戦士と剣士と魔法剣士
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この世界において、魔法剣士という職業は、剣士と違う部分が、非常に曖昧なものである。
何故なら、魔法ではない方の剣士も、バンバン魔法を使えるからである。
むしろ、魔法を使わない剣士というのはほとんどいない。
では、その違いというものは何か。
それは、使う魔法の種類や、戦い方で決まる。
剣士の方は、近接戦闘を主にしていて、魔法は相手の動きを止めるときのためぐらいにしか使わない。
使う魔法も、攻撃的な魔法より、筋力を上昇させたりなどの補助的な魔法が多い。
逆に、魔法剣士の方は、剣士の職業よりも覚えている魔法が多い。
攻撃的な魔法と、補助的な魔法。
両方を覚えることができる。
また、戦い方も少し違って、魔法で足止めをする程度の攻撃魔法を打つ剣士とは違い、ある程度のダメージを与えられる魔法をチョイスし、剣でとどめをさすのが魔法剣士の戦い方だ。
対魔物戦においては、比較的安全な戦い方ではある魔法剣士。
だが、魔法も覚えることが簡単ではなく、さらに、魔物にそれだけのダメージを与える事の出来る魔法を覚えるとなると、努力では及ばない部分が出てくる。
そう考えると、魔法剣士とは所謂、勝ち組の職業なのだろう。
また、戦士という職業がある。
この職業、剣士と類似しているが、決定的に違う部分がある。
それは、覚えるスキルの攻撃性だ。
戦士の職業は、魔法を覚えることが難しい。
そのため、魔法が使える戦士というのは極少数である。
だが、魔法は覚えることが出来ずとも、『剣技』ならば、覚えることが出来る。
剣技だけで勝負するなら、剣士よりも強いくらいなのだ。
さらに、覚えられる数も剣士より多い。
そう考えると、剣士という職業が弱く見えてくる。
だがちょっと待って欲しい。
剣士という職業は魔法が使える。
使える魔法は補助的なものが多いが、ゴミ能力、というわけではない。
自分のステータスを上げる事のできる魔法なのだ。
それこそ、魔法を極めることが出来れば、全ステータス二倍に上昇、なんて事も出来る。
そして、剣技も魔力を消費する。
戦士という職業は、総じて魔力が少ない。
勇者ならともかく、普通の戦士の職業の人たちは、Lv10までいっても魔力が二桁、というのは少なくない。
反して、剣士というのはバランスがいい。
戦士には劣るが、筋力や体力もそこそこある。
そして、この補助的な魔法は、長い間効果が続く。
かなり、長期戦に特化した職業といえる。
戦士は魔力さえ使いきってしまえば、後は、地のステータスで戦うことしかできない。
戦場のようなスタミナがものを言う場所では、ほとんど使えない。
つまり、剣士という職業は戦争向きの職業だ。
この世界、というか、少なくともこの王国では、騎士……つまり、剣士になるということは戦争に参加するという意を表明することに繋がる。
ちなみに、言っていなかったが、騎士というのは、剣士の上位職で、なるには、頑強をある一定まで上げなければならない。
まぁ、なったところで覚えられる魔法が増えることもなく、ステータスが少しばかり増えるだけだが…。
おっと、話がそれた。
と、言っても。
「だからね、『騎士になるっていうのはスゴく危ないからやめとけ』って、注意してあげたのに、『嫌だ。俺は王国の役に立ちたいんだ』って、こっちの話を全く聞かないでさ。ま、だからこそ心配でこの城に魔法使いとして仕えているんだけれど…」
と、このように。
食事の席で、この世界にある職業について聞いているのだが、どうも聞く相手を間違えたらしい。
彼女はライラック・ライナーさん。
この国の騎士、ビル・レオナルドさんの幼馴染みであり、魔法使いとしてこの城に仕えている美人な女性。
でもって、ビルさんに好意を寄せている。
そのため、口を開けば大概ビルさんについて、に話が変わる。
そのたびに、僕が話を元に戻すのだが……。
正直疲れた。
流石に、人ののろけを聞いて、疲れない人なんていないと思う。
もし居たら、疲れない方法を聞きたい。
誰かこの中に他人ののろけ話を最後まで優しく聞いてくれる親友ポジションのキャラはいませんかー?
「そしてね、アイツったら、『騎士になるには頑強をあげないといけないから俺に魔法を打ってくれ』って、バカなんじゃないかと思ったわ!」
「あの……」
「ん?あぁ、ごめんなさいね。職業について、でしたっけ?」
「いえ、その事については十分お話が聞けたので……」
「あら、そう。じゃ、ごちそうさま」
そう言って、席を立ち上がるライラックさん。
それじゃ、僕も部屋に戻ろうかな。
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「はぁ」
(ダメだー、疲れた……)
僕は部屋に備えられていたベットに倒れこみながら、そんなことを思っていた。
(ちくしょー、なんだよー。羨ましいじゃないかこのやろー)
足をバタバタさせる。反動でベットのスプリングがギシギシいってる。エロい。腰もつけよう。
ギッシギッシ。
重い。
(うわー。あれ素なんだよな。自覚のないバカップルってあんな感じなのかな?)
思い出すは、あの二人のこと。
僕はあの二人のことを素直に尊敬していた。
何故なら、あの二人はスゴく仲がいい。
そして、素直だ。
あの時、医務室の時のこと。
素直に、「めっちゃ好きやねん」と答えていればどうなっていたのか。
とりあえず、今のようにはなっていなかっただろう。
彼女、神崎さん。
彼女は、前のように話しかけてくることが少なくっていた。
話しかけることがあっても、事務的なものばかり。
ああ、無情。
ちくせう。
……素直になっていたら、僕は今頃どうなっていたんだろう。
彼女が僕の思いに答えてハッピーエンドか。
それとも、真正面から降られて、バットエンドか。
それとも、冗談のようにとらえられて、ノーマルエンドか。
出来ればノーマルエンドであって欲しい。
ハッピーエンドは流石にないとして、バットエンドは論外。
ま、こんなたらればの話をしても仕方がない。
今日はさっさと寝よう。
明日から頑張る。
そういう人間に、僕はなりたい。
そんな、ふざけたことを、胸の奥で噛み潰しながら、僕の意識は遥か遠くへと、遠投された。