4話:決意と健全男子高校生の苦悩
竜騎が偶然した拾いもの。
それは、これまで関わるはずがなかった世界への切符だった。
フェリーアを守るべく、決意をする竜騎―――
「世界に、反逆するだって……?」
神島竜騎は思わず繰り返した。
「そうです。私はそこのリーダーに拾われたから、実質『ドロップ』に所属してたことになります」
フェリーアは答えた。
「その『ドロップ』ってのは何なんだ?」
「メンバーの数は多くはないです。私をいれても、せいぜい10人程度です」
「なぜ反逆するんだ?」
「それはメンバー個人個人で違います。私は反逆する理由はなく、単にリーダーについていっていただけですけど」
「何をしてるんだ?」
「世界の破壊を達成するためには、『部品』と『装置』と呼ばれる何か、がいるらしいです。私にはどういう意味か分かりませんでしたが、リーダーたちが話しているのを聞きました」
ふぅ……。
質問ばかりが無限に浮かんできそうだ。
竜騎はひとまずため息をつき、大切な質問のみに絞り込む。
「さっきの男たちは何なんだ?」
「取引相手グループの使いの人です。『装置』を相手が持っていたらしいです。それで、相手が何に使うかを判明するより先にこちらが得ようと、リーダーが動きました」
「相手グループ?」
「もともと敵対しています。反逆を目的とするグループは、他にもいくつかありますから。その内の1つである『ダウン』と取引しました」
「その『装置』って呼ばれる何かと、フェリーアが交換されるはずだったのか」
「そのようですね……。私はリーダーにあの工場へ行くようにだけ言われてましたから……」
竜騎はそのリーダーとやらに、無性に苛立った。
「ふざけやがって……。反逆に交換だって? くそっ、腹立つな」
その様子を見て、フェリーアはありがとう、と礼を言った。
少なからず、竜騎は自分を交換の品として扱ったことに怒ってくれている。
そう感じたからだった。
「そうだ、結局俺は何をすればいいんだ?」
最初は嫌だったのに、すでに正義感に奮い立っていた竜騎。
「こちら側の世界に巻き込んでしまったことには申し訳ないです。ですが、私は『ダウン』に引き取られたくないんです。だから、私を守って下さい……」
ぺこりとまた礼をした。
「あぁ、分かった。よろしくなフェリーア」
「はい、竜騎」
にこりと笑い、初めて名を呼んだフェリーアを見て、竜騎は少し、妹を思い出していた。
当面は竜騎の部屋にとまることになった。
わけだが……。
(フェリーアが使った風呂……)
先に風呂に入るよう言ったので、竜騎が後になった。
竜騎とて高校1年。
健全な男子高校生なら普通に気にせず風呂に入るほうがおかしいくらいである。
(気にするな、気にするな……)
落ち着けようとも、落ち着くわけもなく、ドキドキの風呂をこれから味わうと思うと、どっと疲れた風呂上がりの竜騎。
「あははっ」
テレビを見て笑っているフェリーアの隣に腰を下ろす。
フェリーアがここに来たときは白いワンピースだった。
銀とも白とも言えないきれいな髪によく合っていた。
竜騎は寮官にいたたまれない目を向けられるのに耐えつつ、女の子用の寝巻きを買ってきた。
今はそれを着ている。
長いきれいな髪からシャンプーの匂いがほんのりと漂って―――
(って、俺はアホかっ!!)
改めて自制し冷静になる。
(守ってやらないと)
決意をあらためて、竜騎は寝た。
なお、ベッドは無論1つしかなく、フェリーアが寝ているため、竜騎は床で寝ていた。
次回、話が進展します。