6話:恐怖と衝撃波
『ダウン』の副リーダーという須恵が現れる。
竜騎はあまりの実力差に、死の恐怖を感じる。
強者を前に、2人は―――
「逃げろフェリーア!!」
神島竜騎は叫んだ。
フェリーアが引きつった顔で走って逃げる。
「やれやれ、あまり面倒を増やさないでくれよな」
須恵大雅はため息をついた。
相変わらず男たちは突っ伏したままだ。
「『部品』って、どういう意味だ……!?」
「君はここ、『日本学園』の一般生徒だろう。こちら側に首を突っ込まない方がいい」
「そうもいかねぇんだよ。俺はあいつを守ってやるって約束したんだからな」
こちらが融通きかないために、須恵は呆れた顔をする。
先から続く余裕さは、いまだに伝わってくる。
竜騎がこうしているのも、単なる時間稼ぎだということも理解できていた。
「仕方ない。君がそうまで言うのなら……」
須恵の表情が真剣になった。
「殺してでも奪う」
ゾクッとした。
明らかに本気だ。
(殺される……!!)
初めてよぎる、死の予感。
何にも変えられないほどの恐怖。
「終わりだ坊や」
目の前から須恵が消える。
竜騎はとっさに窒素から体に空気の層をまとい、防御する盾をつくった。
「うぐっ……!!」
後ろからまたしても衝撃が加わる。
先のよりかは威力は減らせたものの、ゆうに痛みは皮膚に通じた。
「ほぉ、おもしろい力だな坊や」
「あんたのは、衝撃波か……」
「よく分かったね。『衝撃波動』というよ」
相手の力が少し分かったところで、竜騎の勝率はあがらない。
(くそっ……)
どうする。
焦りに焦ったその時。
2人のあいだのわずかな間。
そこを何かが高速で突き抜けた。
「!!?」
おそらくビー玉のような小さな球体。
竜騎たちは同時にその発射点を見た。
「ちょっと戦うのをやめてもらおうか、お二人さん?」
「ちっ。君が出る幕かね……、広瀬直人?」
「悪いがあの子はうちのなんでな。リーダーは一応交換品として了承したが、あとで取り返すつもりだったらしい。まぁ、自分では行かないんだけどな、あの人」
広瀬と言う人と、須恵はどうやら知り合いのようだ。
会話から、広瀬は『ドロップ』のメンバーらしい。
「どうする須恵。俺とやるかい?」
勝負を挑発しているのか?
竜騎は須恵の強さがだいたい分かっている。
その須恵に言うぐらいなら、広瀬もまたかなりの実力者だということが窺える。
「ふん。出直すとしようかね」
パッと須恵は消え去った。
「助かった……のか……?」
呆然とする竜騎に、広瀬は声をかける。
「大丈夫かい、少年?」
「あ、どうもです」
フェリーアのことを忘れていた。
「それより、フェリーアを探さないと」
「あー、大丈夫だよ。彼女には発信機をつけてあるから。君には来てもらいたいところがあるんだ」
少し笑みを浮かべる広瀬。
「どこなんですか?」
竜騎は聞いてみた。
それに対して、広瀬は自分の左腕、どうやら『ドロップ』共通につけてある腕輪(実は昨日フェリーアもつけていたが、あえて聞かなかった)を指して言った。
「俺たち『ドロップ』の、本拠地さ」