13話:人工天使と逃亡
(…………)
真っ暗になったパソコンを見つめる神島竜騎。
後ろには四次元空間のような虹色の球体がある。
中には獅子鹿央、陣野光秀、園生美咲、そしてその球体を―――ありとあらゆる限界を自らの意のままに変える『限界の調整』を使い―――生み出した本人たる単崎将がいる。
「フェリーア!」
探し求める彼女の名を、竜騎は叫ぶ。
その時、どこからか絶叫のごとき悲鳴が上がった。
「フェリーア!!!」
その声の主は、間違いなく彼女だ。
しかし、どこか分からない。
すると、その部屋のパソコンより向こうの壁に、ミシミシとヒビが入った。
バァンっ!
壁が砕け散り、そこにいたのは……。
「天使…………!!?」
真っ白の翼を背に、ゆっくりと立ち上がる人。
その姿は人ではなく、天使。
頭の上には、光り輝く輪がある。
しかし、その顔、体格、すべてがフェリーアなのだ。
「フェリーア!!」
声をかけても返事はない。
天使はチラッと竜騎を見た。
「キィヤァァァァァァ!!!!」
とても人の声などではなく、耳が痛くなるような高い声。
そこから竜騎が感じられたのは、苦痛。
「落ち着け!! どうしたんだ!?」
必死に呼びかける。
天使はこちらを向いた。
「…………」
背中の翼がバサリ、と開いた。
いくつもの白い羽根からなる、絶世の美しさを持つ翼。
の、はずだった。
羽根一つ一つから、人の声が聞こえる。
脳を取り込まれた人の苦しみの声が、頭に響いてくる。
「ぐっ……」
あまりのすさまじさに、竜騎は思わず頭を押さえた。
「間に、合わなかったのかよ…………?」
「!?」
球体の中にいても、美咲には外の異変が伝わった。
「終わりっとォ。次はてめぇか?」
単崎が遂に鹿央をのしてしまった。
「ふぅ……。些か面倒だな。目的である反逆装置の『人工天使』は完成した。後はもう用はないようだ」
「はっ。俺はまだ用があんだよ」
陣野はネクタイを直す。
「悪いが、君と戦うにはまだ早い」
ヒュッと風を斬るような音を残し、陣野は倒れた鹿央と共に消えた。
「ちっ! 『瞬間移動』(テレポーテイション)だったのか」
舌打ちをしたあと、単崎は美咲を見る。
「あんた、まだ世界に反逆する気か?」
「私は……」
美咲は少しだけ考えて、決心する。
「私の仲間を傷つけた、やつらを殺す」
仲間だった鹿央は、すでにやつらに部類している。
「そうかい。なら仕事の対象外だな」
「仕事?」球体が弾け飛び、2人はもといた部屋に戻った。
「フェリーア…………?」
壊れた壁、天使のような、変わり果てたフェリーアを目の当たりにして、美咲は呆然とした。
更新遅くなってすみません。
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