17話:その後とライバル
「ねぇねぇ、竜騎。あれは何?」
「あれか? 俺の行ってる学校だよ」
とある病室の窓から見える景色。
そのうち一つの建物を指さして、入院患者専用の淡いピンクの服を着て、ベッドに座っているフェリーア。
そしてその問いに答えているのは、もちろん神島竜騎だ。
「ふふっ、そうなんだー」
一山をともに越えたこともあり、フェリーアも完全に竜騎に気を許すようになり、敬語も堅苦しい雰囲気もなくなった。
「えらく嬉しそうじゃんか」
「だって、竜騎が助けてくれたんでしょ?」
「俺だけじゃないよ。美咲も、あ、あと単崎も」
園生美咲は、とりあえず一命は取り留め、フェリーアの隣の病室で入院中。
単崎将は、能力を使って美咲を『アウト』の本拠地にすぐ連れて行き、医療系能力者に治させた。
その後、気絶していた医者たちが目を覚まし、脳も正常に元通りになった『医療区』は最大病院いつも通り機能し始めた。
なので、竜騎はフェリーアと美咲を病院に送り、今は2人とも休養中だ。
「単崎って?」
「あ、そっか。知らないんだな。『アウト』のリーダーだよ」
「その人、敵じゃないの?」
「うーん、敵じゃないけど、かといって味方でもないような……」
フェリーアは小首を傾げていた。
竜騎1人ではゲートを越えられないので、『アウト』の本拠地には、美咲を治療してもらってから行っていない。
なので、単崎が今どこで何をしているかは、竜騎には分からない。
「ありがとう、竜騎」
「えっ? あー、おう」
不意にお礼を言われたため、竜騎は少し動揺した。
顔を赤らめたことに、自身は気づいていない。
「竜騎にいっぱい助けてもらったね」
「まぁ、俺だけの力じゃどうにもならなかったんだけど……」
竜騎の『素材錬成』はあの後クラスがχ(カイ)に上がっていた。
両手どちらでも錬成でき、かつ2つ以上のものを掛け合わせたりもできるようになった。
といっても、竜騎自身にあまり実感はなく、寒川晴海にくすりと笑われていた。
「竜騎……」
フェリーアが顔を赤らめた。
目を静かに閉じ、上半身を少し前に出した。
その様子はまるで―――
(キス!?)
心臓が飛び跳ねる。
鼓動音が激しくなる。
無論初めての竜騎にはやり方など分かるはずもない。
(っ……! もうどうにでもなれっ!)
腹をくくり、静かに顔を近づけていく。
唇が触れ合うまさにその時。
「竜騎ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
叫び声とともに、病室のドアが開け放たれた。
「っ!!」
2人は反射的に飛び退く。
内心残念だったものの、竜騎は声の主を見た。
「なんだよ……」
「そんな、唯一の頼りである幼なじみにその反応とは!」
そこにいたのは、竜騎の幼なじみである白根結衣である。
「って! その子誰!? まさか……」
「ち、違う違う!! 別にそんなんじゃない、ただの知り合いだ」
ただの知り合い。
その言い方にややむっとしたフェリーア。
「竜騎、誰なの!?」
「なぜフェリーアまで!? 幼なじみの結衣だよ」
2人がむぐぐぐぐと睨み合い間に、竜騎が苦笑いしながら、
(なんでこうなってんの……?)
と思っていた。