14話:アウトと単崎
「美咲!」
神島竜騎は、現れた園生美咲に叫んだ。
「竜騎、これは!?」
「間に合わなかったんだ……! 『装置』の何千人の脳と、『部品』のフェリーアが、一緒になっちまった……」
唖然とする。
「あれは仕事の対象外なのか?」
その場の空気にそぐわないことを言う単崎将。
「君、何か知ってるのか?」
美咲は単崎に聞く。
「さぁな。あれがやつの言ってた『人工天使』ってやつなんだろう」
単崎の言う「やつ」とは、陣野光秀のことだ。
「仕事って何!? 君は何者なんだ!?」
美咲が単崎につかみかかる。
大切な仲間であるフェリーアがあの様な状況になってしまった。
気持ちが整理できていない。
半狂乱状態の美咲を、単崎は冷酷に振り払う。
「俺は『アウト』のリーダーと言ったが?」
「なぜ陣野たちを倒しにきたんだ」
「勘違いしてるようだが、『アウト』は世界への反逆を目的とするチームじゃない。世界の摂理を守るためのチームだ」
単崎は言う。
自分たちは守るためにいる。
ゆえに、世界に反逆するチームを倒そうとしていた。
だから、獅子鹿央、陣野を狙った。
それが仕事、ということだった。
「じゃあ、お前は……」
「俺はあんたの敵じゃないんだよ、神島竜騎」
そう、始めから争うことはなかったのだ。
だから単崎は竜騎を攻撃せず逃がした。
今はもう美咲も敵ではなくなっている。
「勘違いするなよ、俺はあんたらの仲間じゃない。敵じゃないだけだ。だから、あの壊れた天使を倒す」
次は竜騎が単崎にくってかかった。
「ふざけるな!! あいつは……、フェリーアは敵じゃない、なりたくてあんな風になってるんじゃない!!」
必死で言う竜騎を一瞥し、再び天使に向く。
「うるせぇなぁ……。俺が倒すのは『人工天使』だ。中の女は範囲外なんだよ」
そう言うと、ぶわぁっと周りの空気を切り裂き、単崎は天使に向かって走る。
「小手調べだ『人工天使』!!!」
勢いにのせて突き出した右手の拳は、天使の羽根に防がれる。
「ちっ……。合わさった脳から能力まで吸い取ってやがるな」
体勢を立て直す。
「くそっ!」
竜騎も左手にある拳銃で撃ち込むが、跳ね返される。
「キィヤァァァァァァ!!!」
天使は再び声をあげる。
天使の翼の羽根、その内の一枚がふわりと天使の目の前に浮く。
羽根が光ると同時に、竜騎に向けて光のレーダーがとぶ。
「竜騎、危ないっ!」
美咲が竜騎をかばう。
「美咲!」
「がはっ!」
腹を突き抜けた。
射抜かれた勢いで、美咲は竜騎の後ろへ吹き飛ぶ。
鮮血が広がり、美咲は口から吐血した。
「くっ!」
竜騎は美咲に駆け寄ろうとした。
「よせっ!」
単崎の声にはっとする。
もう何枚もの羽根が、竜騎の方を向いて浮いている。
「嘘だろ……」