16話:2位と最後
「案だって?」
神島竜騎は単崎将に聞き返した。
「あの『人工天使』は羽根を使うときにすきができるから、そこを狙う」
「どうするんだ? ……っ!」
天使のレーダーをよけつつ、続きを聞く。
「そこのあんた、確か『時間転送』だったか。それで、こいつを『人工天使』の後ろに飛ばせ。さっき起こったから、すでに経験された事象になってんだろ?」
さっきの、竜騎が後ろから攻撃したことだ。
「できるけど……、おそらく、力が使えるのは……、あと一回だよ」
傷口から滲み出る鮮血が、竜騎にはとても痛々しく見えた。
「つまりだ。失敗はできねぇんだ」
「で、俺はどうするんだ」
竜騎は自分の仕事を聞く。
「竜騎!」
後ろを振り返ると、天使が羽根を使った。
5色の光の剣が、宙に円を描くように浮いている。
それらが適当に放たれる。
「美咲!」
自らに飛んできた火の剣を右手で飲み込み、続けて美咲に飛んだ雷の剣も右手で叩く。
「うらっ!」
単崎も飛んできた3本の剣を叩き割る。
「その『素材錬成』で、あの『人工天使』を素材にしろ」
「なんだと?」
竜騎は錬成した半分赤色、半分黄色の火と雷の剣を握っている。
「天使には周りにバリアみたいなものがあるんだぞ。触れられるわけない」
直接触れれば、『部品』たるフェリーアから、『装置』たる羽根、つまり翼に触れることで、離すことができるだろう。
「あのバリアは、すでに分析した。俺が割ってやる」
「!?」
単崎は確かに2度あのバリアを殴ったが、ビクともしなかった。
にもかかわらず、割ると言っている。
「できるのか?」
「誰に言ってんだよ。俺は『日本学園』の5人しかいないクラスω(オメガ)の、2位だぜ!!」
単崎は再び天使に向かう。
「単崎が……、2位……」
あの不可解な能力と実力、そして『アウト』のリーダー。
そんな人間が、今そこで戦っていた。
「てめぇのバリアはもう分かってんだ! そのバリアは絶対的力で守ってんじゃなく、こっちの力を削りとることで、守ってんだろぉが!」
単崎は右手でバリアを押しつつ、左手でバリアに触れた。
「『限界の調整』!!!」
その叫び声とともに、バリアは音とたてて崩れ去った。
「いけ!」
単崎がくるりと振り返った。
「美咲!」
「いくよ、『時間転送』!」
力を振り絞り、美咲は竜騎をとばした。
竜騎の体は天使のすぐ後ろに現れる。
「終わりだぁぁぁぁぁぁ!!」
右手で天使に触れる。
「キィヤァァァァァァァ!!!!!」
最後の悲鳴に、竜騎はちくりと胸が傷んだ。
やたら戦闘中に会話を入れてしまいました……。
少し、この世界観が伝わりましたか?
今後もよろしくお願いします。
感想やアドバイス等、お願いします。