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レトロなゲーセンの日々




ここは田舎町郊外のアミューズメント施設。

アミューズメントと言っても、昔ながらのゲームコーナーと簡単な飲食コーナーと自販機しか置いていない、いわゆる学生やティーンエイジたちが主に息抜きしに来るゲーセンと呼ばれるお店だ。


今日はここに、一人の学生がアルバイト求人の面接を受けに来ていた…


冷たい色のアルミサッシのドア、

泥除けマットが敷いてある段差を跨ぎ店の入り口を通って受付カウンターへ向かうタカシ…



「いらっしゃいませ!」

愛想の良い好青年の店員が出迎えてくれた。


「あ、すいません…

アルバイトの面接に伺った

関口と言いますが、担当者の方はいらっしゃいますか?」

タカシは緊張気味に伺う。


「はい、求人募集の面接の方ですね?

こちらへどうぞ。」


受付の好青年の店員が親切そうに面接の場所へ案内してくれる、無駄話をすることもなく来店した交通手段と駐輪場と駐車場、トイレの案内説明を歩きながらされる。


「こちらです。」


受付を過ぎて離れの建屋へ向かう通路を通ると、ここもゲームコーナーになっている。

メインの受付付近の場所より薄暗く、古いゲーム機器が並び通常より半額位でプレイできるサービスコーナーだ。

縦長の屋根が低い簡素な建屋を奥へ進むと、両替機の近くのカウンターへ案内される。

カウンターの奥はカーテンで仕切られた倉庫の様な場所、そこが面接場所となっていた。


「社長、入りますよー?

求人募集て来店した方をお連れしましたー」


タカシは益々緊張してきた。

しかも"社長?"と言っていた、だいたいは店長が面接を受けると相場なんだけど…

社長自ら面接官なら、大きな博打打ちと変わらないな今日は。


色々な思いが緊張と混ざり合って、変なアドレナリンまで感じてきてしまったタカシ。

今更後戻りは出来ない空気の中、ここ最近では忘れていた勇気を絞り出しカーテンを潜った…


「し、失礼します!… 」


「はーい、どーぞー!」

それは女性の声だった… え、女社長?


中年くらいの歳相応の女社長だった。

狭い倉庫は事務所兼用で、ゲーム機の景品が入ったダンボールが所狭しと山積みで、違う所のスチール棚には、過去に使われていたゲーム基盤がゲーム名を書かれたビニールと梱包材に巻かれて並べられている。

社長が座っている前の机の上には、防犯カメラのモノクロモニターが4台置いてある。

その隣には、頑丈そうな色の少し大きめの金庫が目に入った。




面接に来たこの学生は…

関口タカシ・19歳、専門学校生。


ごく平凡な青年で、ごく平凡な土地の山も海もある所で日本の真ん中辺りの田舎町に住んでいる。

今年、高校を卒業し情報処理の専門学校へ進学したばかりでパソコンは小学生の頃から兄貴のお古を頂いておもちゃ代わりにして遊んでいた、もう生活の一部となって趣味の一部だ。趣味が高じて得意となったプログラムの打ち込みで将来もこの道を希望していた。


兄貴のお古のパソコンの影響で、ゲーム好きにもなったタカシ。家庭用ゲーム機も多種に普及し始めていたこの頃に丁度、高校卒業を控え進学か就職かと自身の人生で最大の分岐点だった時、このお店へ息抜きに遊びに来ていた一応、常連客のタカシだった。


パソコン歴も同級生の中では長く経験もあり、進路指導の先生の勧めで何とか進学専門学校へ合格。

その後、学校生活も落ち着いてそろそろお小遣いも稼がないと…と、求人誌に見覚えのあった名前が載っていた、それがこのお店だった。



面接を受け始めてから10分が過ぎた…

「…ここは他にも、あなたみたいな学生アルバイトが殆どだから直ぐに慣れますよ。

ゲーム好きなら大丈夫!

結果は追って、2、3日中に電話で連絡しますね…今日はご足労をありがとうございます、気をつけて帰ってね。」


「こちらこそ、お忙しい中をありがとうございました。」


変なアドレナリンも、女社長に面接を受けているうちに何処かへ忘れていた。

15分余りの短さで面接が終わりホッとしてゲームコーナーを出る。


アルバイト経験が皆無のタカシ。

ゲームセンターの殆どはパソコンからの移植が多い事も良く知っていた。

あとは、サービス業と言う接客業務が課題となるが、これも慣れで何とか出来るかな?と半信半疑でこの日は、原付バイクに跨りお店をあとにする。




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