短編~コマ送り
今日は、移民島の桜田公民館では、映画館鑑賞会が行われていました。
スクリーンには、「アゲハチョウの育ち方」という科学映画のタイトルが映し出されていました。
「こんな真面目な映画をみる暇があったら、推理モノの映画を見るのに」
大熊は子どものように退屈そうに言いました。
大熊の意見に、珍しくシグマ警部も賛同の声をあげました。
「常に真面目に勉強する姿勢は、大変関心であるが、休日まで勉強する気にはなれないな」
その意見に、重ねてネコバーがさらに言いました。
「そうね。休日ぐらい好きなことをしましょうよ」
結局、映画鑑賞会は希望者のみ行うことにして、不参加者は各自のびのびと自分たちの休暇を楽しむことにしました。
さて、映画館鑑賞会の希望者は、どんな人たちが残ったのでしょうか。
相当の勉強家または狂った人たちであることが、予想されます。
「その勉強は、私のことだな」
博士はエッヘン、という顔をしました。
「狂った人たちとは、悲しい表現ですね」
渋川は、東大入試専用の数学の問題集を見ながら言った。
「たぶん、お前がいるから我々は、狂った人と間違われるのであろうな」
博士はそのように言いましたが、この島の島民の大半は、変わった人が多いです。
この変わった、狂った人たちのことは置いといて、別を見に行きましょう。
「コラー。我々の出番が短いぞ。スペシャルの枠を設けろ! 」
博士は怒っていますが、あくまでサブの位置づけなのでしょうがないのです。
次に、別の休日を楽しんでいる人たちを見てみましょう。
「変人とは、別の休日を楽しんでいる大熊です」
「サブではなくメイン担当のシグマ警部です」
二人は、将棋の試合を楽しみながら何か話し合っています。
「そう言えば、ネコバーの誕生会の件はどうなっている? 」
誕生会の実行員担当の大熊にシグマ警部は質問した。
「飛車を取った。ネコバーが何歳であるか非公開であるから年齢を書かず、代わりに今までの受賞を書こうと思う」
「そうか、誕生日プレゼントはどうなっている? 」
「予算は、会場、設備などに用いるからプレゼント代は、制限されているな」
大熊は、最適な場所に駒を移動させた。
最弱のシグマ警部は、しばらく考えた後に、駒を移動させた。
「正直、小学生でもないのに誕生会なんていらないだろう」
「しかし、島民の信頼関係を構築するには、一番有効な手段かもしれないな」
「それは正しい意見だが、静かに祝いたい島民もいるだろう」
大熊はシグマ警部の玉を追い詰めた。
「君のような秘密主義者は、特にそうかもしれないな」
「ワケありの島民が多いですからね」
「特に詮索好きの島民はいないのだが。それだけ人が信用できないということだな」
「別に人を信用できない訳でない。ただ、戦時中に疑心暗鬼な人間関係の環境におかれていたものだからな」
シグマ警部は、玉を逃がすための方法を考えた。
「戦時中の環境がそのようであったことは認める。それから人間関係を構築しようとしている努力は認める。しかし、ベクトル警部やインテグラル警部と比較した時に君は、もう少しオープンにしたほうがよいのではないかと思う」
大熊は、シグマ警部の玉を取り試合は終了した。
「誰にでも苦しい思い出したくない過去はある。しかし、それを乗り越えようとみんな努力しているのだ」
勝利した大熊はそう言い、席を立った。
終わり