魔法学園
すみません!
俺の自己満足で大規模な改稿になったゃいました!
誰かが言った。欲には抗えないと。
誰かが言った。自分に嘘をつくなと。
誰かっていうか言ったのは俺、ジン・ベルセだ。今は授業中だがほぼ寝ている。とても眠いのだ。睡眠欲には抗えない、しょうがない、しょうがないね。
ゴンッ‼︎ 痛っ
「しょうがないじゃねーぞ、ジン授業中だコラ。俺の目の前で寝てんじゃねーよ」
短髪赤色鍛え上げられた肉体。火魔法担当教授のシュタイン先生だ。厳しいことで有名だが生徒には人気がある。
「すんません、気をつけます」
「よしジン、罰として今のページまでを全て要約して説明しろ。」
相変わらず無茶苦茶だなこの人。俺が読むために立ち上がると、周りの生徒たちがコソコソと話し始めた。
「おいっ、ジンだ!」
「あ、あいつが何かを喋るのか……ゴクリ。」
「きゃあっ。ジン様よ!」
「ジン様がお立ちになったわ!」
俺は天然記念物か何かですか? 周りの声にウンザリしつつ、俺は教科書をパラパラめくり、話し始めた。
「えー、今から10年前。突如起きた超爆発によって謎の生物が出現。政府はそれを「魔物」と名付け、急遽帝国による魔物殲滅部隊を派遣。しかし魔物には現状の兵器では通用しない事が判明。対策案として確保した魔物サンプルから得た知識を使い、魔法が有効であるとわかったため、魔法学校の設立に至る。魔法とは、すなわち旧時代の遺産である。現代兵器の手軽さにより廃れていたが、その威力は極めれば現代兵器を凌駕すると言われている。魔法は火水雷土風という五属性を主として成立しており、組み合わせたり、他にも光や闇などまだまだレアな魔法も存在すると言われている。んで今は火の授業の遠隔操作の方法。」
俺が読み終え、席に着くと再び周りはコソコソと話し始めた。
「は、話し方は普通だな……。」
「う、美しい声です……。」
「ずっと聞いていたい……。」
なんだというのか。まぁ原因は明らかなんだが。俺はなるべく顔を伏せ、目立たないようにした。
「よし、頭も良いなお前。次は寝んなよ。さて、では実習だ。サラ、お前やれ。」
「はい。」
立ち上がったのは、サラ・リング。桃色をした短髪の少女で、成績優秀。実はこいつと俺は旧知の仲なのだ。
サラは、立ち上がると対象の物置きに対して手のひらを向け、空中に何かを描き呟いた。
「焼き尽くせ」
瞬間、手のひらから火の玉が出て対象を燃やしてしまった。
「うむ、流石だなサラ。完璧な魔法陣を描けている。魔法の全ては魔法陣にあると言ってもいい。皆も心掛けるように。」
確かに流石である。魔法陣は一筆書きであるから間違う事は許されないのだ。間違えても発動はするが、その分性能は低くなる。今のは比較的低レベルな火魔法だが高難易度魔法はそれだけ難しい魔法陣になる。
「さあ、今日はここまでだ。ではな。」
終了のチャイムがなり、俺が席を立つと、周りにいた女子が俺の元へとやってきた。またいつものアレか……。
「ジ、ジン様。わ、私と一緒に帰っていただけませんか?」
「あっ、ずるいっ! わ、私もお願いします!」
「私も!」「私も!」「私も!」
次々と女子たちが名乗りを上げてくる。
「そ、そんなこと言われても、俺寮に住んでるからそんなに大した距離じゃないし……。」
「そんなのきにしませんっ!!」
俺が女子たちの怒涛の攻めにくじけそうになっていたら、後ろから俺の首を誰かが掴んできた。サラだ。
「ふふ、ごめんね。ジンは私と帰るって決まってるんだ。行こっジン!」
「うわっ!」
「ああっ! ジン様!」
俺は、サラに手を掴まれ、無理やり教室から抜け出された。
「た、助かったぜ、サラ。」
「ったく。目を離すとすぐああなるんだから。」
サラは少し不機嫌なようだ。
「はぁ、疲れた。」
「あんた少しは強めに断りなさいよね! 私だって毎日やるの疲れるのよ!?」
「わ、わりぃ。……サラはなんで毎日助けてくれんだ?」
そう言うと、サラは顔を赤くしてこっちを見つめてきた。なんだろう?
「そ、それは……あんたが……。」
「あんたが?」
「あ、あんたが……幼なじみだからよ……! そ、そう、久々に再会したから面倒見てるだけだわ!」
「そ、そうなのか……。」
「まぁ、とにかく、モテモテだからって調子に乗っちゃダメよ!」
「お、おうわかってるよ。」
そもそも、何故こんな事になったのか。話は2日前に遡る。
【2日前】
ここは、魔法学園。次世代を担うと呼ばれる魔法を使える若者を育成する場である。
俺、ジン・ベルセはこの学園に転入という形でやってきたのだが……。
「やべぇ、広くてよくわからん……。高等部2組ってどこだよ……。」
魔法学園は敷地が広く、学年も幼等部、初等部、中等部、高等部と全てが繋がっているため、初めて入る人は各実に迷ってしまうのもう授業が始まってしまっている。誰かに道を聞こうにも、皆授業中で教室の中なのだ。
訳も分からず廊下を歩いていたその時だった。
「キャアアアア!!!」
「っ!?」
悲鳴が上がった。そしてビーッビーッと警報が鳴る。これは学園マニュアルに載っていた。学園内の何かが破壊された時に鳴り響く警音だ。その警報が鳴り響いた瞬間静かだった周りの教室が一気に騒がしくなった。
俺は廊下から走り出し、悲鳴の聞こえた一階の中庭まで全力で走り出した。
「グフフフ……よく、避けたな。」
いた。角を二本生やし、巨大で黒い体毛を生やしながら斧を持ち、二足歩行で歩く怪物、魔物だ。
形状からして学生が太刀打ちできる魔物ではない事は明らかだった。魔物はすでに何か攻撃を仕掛けたようで、金髪の女学生の周りにある噴水が壊れていた。そして魔物は女学生を再び襲おうとしている。
「間に合え……!」
刹那、俺は走りながら2本指で空に火の魔法陣を描き始めた。俺の手元から超高速の炎が放たれ、そして魔物に直撃した。魔物が怯んだ隙に金髪の女の子の元へと駆け寄る。
「おい、平気か?」
「は、はい、平気ですわ……。」
「よし、さっさと逃げろ。」
「わ、私も戦いますわ!」
「足手まといだ!! さっさと行け!」
「は、はいっ!」
タッタッと中庭から離れ走り逃げていく女学生、よし、問題はコッチだ。
「痛えな…。」
「オイオイ、割と力込めたけど効いてないのか……。」
「なかなか痛かったぜ……? オラ!!」
「おっと。」
魔物が斧で襲ってきたところをギリギリでかわしつつ俺はその腕を左手で掴み、右手で雷の魔法陣を描いて、直接魔物の体に雷を注ぎ込んだ。
「グオオオオオオオオオ!!!」
「これは効いたみたいだな。」
「はぁはぁ……くそおお!!!」
「遅い。」
敵が魔法陣を描こうとしていたため、俺はそれよりも早いスピードで肉体への強化魔法を放ち、魔物の腹へと拳で重い一撃を入れた。
「ゴ、ゴホッ……!!」
腹を抑え膝から崩れ落ちた魔物を見た俺は先ほどとは違う魔法陣を描き始めた。
「ガハッガハッ……! ……な、なんだ……? その魔法陣は……。見た事ねえぞ……?」
「だろうな。冥土の土産にしておけよ。じゃあな。」
俺の指先が光った。
魔法学園の構造上、中庭は全学年の教室の窓から見ることができる。
今、魔法学園の生徒たちは恐ろしい魔物と、それを圧倒する謎の少年を食い入るように見つめていた。
「あ、あの人はいったい?」
「す、すごい。魔法陣を描く速さが速すぎる。」
「あ、あの魔法陣はなんだ!? 見たことないぞ?」
「指先が光った!! あれは、風魔法? いや、それだけじゃない。なんだ……あれは?」
皆が困惑する中、1人の女子生徒だけはその魔法がなんであるかわかっていた。そう、サラ・リングである。
「ったく、ジンのバカ……。数年ぶりに見たと思ったら目立ちまくってるじゃない!!」
悪態をつくサラであったが、その目にはうっすらと涙が流れていた。
「お、おいっ! 魔物が倒れたぞ!」
「た、倒したんじゃないのか?」
「うおおおおお、すげえええ!!」
「誰だっ!? 誰なんだあいつは!!」
今、中庭には雷魔法担当のファラデー教授が向かっていた。事態を生徒同様に見ていたが、魔物が倒れたため、生徒の安全を確認し、中庭に急いできたのだ。
「魔物は……。」
「先生、コレを! 魔物が死んでいます……。」
「なんですかこの傷跡は……切り傷? いや、毒か? いったいどうやって……」
「それよりどうやって魔物が進入したのか……結界魔法も潜り抜けて進入するなどあり得ません!」
「そ、そんなことより何よりも……貴方は……いったい……?」
どうやら、先生たちのようだ。ちょうどいい、教室まで連れてって貰おう。
「初めまして、ジン・ベルセと言います! 今日から高等部2年2組に転入する事になりましたっ!! そんで……あのー……教室ってどこっすか?」
こうして鮮烈なデビューを果たしたジンはたちまち全校生徒に名を知られ、翌日から凄まじい熱狂の嵐を受ける事になるのであった。
その日、魔物襲来のため全校生徒は帰宅する事となり、ジンが自分の寮となる部屋へ行こうとすると、1人の女が話しかけてきた。すぐにそれは誰だかわかった。
「ジン……。」
「……サラ……?」
「うん……! おかえり……!」
「ああ……ただいま。」
この日、超爆発からちょうど10年の日。世界は大きく動こうとしていた。
宜しければお付き合いください!!