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嫌いだから死んでくれ  作者: ちいさんっぽい人
2/2

鬱陶しいから

『自分がやられて嫌なこと』を詰め込みました。

ひたすらに文字を目に映していく作業は嫌いではない。ページをめくる音、捲ったページがどんどん太くなっていくのもまた、嫌いでは無かった。


只一つ、嫌いなもの。それは『クラスメイト』という存在。

『学校』という小さな世界でわちゃわちゃと争いその中で優劣が決まっていく、そんな馬鹿馬鹿しいことには付き合ってられなかった。勿論、それは仕方のない事だと割り切ってはいるのだが。


小説のきりのいいところで金の装飾が施された薔薇の栞を挟み、本を閉じた所で声を掛けられた。

「ねぇ、有紀ちゃーん?」


聞き慣れた声、胃がきりりと痛む。


「その本面白いー?」


胃痛の激しさが増す。

話しかけるな。

そう、彼女は私の親友だった(崎原 紫苑)の声だ。

彼女は語尾を伸ばす癖がある。


「うん、まあね。」


出来る限り明るい声を出そうと全神経を使って絞り出す。

こいつの後ろで取り巻きであろう男子共がこっちを見ている。こいつの声も、こいつの周りの奴らの声も聞きたくない。耳を塞いでしまいたかった。

然しそんな気持ちなど知る由もないのだろう。


「どんな本ー?」


と、私の持っていた本を手に取り…いや、『奪い取る』と言った方が正しい、そして紙のブックカバーを強引に剥ぎ取った。相変わらず取り巻きの男子達はこっちを見て笑っている。


「『砂街宵』??あーよく分かんないや。あ、帯になんか書いてある、『貴方はこの世界をどう彷徨いますか?』だって、わっかんなぁーい。」


はい、と返された本。その紙のブックカバーを見ると、折り目の所が傷んでいた。

許せなかった。



私は分かっていた。全て分かっていた。紫苑が小説を目当てに私に近寄った訳では無い事を。只、『茶化しに来ただけ』なのだ。自分の今の状態を、如何にも充実しているかを見せつけに、私の文庫本をだしにアピールしたかっただけなのだ。私に話し掛けたときからその声はずっと嘲笑っていた。最初から最後まで馬鹿にしていた。


本当に、腹が立つ。


汚された本をきれいにしてブックカバーを着ける。

ふと気付く、


薔薇の栞が無い。


再び襲う胃痛、やられた事に対しての憤りが湧く。


「栞、返して。」

私は短く告げた。


それに対して紫苑は


「これすっごいきれいじゃーん‼」

と、ニヤニヤとしながら私の栞にベタベタと触れている。

もう辞めてほしい。その汚い手で私のお気に入りの栞に触れないで欲しい。一刻も早くこの場から消えてほしい。

汗がてのひらにじんわりと広がっていくのを感じた。


「ああもうホント居なくなればいいのに。」


気付かれないように言葉を零した。

もっと、登場人物達の性格の悪さを前面に出せるようになりたい。

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