10話:装置と敵
『ドロップ』本拠地のビルへ戻った園生美咲と神島竜騎。
『アウト』のリーダー、単崎将から何とか退いた2人。
そして彼らは今、本拠地に戻ってきた。
確かに、本拠地へ戻ってきたのだ。
しかし、そこには廃ビルはなく―――。
あったのは、傷ついた仲間たちだけだった。
「みんな!!」
美咲は倒れている広瀬直人に駆け寄った。
「どうした!?」
「野郎……、クソっ、ビル潰していきやがって……」
「誰か来たのか!?」
「『ダウン』の、ボスだ……」
「なんだって!?」
『アウト』のリーダーの次は、『ダウン』のリーダー……。
2人は息を飲んだ。
「やつら、フェリーアを連れて、行きやがった……」
「なんだと……!?」
竜騎の表情が一転した。
『ドロップ』のメンバーではない竜騎としては、正直彼らが倒れていても、とてつもない焦りや苛立ちを覚えることはなかった。
しかし、フェリーアが、となれば話は別だ。
「どこへ連れて行ったんだ!?」
まるで広瀬に怒っているかのように聞いた。
「『日本学園』東中央区、『医療区』だ……。やつら、『装置』と『部品』を見つけやがった……。うっ!」
そう言うと、広瀬は力なく倒れた。
「広瀬!!」
美咲が呼びかけても、もう返事はない。
「おい、『装置』は得たんじゃないのか!?」
「分からない……。偽物を渡されたか、今奪われたのか……」
しかし、重要なのはそこじゃない。
「『装置』ってのは、何なんだ……?」
「私らが『ダウン』から貰った『装置』っていうのは、東中央区にある『医療区』の最大病院のネットワークルームへの鍵」
「ネットワークルーム……?」
「みんなの脳の状況と、能力をチェックする部屋だよ」
「まさか、『装置』ってのは……」
そう、と一拍おいてから、美咲はかなり真剣な表情で告げた。
「何千人もの、脳だ」
美咲の『時間転送』(タイムトランス)により、『医療区』にたどり着くまでに時間は要しなかった。
「とりあえず、ネットワークルームへ」
2人は急いで向かう。
地下にあるようだ。
そこへ向かう途中に、何人かの医者達や看護士達が倒れていた。
今、この病院が機能しない以上、他に病院などない。
ゆえに、この病院には何千人もの患者がいて、脳がある。
『ドロップ』のメンバーも、つらい気持ちを押し切って、あの場に残してきた。
「よし、ここだ」
「俺に任せてくれ」
竜騎が前に出た。
最強の硬さで作られた扉。
銃弾、爆弾すらも効かない扉だ。
「君の空気砲じゃ、壊せないよ」
「大丈夫だ」
竜騎は今のところ何の役にもたっていない。
なんとしても、力にならなければと思う。
「両手に無の具を似る力を!」
そうして、右手を扉につける。
「『素材錬成』(マテリアルアルケミー)!」
パッと扉が消え、あるのは竜騎の左手に拳銃だけだ。
「扉を素材にした。まぁ、せっかくだから拳銃も造っておいた」
ほぉ、と美咲は感嘆した。
「行こう」
中には通路。
その先には、薄暗い部屋、パソコンのような機器の明かりでうっすらと見える。
「『ドロップ』か?」
中にいた男が、後ろを振り向かず聞いてきた。
男は2人。
「そうだよ。私が副リーダーの園生美咲だ」
「副リーダー、『時間転送』の女か」
どうやら、相手は知っているようだ。
「ここは、俺が出ましょう」
そして現れたもう一人の男。
「嘘……、どうして……」
美咲がなぜか驚いている。
「どうした美咲!?」
「この、人は……」
男は竜騎は見て、ふふっと不敵に笑った。
「初めまして、神島竜騎。俺は『ドロップ』のリーダー、獅子鹿央だ」
いよいよ話の結末へ向かいます。
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