一話
「どこだよここ!なんでこんな所にぃ!」
叫ぶ飛馬に視線が集まる。それに気付いて、バツが悪そうに歩き出す。
「くそぅ、明らかに日本じゃない。てか人じゃない奴いたよね?」
ブツブツと文句を垂れながら歩く。頭がいっぱいいっぱいで歩行者とぶつかる。
「おい兄ちゃん!何ぶつかって来てんだぁ?」
三人組に絡まれる。右は少し小柄でアクセサリーがジャラジャラ付いている。真ん中は顔が犬。多分獣人なのだろう。そして左。飛馬がぶつかった奴だ。顔の真ん中に大きな傷があり、唇や耳にピアスをしている。明らかにやばい。
「兄貴!こいつ謝りもしませんぜ!」
獣人が言い放つ。それに合わせるように小柄なやつが俺の肩を掴む。
「兄ちゃん、ちょっと来てもらおっか」
小柄なやつと獣人にグイグイ押され、路地裏へと連れ込まれた。
「今なぁ、当たってすげぇ痛かったんだよ。だから、置いてくもん置いてってもらおうか。痛い思いはしたくないだろ?」
兄貴と呼ばれる男が言う。普通なら金などを置いていくのだろう。
「は?なんでそんな事しないといけないの?確かにぶつかったのは悪いと思ってるし、咄嗟のことで謝れなかった。でもそれとこれは全然釣り合わないよね」
そう、正義感。あろう事かこの男はそれだけの理由で強面のヤンキー達に、勝算もないのに喧嘩を売った。
「へぇー。いい度胸じゃん」
小柄な奴がポキポキと指を鳴らす。そして顔にめがけて拳を振る。飛馬はそれを慌てて避ける。すると、背後から蹴り。獣人からだ。そして、傷顔の男からのボディブローが入ろうかという時に。
「あなた達!何をしているの!」
暴行を制止する。声のする方へ視線を移す。するとそこには金髪の少女が仁王立ちしていた。