表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

O田原提灯マン改めナナシ -4

作者: 世捨て人抜け作

O田原提灯マン改めナナシ


AM:8:45

晴れの日も雨の日も、会社に向かうサラリーマンの群れで

ごった返すO田原駅構内。

男が一人、O田原駅の提灯のオブジェの下に立つ。


O田原提灯マン認証しました。

コンピュータ音声がメットの中に響く。

さあ、出勤だ。

男の姿は提灯のオブジェに吸い込まれる。


ジャンバーを脱いで、ロッカーから取り出したヒーロージャージに着替える。

スタンバイOKだ!

一日で一番充実している瞬間。

ローカルヒーローとしての一日の始まりだ。


AM:9:00

さて、今日もスケジュールが真っ白。


通信ランプが点灯していた。

ん?通信が入ってる珍しいな。

「えっと、これだっけ?」

もどかしい手つきでスイッチを入れる。


「やあ、ヒーロー生活には慣れた?」

人懐っこい笑顔でモニタ越しに語り掛けてくる青年。

こいつの名前は龍門。

俺をヒーローの世界に導いてくれた男だ。


「まあ、なんとかやってるよ」

頭を掻きながら答えた。


ブラック企業を退社して無職だった頃に、里帰りしていた龍門にばったり出会った。

子供の頃に近所に住んでいて、俺とは違って秀才だった。

俺は多くの友達の一人としか思っていなかったが、こいつは俺の事を無二の親友扱いで正直照れ臭かった。

龍門は友達少なかったのかな?

積もる思い出に花を咲かせた後、ヒーローにスカウトされたという訳だ。


「お前の推薦があったから、ヒーローになれたようなもんだ」

しみじみそう思った。

龍門はヒーローのバックアップ組織の装備開発部の次期幹部候補ってとこだ。

出世街道ばく進中ってとこか。


「でも、先代のO田原提灯マンの東さんの指導を完走して本当にヒーローになるとはね」

メガネを拭きながら龍門は多少呆れ顔だった。


「東さんか、シゴキ半端なかったな」

俺がおじいちゃん子じゃなかったら、三日と持たなかったろうな。

ヒーローになるには、ヒーロー養成所を卒業してヒーローになるのが今の主流だ。

師弟制度を利用する奴は今時皆無だ。

師弟の人間関係が煩わしくて選択肢にも上らないんだろうな。

面接の時に地元希望したのが悪かったのかな。


「あれ、一人?」

殺風景なヒーロールームを見渡して龍門は言った。

「一人だけど、何か?」

龍門の問いに俺はオウム返しに答えた。

「いや、アシスタントさんいないなーって」

不思議そうに龍門は言った。

「アシスタント!」

思わず俺は椅子から飛び上がった。

「あー、アシスタント使わない主義なんだ。昔から一匹狼って感じだったもんね」

悪戯な笑みを浮かべて龍門は言った。

「おい、アシスタントなんて聞いてないぞ!」

俺は思わずモニタに食ってかかった。

「ああ、なんだ申請してないのか?」

龍門は事情を察しているのにとぼけて聞いているようだった。

「申請すんの?」

俺はかなり鼻息が荒かった。

「分かった手配しとくよ、何か希望は?」

笑いを堪えながら龍門は言った。

「アシスタントって、やっぱ女の子だよな」

俺は知らず知らずのうちにかなり声がでかくなっていた。

「ご期待に沿えるようにするよ」

耳を押さえながら龍門は答えた。

「サンキュー!!」

俺は何時の間にかでっかいガッツポーズをしていた。

珍しく明日が来るのが楽しみだ。


PM:17:00

今日も一日平和に終わった。

帰るか。

何時ものようにヒーロージャージを脱いで、ハンガーにかけロッカーにしまう。

通勤ラッシュが始まる前に帰宅の途についた。


2017.01.11



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ