日記 0
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ᵕ̣̣̣̣̣̣日記 0
波がやさしく岸辺をなでるように寄せるなか、私は海辺の村で静かに穏やかな朝を迎えて目を覚ました。陽の光が窓から差し込み、畳の上に黄金色の輝きを落としている。今日は怠惰な日、義務も用事も待っていない。まさに静けさを味わい、人生の小さな喜びに身を委ねるのにふさわしい日だった。
腕を頭の上に伸ばして満足げにあくびをし、部屋を見回す。妹はすでに起きていて、角で踊りの練習をしていた。鮮やかなリボンが優雅に舞い、彼女の自由奔放さと、炎のような決意がその動き一つ一つに映し出されていた。
「おはよう、チョウ。」私は微笑みながらつぶやいた。「そのリボン、日ごとに美しくなるね。」 それが彼女の“もの”だった。踊り。誰もそれを咎められない。音楽も踊りも歌も、彼女は比類なき存在だった。その朝も彼女は腕にいくつもの踊りのリボンを巻きつけていた。これが何かにつながると信じて。そして実際にそうなっていった。ひとつひとつの仕草が、緻密で調和した優美さを放ち、人の視線を引き寄せた。
チョウの瞳は熱意にきらめき、くるりと回りながら言った。
「セイヨ、来月の祭りで村の人たちの前で踊るのが待ちきれない! 家族に誇りを持ってもらいたいの!」
私たちはその祭りで踊らないはずだったが、彼女は信じていた。本気で。どうにかして、踊れると。
それがチョウという人間だった。不可能なことが、彼女の周りでは起こるのだ。幸運だと言うにはあまりにも足りない。彼女が必要とするものは現れる。そしてそれは彼女だけでなく、周りにいる者たちにも。子どもの頭に落ちそうだった工具が、ぎりぎりで受け止められる。枯れかけた畑を彼女が歩けば、数日後にはあふれるほどの実りを迎える。そして彼女は優しかった。とても、とても優しく…。
私は微笑んだ。チョウがいつも広げるその温もりを感じながら。彼女は練習の時でさえ喜びに満ちて踊り、その姿に私はただ見惚れるしかなかった。私は物静かな性格だが、彼女はいつも私を孤独から引き出してくれた。自分が望むものを正確に知っているようで、時に他人が気づかぬ望みさえ理解し、自由奔放でいて情熱に満ちた献身をもって夢を追いかけた。その姿は伝染するように周囲を巻き込んでいった。若さにもかかわらず、チョウは観る者を魅了せずにはいられない才能を持っていた。彼女に会うだけで、人はその幸福に触れるのだ。誰が彼女を責められるだろう?
私は台所へそっと入り、香の匂いと薬草の香りに包まれた。母はすでに朝食の支度に取りかかっていて、黒い絹のような髪が白い肌に影を落としていた。いつも朝の母には静かな安らぎがあり、小さく鼻歌を口ずさみながら、その存在が周囲を落ち着かせていた。
「おはよう、お母さん。」私は角を勢いよく曲がり、危うくぶつかりそうになりながら慌てて頭を下げた。「何を作ってるの?」
母は笑顔で振り向いた。その顔全体を照らすような笑みだった。
「今日は鯛飯よ、セイヨ。昨日あなたが獲ってきた鯛でご飯を炊いたの。」
海の味が大好きだった。潮の香りがすべてに溶け込むようで。ここは幸運な場所だった。潮風にその味を感じられるほど、海が常に近くにある。私は毎日潜って食材を得た。家族の食事のために。食卓を整える手伝いをしながら、その日常の静かな喜びに心を満たした。
それが私の“もの”だった。潜ることが好きだった。でもそれだけではない。食事を作ることも。そして少なくとも材料を自分の手で得ること。その実感――「これは自分が家族のために手に入れたものだ」という感覚――それこそが私のものだった。
朝食の後、私は縁側に出た。庭を見渡す木の縁側。空気は温かく、潮風が木々を揺らし、近くの家々の暖簾をさやさやと鳴らしていた。チョウは隣に腰を下ろし、足をぶらぶらさせながら、村が目覚めていくのを一緒に見ていた。
「セイヨ、そろそろお父さんから便りが来ると思う?」彼女は不意に問いかけ、遠い目をした。
胸に小さな痛みが走った。父はしばらく村を離れ、大きな橋の守りにつについていた。崩壊以前は技師だったが、その後は義勇兵に加わった。消防と警察を合わせたような存在だ。崩壊の時代は介入期に似ていた。この場所はチキュウよりは良いが、規模は大きく、荒野は常に脅威だった。だから町々には民兵や志願兵が必要となった。
その頃、義勇兵は父をあちこちへ移動させていた。他にもよく分からない任務を担っていた。近くにいる時は、私たち子どもに手紙を届けさせてくれたが、橋より遠くへは一人で行けなかった。崩壊前の人々は磁加速銃を持っていた。祖父の銃は残っていたが、電核はすぐに姿を消した。だから私たちは工夫して生きた。
最近は手紙を届けることもなく、父からの便りも途絶えていた。遠く離れた彼を思うと、心に小さな空洞が残る。
「最近は母さんも聞いていないって。」私は認めた。言うなとされていたが、妹には隠せなかった。「きっと無事だよ。強い人だから。」
チョウは笑みを浮かべ、いつもの明るさを取り戻した。
「すぐ帰ってくるわ。そう信じてる。」
彼女は居間へ飛び込み、修理中の古筝に向かった。我が家の掟は、欲しいものは使うこと。まずはそれを知ることから始めるのだ。十一歳という年齢は、何よりもエネルギーに満ちていた。
その後の一日を、ゆるやかに水が下るような時の流れで過ごした。庭で遊び、笑い合い、昔の遊びのルールを思い出そうとした。母は庭で薬草を摘み取り、その手は何事にも等しく優しい。特に後に誰かを救う薬草には。母は少しずつ私たちに教えてくれたが、まだ調合するほどの知識はなかったので、代わりに使い走りをした。だが今日は用事もなく、日々は私たちのものだった。
日が傾く頃、私たちは浜辺に出て、空が鮮やかな色に変わるのを見守った。最後の光が穏やかな水面に映え、その静けさに包まれると、言葉では説明できない安心感に抱かれるのだった。私はこの暮らしに圧倒的な感謝を覚えた。前近代的な趣を残し、人の温かさに満ちたこの村は、安らぎの聖域だった。ここにある人生の断片に、慰めと喜びと世界との深いつながりを見出した。
多くを語らず、ただその美しさと家族の絆を分かち合った。頭を寄せ合い、沈む夕日を眺め、ひとつひとつ星が瞬き始めるのを見た。
やがて夜の海辺の村を抱きしめるように、世界は小さく静かなものとなった。私は眠りにつきながら、父のため、家族のために小さな祈りをささやき、波の音に身を委ねた。
【とじ✿】♡




