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昔書いたやつ

妻とマグロと娘の結婚

作者: 粟家 大三治

「女の子」「トイレットペーパー」「シーチキン」をテーマに書いた三題噺だった記憶が。

俺たちの一人娘の真紀が

結婚して

明日、家を出て行く。

だから

俺は今日、

君と話がしたくてたまらない。


俺なりに今までがんばってきたよ。

君に笑われぬよう、

怒られぬよう、

そんなことばっかり考えて

がむしゃらに。


俺は真紀にとって

いい父親だったんだろうか。

その問いに対する答えを

ぜひ、君から聞きたい気分なんだ。



「トイレットペーパー、

買いに行ってくるね」

そう告げて出かけた君。


それが

俺の知る最後の君になるだなんて

あの時の俺は想像だにしていなかった。


俺は前の日の残業で帰りが遅くて

まだベッドの中だった。

あまりにも眠たくて

君の方を見ることもせずに

「わかった」

とだけ言った。


今から18年前。

地球は

異星人からの侵略を受けた。

鶏肉が好きなその異星人たちは

シーチキンを

その名前から鶏肉だと思い込み、

大量に買って本国に戻った。

その後、

さんざっぱらシーチキンを

食い散らかした後で

実はシーチキンが

マグロフレークであったことを知り、

宗教上の理由で

マグロを食べてはいけない

その異星人たちは

それはもう大激怒。

大船団を率いて

地球にやってくるや

国連に対して

地球上の全ての鶏肉を

即時自分たちに引き渡すこと

これ以降地球において

マグロを食用にはしないこと

とを求めたのだった。


そして、

見せしめのために

一人の買い物中の主婦に

怪しげな光線を照射し、

マグロに変えた。


ねえ、

それが

どうして君だったの?

どうして俺ではなかったの?

今となっては

もう、何を言っても仕方ないのだけども、

“なぜあの時一人で出かけさせたのか”

という後悔に

俺は苛まれ続けている。



半年くらいの宇宙戦争の末に、

異星人たちは地球に降伏し

素直に謝った。

ただ、

主婦をマグロに変えるテクノロジーは

もっているものの

マグロになった元主婦を

主婦に戻す技術はないようで、

君が元の姿に戻ることはなかった。



元、君だったマグロは

とても

活きがよかった。

その姿を見て

当時まだ

小さな女の子だった真紀は

うちで家族として共に暮らす、

といって泣いては

国連の人を困らせたりもしていた。



そんな真紀も

ついに結婚だよ。

相手の健介君もいい人だから

きっと二人で

幸せな家庭を

築いてくれることだろうと思う。


俺は真紀にとって

いい父親だったんだろうか。

最近ずっと、

そのことばかり考えている。

その問いに対する答えを

ぜひ、君から聞きたい気分なんだ。


俺たちの一人娘の真紀が

結婚して

明日、家を出て行く。

だから

俺は今日、

君と話がしたくてたまらない。

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