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『翡翠の勾玉が繋ぐもう一つの歴史』 〜65歳考古学者おばちゃんの古代倭国セカンドライフ〜  作者: カジキカジキ


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450日目 〜赤く輝く〜

 夏の暑さが少しだけ変化を見せる。


 田んぼの稲は、稲穂が大きく育っている。まだまだ青いけれど、あとひと月ほどで金色に輝く田んぼが見られるだろう。


 集めていた砂鉄が10kgほどになった、夏の間もサキくんが頑張ってくれた成果よね。


 クニさんが焼いてくれる炭も、品質が安定して量も作れるようになっていた、製鉄用の松炭も準備万端。


「さあ、いよいよ砂鉄を入れるわよ」


 何度も窯を作り直して焼いた耐火レンガ、それを土手に掘った斜面に沿って耐火レンガと粘土で固めて作った登り窯。


 何度も試し焼を繰り返した。


 失敗して粘土が爆発した事もあったわね。


 水車を改良して吹子も作った、これもあって川の近くに窯を作ったの。


 十分に熱した炭で真っ赤になった登り窯の上から、ひとすくい程の砂鉄、焼いた貝灰を投入する。


 すぐにバチバチと不純物が弾ける音。


 上からさらに木炭を被せる。


 炉の嵩が減ってきたら、次の砂鉄を投入して木炭を被せる。


 この繰り返し。


 暫くすると、炉底にノロと呼ばれる不純物と屑鉄が溜まるので、僅かに開けた取り出し口を開けて流し出す。


 砂鉄の投入が全て終わったら、炉の上部に稲藁を被せて木炭が燃え尽き、温度が下がるのを待つ。


 この稲藁を被せる理由は知らない、彦助さんが玉鋼を作る時にやっていたお作法だと思っていた。


 作業を始めて、お日様も傾き始めた頃。


「もう良いかしら?」


 ドキドキしながらクニさんが炉を解体するのを見守る。


 残念だけど、この登り窯は使い切り。


 この結果を見て、次はもっと良い登り窯作りの参考にさせてもらいましょう。


 炉底に溜まった黒い鉄の塊が見えた。


「「おおおおおおお!!」」


 クニさんと、サキくんの声が響く。


 出てきたのは例えるならテッシュの箱ふたつ分くらいの大きさの塊。


 これを叩いて細かくして、ズクやケラに分ける。


 そしてそこから選別して農具や武器を作りたいのだけれど……。


 続きは明日。


 ・

 ・

 ・


 翌朝、早朝からサキくんとクニさんが訪れてきた。


 目が爛々と輝いている。


 早く続きを始めたくて仕方なさそうね。


 出来上がった鉄で作りたいものは色々あるけれど。


 先ずは金床と金槌が必要よね。


 鉄を扱う道具を作るための道具作り、今までは石器や木槌を使っていたけれど、本格的に鉄を扱うとなればやっぱりここから始めなければならない。


 別の窯に松炭を入れて火を点けたら、昨日の塊を熱する。


 熱しながら木槌で叩くと、パラパラと脆い不純物が剥がれる。


 どんどん剥がれるので、全部無くなってしまうのではと心配にもなるけれど。


 ある程度剥がれると、収まって今度は熱くなった所で水桶に投入。


 急冷して脆くした部分を叩き割ることで、炭素の多い硬い部分(皮鉄向き)と少ない柔らかい部分(心鉄向き)を分ける。


 硬過ぎず粘りのある部分を金槌用に取り分け、大きなケラは金床用、僅かに残った玉鋼に近い良質の鉄は今後の為に取っておく。


「出来た!!」


 早朝から始めた作業だったけど、もう辺りはかなり暗くなってしまっていた。


 そんな事も目に入らない2人は、目を輝かせ、金槌を眺め、頬擦りしそうな勢いで盛り上がっている。


 まるで、おもちゃを買ってもらった子供みたいね。


 今日は金槌作りで終わったので、明日は金床を作りましょう。


 そして、また砂鉄を集めて炭を焼いて。


 これを繰り返せば――


 農具や村を守るための武器にも鉄が使えるようになるはず。


 遂に、鉄を扱う事が出来ました。クニさんやサキくんの興奮も伝わってきますね。


 次回は、稲が金色の穂を揺らす秋がやってきました。皆の笑顔が溢れる中、ひとりのオババ様が……。


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