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〖Someday one day〗

今回の話は短めです。

 

 いつか()る日、リヴァ・アースのクレティア大陸のとある森にて── 。


 深い森の中を駆ける人、人、人。走っている誰もがその身に革鎧(レザーアーマー)を着込み、ある者は剣を手に、ある者は弓を手に、そしてある者はその手に()を持っていた。


「ハァハァハァハァハァハァ──」


「ハッハッハッハッハッ──」


「ヒィーーッ!ヒィヒィヒィッ──」


 ただ我武者羅(がむしゃら)に森を駆け抜けて行く男達。その目に(おび)えを写して。


「ハッハッハッ──ま、まだ追って来るぞ!」


「ハァハァハァ──畜生! 執拗(しつこ)いな!?」


「ヒィヒィヒィ──な、何なんだよあの魔獣(ビースト)はぁ?!」


 彼等が言う魔獣(ビースト)とは、(ケモノ)が「マナ」の(よど)みの中で()()()()した生物である。「マナ」の澱みは定期的に発生し、そこにたまたま居た獣を魔獣(ビースト)へと変質させる。ビーストになると凶暴性が増し、他の獣のみならず人にさえも危害を加える様になるのだ。


 そのビーストが彼等の後ろから追い掛けて来ていた。元はただの森狼(フォレストウルフ)だったのが変質し、今は()()()()()の異形と成り果てている。身体も普通の森狼(フォレストウルフ)よりも二回りほど大きくなっており、双眸(そうぼう)は紅い輝きを放っている。


「ガルルルルルルルーーッ!」


 その様子は明らかに目の前を駆けて行く男達を獲物として狙っているのは明らかだ。


 彼等は俗に言う「冒険者」であり、ビースト討伐の為に森の奥深くへと分けいったのだが、遭遇したビーストは思いの外強く素早かった。その厚い毛皮に魔法(マギ)や弓矢は弾かれ、長剣(ロングソード)による斬撃も有効打になり得ず、逆に獲物として追い掛けられる羽目に(おちい)っていた。





「ハァハァハァ──こ、このままじゃ奴に──ハァハァ、追い付かれるッ!」


 リーダーと思しきロングソードを持った冒険者──戦士(ウォーリア)の男が走りながら思わず叫ぶ! それとほぼ同時に


『そのまま走ってッ!』


 若い女の声が3人の頭の中に突然響く。


「「なっ──?!」」


「こ、これは【精神感応(チャネリング)】ッ?!」


 リーダーのウォーリアと弓を手にした冒険者──弓士(アーチャー)の男は驚いたが、杖を持った冒険者はそれが補助魔法術(アシスト・マギア)の【精神感応(チャネリング)】だと気がついた。そう彼は魔法使い(ウィザード)だったのだ。


『そのまま真っ直ぐ走って! あと3分程で森が切れるわ! 森が切れるのと同時に左右に別れてッ!』


 冒険者達の戸惑いにお構いなしに【精神感応(チャネリング)】で若い女の声がそう指示を与えて来る。


「ハァハァ! おいっ! 聞こえたか?!」


「ハッハッハッ! だ、誰だか知らんが」


「ヒィヒィ──し、従いましょう!」


 男達は【精神感応(チャネリング)】の指示に従う道を選んだ。何方(どちら)にしてももうあとが無いのだ。





 それから無我夢中で駆ける事3分、【精神感応(チャネリング)】で女が言った通り森が切れた。同時に自分達の遥か先には()()の男女の姿が?!


「あ、あれはッ?!」


『そこを退いてーーッ!』


 その姿を見てリーダーが思わず叫ぶのと【精神感応(チャネリング)】で女が指示を飛ばすのが重なる! 3人の冒険者は慌てて左右に別れる!


目標(ターゲット)まで約1,400m。森の切れ目まで約1,200m。どう? ここから狙える?」


 女は専用の光学機器(フィールドスコープ)を覗き込みながら、自分の横で伏射(プローン)姿勢でいる男に声を掛ける。女は同時に男に向かって「【鎮痛付与治療(アナルジーヒール)】」と小声で唱える。


「大丈夫だ、問題ない」


 男は照準器(スコープ)を覗きながらそう短く答えると、構えているマクミランTAC-50対物(アンチマテリアル)ライフル()()()遊底(ボルト)ハンドルを起こしてロックを解きボルトを引く。そして.50BMG(12.7×99mm)弾をボルトハンドルを操作して薬室(チャンバー)へと送り込みボルトをロックする。そして小さな声で「『思考行動加速(クロックアップ)』」と(つぶや)く男。


 次の瞬間、男が構えるアンチマテリアルライフルが火を噴く! 発射された12.7mm弾は1,200mの距離を飛び、森から飛び出して来たビーストの頭を見事に真正面から撃ち抜く! 紅く()ぜるビーストの頭部! そのまま身体を痙攣(けいれん)させながら大地に倒れ伏すビースト! 流れ出る血が大地を見る間に紅く染めて行くのだった。





「お見事」


 女は横でアンチマテリアルライフルのボルトのロックを解き、そのままボルトを引いて12.7mm弾の空薬莢を排莢(はいきょう)する男に声を掛ける。


「まぁこんなもんだろう」


 そう言うと伏せていた姿勢から身体を起こし、構えていたアンチマテリアルライフルを肩に背負う男。


「ハッハッ──ハァ、た、助かった、のか?」


「ヒィヒィ──フーッ、ど、どうやらな……」


「ハァハァハァ──フゥ、酷い目にあったな……」


 それぞれに呟くと地面にバッタリと倒れ込む3人の冒険者達。


「フゥ、アイツらは一体何者なんだ?」


「ハァ、さ、さぁ?」


「さっきの攻撃は魔法(マギ)なのか?」


「いや、魔力は感じなかったんだけど……」


 アーチャーとウィザードの2人がそんな事を話していると


「ハァハァ──何だ、お前らは知らんのか」


 リーダーのウォーリアが話に割って入る。


「あれは凄腕の傭兵【黒雪姫(スノウ・ブラック)】と至上之魔導師(アーク・メイガス)

白金(プラティニク)の姫様(・プリンセス)】の2人さ。俺も会うのは初めてだがな」


「彼等があの噂の……」


 ウォーリアの話に顔を見合わせるアーチャーとウィザード。


黒雪姫(スノウ・ブラック)】と呼ばれた男と【白金(プラティニク)の姫様(・プリンセス)】と呼ばれた女は、まるでそれがデートの帰り道みたいな気軽さで3人の元に歩いてくるのであった。



  〜END〜


これにて「魔法と銃との異界譚」は終わりとなります。ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。

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