2話:少女と頼み
測定室にいた寒川晴美から結果レポートを受け取り、神島竜騎は開発局を出た。
「まだクラスφ(ファイ)なのかよ……」
自分の力を詳しく記した、右手に持つレポートにため息をついた。
「速さ、正確さ、威力、球数、全部今まで通りか……」
竜騎の『素材錬成』は、速さと正確さ、さらに威力と球数で測定する。
すべて五段階になっていて、竜騎はどれも4である。
「いつも通り、やるか」
竜騎が来たのは、駅から見て開発局からもう少し向こうにある無人の工場である。
もちろん能力は練習すれば(他にもあるが)上がるものだ。
なので、竜騎は毎回クラスが上がってないたびにここで練習する。
やるのは簡単。
そこらにある機械などを正確に打ち抜いていくこと。
今日もしようと来てみたが、何やら先客がいたようだ。
(誰かいるのか……?)
こっそりと中を覗いてみた。
中には男が2人と少女が1人いた。
「てめぇ、どうゆうつもりだ?」
「わ、私は……、あなたたちには、ついて行かない……」
「何を今さら言ってやがる……」
「お前らんとこのリーダーから了承は得てんだよ」
「で、でも……、私はイヤっ……!」
見た感じ、女の子を男たちが連れていきたいようだ。
やりとりから、女の子は拒否してるようだ。
「ふざけんなよ……!」
男が少女を殴ろうとしたとき、竜騎は反射的に空気砲を男に撃った。
言霊を言っていないので、男に対したダメージはないだろう。
「誰だ!!」
もう一方の男が叫ぶ。
(はぁ、やっちまった)
内心ため息をつき、工場に入った。
「その子から離れろ」
竜騎が少しドスのきいた声を出した。
「何だとガキが!!」
最初にあてた男が立ち上がった。
男たちが拳銃らしきものを持ち、こちらに向ける。
(無能力者か)
竜騎は勝利を確信した。
「遅い!」
男が撃つより先に、竜騎は撃った。
手に命中し、男は思わず拳銃を落とす。
「くそっ!」
男たちは、工場の入口と正反対にある裏口から逃げて行った。
「大丈夫か?」
「あ、うん……。ありがとう」
少女はぺこりと頭を下げる。
「別にいいよ。偶然立ち寄っただけだしね」
「本当にありがとうございます」
再び頭を下げる少女に、竜騎は手を乗せ撫でた。
竜騎がどうして撫でたかというと、竜騎には妹がいたからだ。
「んじゃ、俺はこれで」
これ以上厄介事に関わりたくなかったので、練習を中止にして帰ろうと思った。
のだが―――。
「あの、助けて下さい!」
これが、竜騎と少女の出会いだった。




