数か月後
人間たちは地下を中心に生きている。地球外生命体ことぷよ彦は暗闇が嫌いなようで地下に近づこうとしない。夜になると活動を静止して動かなくなる。しかし、動く物体があると夜でも関係なく追いかけるようだ。
地下鉄を使い、生活圏を確保した人間は無人と化した地上を離れ、とりあえずの平穏を手に入れたようだ。だが地下に避難できなかったり地方の人間たちは推して知るべしである。
またぷよ彦の撃退方法も色々模索しているようだが成績は芳しくない。銃火器は効かないしミサイルなどの殲滅兵器などで一瞬に消さないと彼らは消滅しないようだった。
しかし、朗報もあった。私の様に人間の意識を持ったまま地球外生命体になった人間が確認されたのだ。その男は自衛隊員で戦闘時にぷよ彦に取り込まれ死亡と見なされたがその後裸の状態で発見される。本人は人間の後藤であると主張しているが確かに他の隊員は後藤がぷよ彦に取り込まれたのを目撃していた。隔離、監視された後藤だったが研究員の調査の結果、何らかの奇跡で生き残ることが出来たと結論付けた。
後藤はその後ぷよ彦に襲われることが無くなり一人地上での作戦が命令される人間となった。私はそのことを地下施設の居住区や研究施設での噂話、ぴよ彦の思念で聞きだすことが出来るようになっていた。
私は後藤が隔離されている間、日本中を回っていた。どうやらぷよ彦は人間以外にも変形出来るようで馬になったり鳥になったりして遊んでいた。
いやぁ飛ぶのってやっぱり難しいね、練習を一杯したよ。残っていたカラスのお師匠を見つけて飛び方を教えてもらった。ぷよ彦は動物だったら何でも取り込むけど野生動物はさすが逃げるのが上手いのか山に行ったら生存している動物は結構いた。
彼らの行動を観察してそのものになりきるのは面白かった。そうやって地方を回ったのだが人間はほとんどいなくなっていた。しかし、面白いものも発見した。巨大な木のような地球生命体だ。彼も私のような元人間だったようで意志疎通ができた。
彼は人間だった時の記憶も名前も覚えていなかったが意志は明確で、話しぶりから男性だったと思われた。
私が近づくと気さくに話しかけてくれた。何で木のようになっているのか本人も分かってなかったが、この状態が落ち着くそうだ。彼の周りにはうじゃうじゃとぷよ彦が集まり彼を慕っていた。彼もぷよ彦を慈しんでいた。彼の周りにいるぷよ彦は他のぷよ彦よりも意志が明確で感情も豊かだった。どうやらぷよ彦は私みたいな中途半端な奴から意志感情を学習しているようだった。
木の彼は今の状態を気に入っていて動く気も他に気になることもないそうだ。私は彼に木之本と言う名前を命名し、彼も気に入ってくれた。偶に訪れることを約束して私は彼の元を去った。
後藤が人間の元活動を始めると暫くするとぴよ彦とは違う敵対者が人間に向かった。彼女もまた元人間の地球生命体だった。後藤は人間を生かす生き方をしていたが彼女は人間を絶滅させるために活動していた。彼らは敵対視、対立が激しくなる。人間と共に活動する後藤とぴよ彦と人間を殺そうとする彼女、それを私は見ていた。時に人間になり時に猫になりすまして。
だがある時気づかれてしまった。気づいたのは地球外生命体になった初日に助けた男性だった。
後藤と同じような存在として人間の協力を要請されてしまった。まあ無難に静観しつつ助言をする程度に留めた。所詮人間同士の戦いだ。後藤も彼女も己が人間だと思って戦っていた。人間の取り巻く戦いに私は関係なかった。私は自分を人間だと思っていないし、木之本もすでに思っていないだろう。彼は完全に人間社会に興味を失くしていたが私は興味があるようだった。人間関係というよりはマンガや食べ物などの文化や食事に食指が行くのだが。
やがて彼女は人間を憎んで死んでいった。後藤は人間として生きて行くそうだ。
私は、ヨーロッパに行こうと思う。アジアを辿り人間たちが戦う死闘の最前線へ、人間が辿る歴史を見るために。
とりあえず英語を話せるようにしよう。英語の成績は悪かったせいで嫌いなんだけどなぁ。