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『翡翠の勾玉が繋ぐもう一つの歴史』 〜65歳考古学者おばちゃんの古代倭国セカンドライフ〜  作者: カジキカジキ


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50日目 〜漂うのは、温かな香りと笑い声〜

 共同調理場が、ようやく完成した。


 村の中心に、掘立柱の屋根が優しく影を落とし、その下に四つの大きな竈門が並んでいる。


 今日はそのお披露目当日――


 夕飯は、みんなで一緒に作ってみようと決まった。


 女性たちは楽しげにお喋りをしながら、山菜を洗い、粟を研ぐ。


 子供たちはワイワイと騒ぎながら、薪を運んだり、水を汲んだり。


 オババたちは優しい目でそれを見守り、時折「もっと火をくべて」「あっちの火が弱いよ」と声をかけている。


 空気は、薪の香りと山菜の青い匂い、そしてみんなの笑い声で満ちていた。


 時間がかかってしまったのは、仕方ない。


 竪穴の炉は小さくて、一度に焼けるブロックは少しずつ。


 しかも、最初は脆くて、すぐに割れてしまう。


 何度も作り直し、雨が降ってきては崩れ、泣きながら土を練り直した日もあった。


 でも、みんなが少しずつ手伝ってくれた。


 オクトさんが薪を運び、ミナちゃんたちが土をこね、子供たちが「神女、がんばれ!」と応援してくれた。


 その温かさが、私の指先を何度も動かしてくれた。


 四口の竈門は、それぞれ役割が違う。


 一つは粟を煮る用、一つは山菜を炒める用、もう一つはお湯を沸かす用、最後の一つは魚の干物を温める用。


 今日の材料は、粟と山菜、魚の干物だけ。


 贅沢とは言えないけれど、みんなで囲めば、どんな食事もご馳走になる。


 豆の種まきも終わったばかり。


 秋にはきっと、たわわに実った豆で新しい料理ができるわね……そんな未来を想像するだけで胸が温かくなる。


 勾玉もほんのり温かくなって、この一時を楽しんでいるみたい。


 食事の前に、みんなで手洗い。


 これも、少しずつ浸透してきた。


 最初は「なんでそんなことするの?」と不思議がられたけれど、子供たちが真似して喜ぶ姿を見たら、大人たちも自然と真似するようになった。


 そして、竹で作ったお箸。


 スプーンよりずっと好評で、みんなが「これ、便利!」と目を輝かせる。


 やっぱり日本人だわ……少し教えるだけで、すぐに上手に使える子がチラホラ出てきた。


 手掴みで食べていた子も減ってきて、食事の様子が少しずつきれいになってきた。


 これで、感染症も少しは減らせるかもしれない。


 小さな変化だけど、私にとっては大きな一歩。


 竈門の火が、ぱちぱちと優しく音を立てる。


 粟がふっくらと煮え上がり、山菜の香りが立ち上る。


 魚の干物がじんわりと温まり、みんなの顔がほころぶ。


 私は、そっと手を合わせた。


 この火が、みんなの笑顔を照らしてくれる。


 この場所が、村の心を一つにしてくれる。


 お皿になる土器も、早く作りたい。


 もっとブロックを焼いて、大きめの焼き窯ができたら……。


 丈夫で、水漏れしない、きれいな土器を。


 ミナちゃんたちに、貝殻や縄目で模様をつけてもらったら、きっと可愛くなるわね。


 子供たちが「これ、私が描いたの!」って自慢げに言う姿を想像すると、胸がほっこりとする。


 みんなが輪になって座り、湯気の立つ器を手に取る。


「美味しい!」「神女、ありがとう!」「また一緒に作ろうね!」


 そんな声が、夕暮れの空に溶けていく。


 漂うのは、薪の煙と、温かなご飯の香り。


 そして、何より――


 みんなの笑顔と、繋がりの温もり。


 少しずつ、少しずつ。


 この村を、みんなで守り、育てていく。


 火がゆらめく中、私は静かに微笑んだ。


 まだまだ、始まったばかり。


 おばちゃん頑張るからね!


 

皆の笑顔がおばちゃんに元気をくれますね。


 次回、秋、稲穂が色づき収穫まであと少しというタイミングでアレがやってきます。


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