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『翡翠の勾玉が繋ぐもう一つの歴史』 〜65歳考古学者おばちゃんの古代倭国セカンドライフ〜  作者: カジキカジキ


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265日目 〜繋がりは、広がって〜

 青空が広がっていますが、木々の蕾はまだまだ固く春はもう少し先だと告げています。


 私たちは隣村で田んぼの改良を進めています。


 ここはうちの村よりさらに粘土質がきつくて、鍬が全然入らない。


 鉄製品は貴重で少ないから農具への利用はごく僅か、使えなくなった青銅や鉄を溶かして新しい鍬を作りたいけれど、それはまだ先の話ね。


 年配の女性が、固い土を睨みながらため息をつく。


「こんな土で米なんか育つのかい? 毎年水が溜まって根が腐るばっかりじゃ……」私はみんなを集めて、まずは説明から始めた。


「この田んぼには豆を植えましょう、根を深く張る豆がいいわね。

 まずは薄くで良いから耕して肥料を混ぜるの。

 その後は溝をたくさん掘って水捌けを良くする。

 豆を収穫した後は、根や茎はそのまま埋め込んで肥料に出来るから。根が土をほぐしてくれて、来年からは鍬が入りやすくなるわ」


 若い子が鍬を握って挑戦するけど、すぐに「神女様の言う通り丁寧に…って、でも固すぎる!」と涙目。


 私も指が切れて血が出た。


 土が固すぎて、鍬の刃が跳ね返るたびに手が震える。


 でも「みんな頑張って。来年は厳しいだろうけど、2、3年後には絶対違うよ」と励ます。


 1人だけ大人が混じって黙々と作業している人がいる。


 誰かと思っていたら、昨年私たちの村を抜け出て、この村にあらぬ噂を広めたうちの1人だった。

 他にいた者は、この村と水車を作る話しになった時に逃げ出して山の奥へ消えたという。


 この人は、オクトさんとオオミさんの顔を見たときに土に頭を付けて謝り、神女にも謝れと言われて謝られた覚えはあった。村に戻る事は許されていないけれど、この村で生きているのを知ってホッとした。


 午後からは溝掘り作業。


 田んぼの周りに浅い溝を掘って水を逃がすだけでも違うんだけど、粘土質だからスコップ代わりの木の棒が折れそうになる。


 気がつくと青空が消えて雨が降りそうで降らない曇り空の下、汗と泥でみんな真っ黒。


 若い男の子が「神女様、これで水が抜けたら俺、豆の収穫で一番大きなのを神女様にあげるよ!」って笑顔で言ってくれたの。


「あらあら、じゃあ私はそれで美味しい豆料理を作りましょうね」そう言うと、他の子達も私も私もと寄ってくる。


 夕方、ようやく雨が降り出して全員ずぶ濡れに。


「明日は少し楽になるかな~」と笑いながら、みんなで屋根のある住居に避難した。


 火を囲んで、濡れた服を乾かしながらオババ様が昔話をしてくれた。


「昔はこの辺り、もっと沼みたいだったんだよ。神女みたいな人が来て、溝を掘ってくれたから米が取れるようになったって……今度はあんたがその人だねえ」


 私は少し照れながら笑って「あらあら、それじゃあその神女様も、きっとこんな風にみんなと泥まみれだったのかしら。私もその系譜に連なれているなら嬉しいわ」と返した。


 退職してゆっくり過ごすつもりが、こんなに体も心も擦り減る毎日。


 腰は痛いし、手は豆だらけだし、夜は疲れてすぐ寝落ち。


 でも、みんなの「神女様、今日もありがとう」の一言で、明日も頑張ろうと思える。


 苦労が多い分、絆も深まってる気がする。


 豆の種を蒔いた土の下で、根が少しずつ土をほぐしていくように、私たちの繋がりも広がっていく。


 この辛さも、全部秋の豊作とお祭りのための糧になるのよ。


 合同お祭りで、隣村の人たちも混じって、みんなでお酒を酌み交わしながら「今年は地獄だったなあ」って大笑いする日が待ち遠しいわ。


 その時になったら、きっと「去年より鍬が入るようになったよ!」って自慢話ができるはず。



 隣村の田んぼは手強そうですね、それでも皆で力を合わせて耕しています。


 次回は、いよいよ田植えが始まります。

 

 

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