もミュージーンのハチがダメかもしれない……」
考え過ぎる性格の渉夢は、どうしても地球のハチの方を想像してしまいます。
自分の耳のところまでハチたちが飛び回って、やがて毒針を耳にチクンと刺してくるシーンまで頭の中で浮かんでしまっていました。渉夢が何を想像していたか、すぐに察したビリービングは少女を落ち着かせます。
「ゴー、大丈夫だよ、刺されねえから。言葉も話せて優しい歌声をしているハチたちだよ。ピースってさ、ちょっとでもハチたちが耳元に来ただけで、飛び上がって逃げるからな」
「オレはどうしても耳元で歌われるのがダメなんだ。やばい、想像してしまった……」
「ピチスお兄ちゃんも実はゴーに負けないぐらい考え過ぎてしまうお兄ちゃんだよね」
と、オープが従兄のピースのことを言ったあと、渉夢とビリービングは笑い、ピースは苦笑していましたが笑って歌の発声練習を始めたのでした。
~第1回終止符~