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改訂中  作者: ハヤブサ
激動
2/40

台風ニーナ

 キーンコーンカーンコーン


「じゃあ、今日の授業はここまでにします。」


 やっと終わった。授業中の60分ってのはなんでこんなに長いんだろうなぁ。


「ねえジン?」

「サラか…なんだよ?」

「この前の襲撃で死亡者は出なかったらしいよ。やるじゃない。」

「あーそうか。なら良かった。」


 顔は良く見えなかったがあの時の金髪も無事か。良かった良かった。

 その時、教室の後ろのドアが開いた。普段ならなんて事ない光景だが、何故かクラスの男子がざわつく。


「おいっ…アレって1組のニーナさんだよな?」

「ああ、間違いねえ。可愛いなぁ。」

「でも俺たちのクラスに何の用だろう?」


 カツ……カツ……と靴の音を鳴らし、そのニーナと呼ばれている少女は長い金の髪を揺らしながら歩く。

 な、なんか俺の方に向かってきてない? 気のせいだよね? 俺喋った事ないし。

 だが、予想は的中しその女は俺の前で止まった。またもやクラスの男子がざわつく。


「えっ、なんであのお嬢様がジンなんかの所に…?」

「さぁ?」


俺の前に止まった彼女は俺の肩を叩き、ニコリと笑った。


「見つけました……。ジン・ベルセ……ですわね?」


 ニコリと笑うその顔は少し紅くなっていた。


「あ、ああ、そうだが……。」

「昨日助けて下さったのは貴方ですわよね……?」


 そのセリフを聞き、俺は全てを理解した。なるほど、コイツ……あの時の金髪か……。

 俺がまじまじとニーナを見ているとサラが俺を睨んできた。こういう時のサラの言いたい事は分かっている。こいつは俺と女をあまり接触させたがらないのだ。理由を聞いたところ、俺があまり目立つ事は良くないから、だそうだ。今回の場合は魔物を討伐したのが俺だとバレない為もあるんだろうけど。

 まぁ俺は訳あってこの学園に入学してきたので、一応はその理由でも納得できるから、俺はそれをそこそこ徹底している。


「いいや、知らねえな、昨日ってなんだ? てかお前誰だ? すまないな最近転校してきたんだ。」

「申し遅れました。わたくしニーナと申します。1組でクラス委員長をやらせて貰っていますわ。」

「そうか、ニーナ。残念だが人違いだ。」


 隣では、満点の回答で満足したのか、サラがニヤリと笑ったゲスな顔をしている。なんなんだコイツは。クラスの男子は依然ざわつく。


「おい、あいつらは何の話をしてるんだ? 昨日って魔物の事か?」

「知るかよ。ニーナさんとジンが知り合いな訳無いからな。ジンはこの前転入してきたばっかだし。」



ザワザワ



「見間違い? そんなはずはありませんわ。」


 ニーナは澄んだ目で俺を見据えると、キッパリとそう言い放った。


「な、何を根拠にそう言い切れるんだ?」

「だって、わたくしが見間違えるはずありませんもの。」

「ど、どうして?」




「一目惚れした人ですもの。」





世界が、止まった




 え、ちょっと待って? なんて? この女なんて言った? 一目惚れって言った? 言ってないよね? お米の話でしたととかそんなオチだよね?

 俺は唐突の告白にパニックになっていた。とりあえず、訳のわからぬまま俺が発した一言は――


「あ、ありがとう?」


ザワワッ


「まぁジン。それは好意として受け取って良いのかしら?」


ザワワッ!!

  頬を染めながら言うニーナ。好意? コウイ? 好意ってなんだっけ? あれやべパニクってるな俺。まぁ良いか? 良いよね。よく分かんないけど良いよな、たぶん。


「ああ、良――」

「良くないっっっっっっ!!!!!」


  耳が、壊れるかと思った。声を発したのは隣にいるサラ。普段のサラを知っている俺でも結構驚いたのだから、クールだと思っているクラスメイトは当然、皆呆然としている。そしてニーナも驚いている。


「あ、貴女は、サラさんですわね? 学園始まって以来の成績優秀で有名ですわ。けれど急になんですの?」

「ふーっ、ふーっ……。急にもなにも、バカジンがアンタみたいなよく分かんない女に引っかかりそうだから止めてやってんのよ!」


 おい、ドサクサに紛れてバカって言ったなサラ。


「な、な、なんですって? 貴女こそジンのなんですの!?」

「な、なにって、そりゃあ、アレよ! ジンの事を1番分かってる女よ! 私とジンは幼なじみなのよ!? あんたなんかとは年季が違うわ!」


 サラは息を荒立て、興奮しながら大きな声をあげていた。顔は真っ赤だった。

  なんだよこの会話……なんでサラも恥ずかしがってんだよ……おかげで冷静になってきたわ


「お、おい。よくわかんねえけど俺抜きで話進めるなよ。と、とりあえずニーナ。確かに助けたのは俺だ。そのお礼を言いに来たんだよな? それはもう気にしなくて良い。よし終わり! もうすぐ授業始まるしお開きにしよう」


俺はさっさと終わらせたい気持ちで言ったつもりだったのだが、2人には逆効果だったようで。


「やはり貴方だったんですわね……嬉しい!。しかしサラさん! さっきの発言聞き捨てなりません。貴方よりも優秀なわたくしのほうがジンには相応しいに決まっています!」

「はんっ! そんな訳無いでしょ! 私たちを並の付き合いだと思わない方がいいわよ!」


 まぁ確かに俺とサラの出会いは壮絶だが。自慢する事でもないぞ。


「大事なのは月日より想いですわ! ならば魔法学校らしく魔法で決着をつけましょう! 決闘を申し込みます! 放課後第二訓練場で待ってますわ。」


 ニーナは決闘を宣言すると、サラを睨んだ後勢い良く自分の教室へと帰って行った。


「あっ、なに勝手に決めてんのよ! 知らないわよそんなの! ちょっと! ジンもなんか言い返しなさいよっ!」

「ええぇ……。」


行っちゃったな。台風みたいなやつだな。

キーンコーンカーンコーン



「おーし!授業始めんぞー!ん?なんだこの葬式みてえな雰囲気は?」


「ニーナか……」

「ニーナ……なんなのよあいつ……」


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