15話:使い方と案
神島竜騎と園生美咲は、フェリーアを救うべく、『人工天使』と戦っている。
単崎将も、『人工天使』を倒すべく戦っている。
しかし、美咲は天使の一撃を受け、床に倒れてしまった。
そして、美咲を射抜いた光のレーダーが、何本も竜騎を狙う。
「ちっ!」
単崎が跳躍するが、間に合わない。
「右手だ!!」
単崎が叫ぶ。
その声に、竜騎ははっとする。
『素材錬成』。
自らの持つその力は、あらゆる物から別の物へと造り替える力。
その右手を前に向ける。
(穴だらけになるなよ……!)
飛んでくるレーダーに射抜かれないことを願いつつ、倒れている美咲にあたらないようにする。
「『素材錬成』!」
キィン!
右手が飲み込んだ。
すべてのレーダーを右手で素材化し、竜騎は拳銃を手放し天使に左手を向ける。
「お前のレーダーだ!!」
まとめて太くなったレーダーは一本になり、天使に撃ち出される。
天使は単崎の攻撃を防いだ翼で再び防ぐ。
煙だけが巻き起こる。
「防いだ……のか?」
初めての使い方だったために、竜騎は躊躇った。
(こんな使い方が、できたのか……)
竜騎は余力を確信した。
「美咲、大丈夫か!?」
「う、うん……」
傷口を押さえてうずくまっている。
「『時間転送』でなんとかならないのか……?」
「無理だよ。私の力はなんでも時間を動かせるようにみえてたかもしれないけど、過去に一度経験しないとダメなんだ」
美咲がゆっくりと起き上がり、続きを言う。
「つまり、<転生された時間の代わりに来る未来を経験している>時間しか転送できないんだ。ゲートを越えたのも、彼の四次元から出たのも、すでに経験してたんだよ」
単崎は黙って聞いていた。
竜騎は天使を警戒しつつ聞く。
「単崎と戦ったのは、あれは初めてじゃないのか?」
「彼とはね。でも、同系統の能力者が似たようなものを使ったことがあってね……」
「傷を負ったのは初めてじゃないだろ?」
「同じ傷を負ったなら、転送できる。でも、こんなレーダーで貫通した傷なんか……」
美咲が立ち上がったところで、単崎が口を開いた。
「おい。お喋りはそこまでだ」
天使はこちらを見据えている。
「キィィ……」
羽根をまた使った。
どんな能力があの羽根にあるのか分からない。
「っ!」
竜騎が思い切り駆け出した。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
羽根が力を使う前に、竜騎は右手で触れる。
その羽根が脳である以上、別の物に錬成するわけにはいかない。
錬成したのも羽根。
竜騎はしっかりと左手に握り、素早く天使の後ろに回った。
「よし」単崎も天使に向かって跳躍する。
「くらいやがれっ!」
2人が天使の前後から殴りかかる。
だが、どれかの能力である、強靱なガードが天使を包み、防がれてしまう。
2人は少し下がり距離をとる。
「おい」
単崎が呼びかける。
「なんだ?」
「あんたら2人、『人工天使』を倒す俺の案にのるか?」
単崎が、不敵にニヤリと笑った。