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4話「五歳になりました」

一気に飛びました。



 唐突だが、あれから五年経った。相も変わらず、俺は人里離れた森の中で生活しているのだが、そんな俺の生活にも多少なりとも変化があった。



 まず、俺が二歳の時に妹が生まれた。この五年間両親の夫婦仲は変わっておらず、夜の活動もお盛んなことでその勢いは衰えるどころが、日ごと激しさを増していた。あれだけ頻繁にやっていれば、そりゃ妹の一人もできるだろうと納得してしまうほどだ。だが、さすがに五歳ともなれば両親と寝室を同じくするわけにはいかないため、俺が三歳の誕生日のお祝いとして自分の部屋が欲しいとねだった結果、その要求が認められ今は自分の部屋で就寝している。



 この提案に最後まで反対したのが母親であるマリアンナだった。だが、俺のエンジェルスマイル――マリアンナ曰く――で彼女を説き伏せ見事説得に成功した。



「これが、子離れというものなのね……よよよよ」



 若干芝居がかった言葉を俺に向かって投げ掛けてきたが、さすがに毎晩毎晩両親のハッスルしている音を子守唄にして寝るのは勘弁してほしい……切実に。



 そして、俺が部屋を貰うと同時に妹であるレイチェルが俺と同じ部屋がいいと泣きついてきたのだ。この泣きつくというのは、言葉の通り泣き声を上げることでその意志を伝えてきたといったほうが正しい。



「まったくレイチェルったら、お兄ちゃんと同じ部屋がいいなんて図々しいにもほどがあるわ……やはり、私とウォルトちゃんの前に立ちはだかるのはあなたのようね」



 ちなみに、世間一般的に二人目の子供が生まれると先に生まれた子供よりも後に生まれた子供を優先するようになるのが普通だ。うちの両親が非凡なのかそれともこの世界の価値観がそうなのかは現在調査中だが、何故か俺に構う率がかなり高い気がする。



 これは母親父親関係なくそうであり、俺の自意識過剰でもなんでもなく妹のレイチェルよりも愛されている。もちろん、妹の世話はちゃんとしているし虐待などの行為などもまったくもって皆無なのだが、俺を構う片手間に妹を育ててますという気がしてならない。



(まあ、家を継ぐのは長男が多いから下の兄弟よりも重要視されてるのかな?)



 だがしかし、仮にそうだとするのであれば両親の口から「いつか大きくなって立派な後継ぎになるんだぞ」というようなことを言われるはずなのだが、この五年間そういった言葉は一切なくただただ大事にされているだけなのだ。



 まあとにかく、俺がこの世界に転生して五年が経過したわけだが、なんと今日が五歳を迎える誕生日だったりする。前世の年齢と合わせれば四十に近い年齢となってしまうのだが、それを言うと若干ブルーな気持ちになるので現世だけカウントし五歳(笑)ということにしておこう。五歳に見えない五歳児なんて前世でもいたしね……うん。



 さらにサプライズとして、どうやら今日はわざわざ俺の誕生日をお祝いするために遠路はるばる王都からお客さんがやってくるとのこと。ちなみに俺が住んでいる場所から王都まで徒歩で数か月掛かる道のりらしい……俺たちってどんだけ秘境に住んでるんだよ。



「ねえ、かあさん。今日来るお客さんって誰?」


「はぅ……ウォ、ウォルトちゃぁああああん!!」


「へぶっ」



 誰が来るのかまだ聞いていなかったので母親に問い掛けたところ、なぜか抱きすくめられてしまった。いつも嗅いでいる彼女の甘い匂いと柔らかさに包まれながら、抵抗することなく解放されるのをただただじっと待つ。もう彼女とも五年の付き合いなので事情は大体把握している。おそらく、小首を傾げて問いかける俺の仕草に欲情……もとい、母性を感じてしまい思わず抱きしめてしまったといったところだろう。首元に掛かる彼女の興奮した荒い息に若干身の危険を感じながらも、なんとか無事に解放してもらえたところで俺の疑問に答えてくれた。



「ふふ、今日来るお客さんはねー、なんとあなたのおじい――」


「マリアンナああああああああああ!!」



 マリアンナの声を遮るかのように、突如として大地を揺るがすほどの大声が響き渡る。あまりのことに俺が呆然としていると、さも事情を知っているかのように「あら、もう来たのね」と呟くと彼女は家の扉の方へと向かって行った。



 彼女の後を付いて行こうとしたその時、俺の服の裾が引っ張られる感覚があった。振り返ってみると、そこには金髪ショートヘアーの女の子が俺の隣に寄り添っていた。



「にー、にーと一緒にあーしもいく」


「そうか、じゃあ一緒に行こうか」


「うんっ」



 子供らしい艶のある髪を靡かせながら母親と同じ碧眼の目を細めて顔を綻ばせているのは、我が妹レイチェルだ。あのお盛んな二人の美男美女との間にできた子供だけあって顔立ちは超絶的に整っており、お人形さんと言われればかなりの人が信じてしまうほどに美しい容姿をしている。まさに美少女ならぬ美幼女である。



 彼女と手を繋ぎながら母親が出迎えている人物のもとへと歩み寄って行く。家の扉の前にいたのは老齢の男性だった。



「久しぶりだのマリアンナ、会いたかったぞ」


「私も会いたかったわパパ。……はっ、レイチェル! あなたウォルトちゃんと手を繋ぐなんてなんて破廉恥な!! 私と代わりなさい!」


「やー」



 俺が妹と手を繋いでいるのを目敏く見つけたマリアンナが、その行為を窘める。別に兄妹同士で手を繋ぐくらいは問題ないと思うが、そのことについて敢えて言及はしない……前に突っ込んで大泣きされたからな。三歳の幼女と大人気なく睨み合っていると、それを見かねた男性がわざとらしく咳ばらいをする。



「ゴホン、娘よ。そろそろ、わしを紹介して欲しいのだがな……」


「ぐぬぬぬぬ……え? あ、ああ、そうだったわ。二人とも、この人はあなたたちのおじいちゃんよ。挨拶しなさい」



 マリアンナがそんな風に紹介した人物に視線を向けると、俺は彼に向かって自己紹介を始めた。果たして祖父とは一体どんな人なのだろうか?

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