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季節の静けさ  作者: 波歌
59/83

日記 58 ☼

✧0.009-11

ᵕ̣̣̣̣̣̣ 日記 58 ☼


やわらかな朝の光が障子から差し込み、部屋をあたたかく染める中、私は布団から起き上がり、新しい一日を迎えた。けれど、それはあまり歓迎できるものではなかった。今週は静かな調べに満ち、言葉にできない感情や気の流れが複雑に絡み合うだろうと感じていた。父はまだ出立中で、楽しみに待つにはもう少し時間が必要だった。


小さく息をつき、外の花々を映した繊細な文様の着物に袖を通した。帯を結ぶと、生地がそっと身を抱きしめてくれるようで、ささやかな安らぎを与えてくれた。


外に出ると、花の芳香を含んだ風が頬を撫で、世界全体が仄かな輝きを帯びて、隠された角落ちへと私を誘うように見えた。


庭に出て、小さな盆栽のそばに膝をついた。こういう日にだけ訪れるその木の枝を、小さな鋏で静かに整えていく。ひとつひとつの音は不要なものを手放す響きであり、木と私が共に変化を分かち合っているように感じられた。


立ち上がる前に、軒下の手水鉢のそばに立ち寄った。窓辺に置かれた蓋付きの瓶には、挽いたヨモギが入っている。布に包んで掌に押し当てると、土の匂いが椿の香りと混じり合い、脈がゆるやかに落ち着いていく。私はその小包を袖に滑り込ませ、その温もりを身に宿した。


盆栽を朝日に委ねて、小川へと足を運んだ。流れる水音が空気を満たし、感覚をやさしく鎮めてくれる。手を冷たい流れに浸すと、肌を清め、残っていた迷いや不安を洗い流してくれた。


ほどなく、古樹に囲まれた静かな寺に辿り着いた。山門をくぐると、肩にかかっていた重みがふっと軽くなる。境内には安らぎが満ち、聖域の静けさが心を迎え入れてくれた。


本堂で手を合わせると、沈黙のなかに慰めを見いだした。静寂には力がある――それをそっと思い出させてくれる時間だった。漂う香のかぐわしさは、敬虔と安寧の気配を運んできた。


寺を後にし、曲がりくねった道を進むと、小さな茶屋に行き着いた。淹れたての茶の香りが漂い、私を中へと誘った。低い卓に手を置くと、温かな木肌が心を落ち着かせてくれた。


一口ごとに茶を味わい、静かなひとときを楽しんだ。葉が湯の中で浮き沈みするように、内なる気の流れもやわらかく揺れ動く。ときに海が風へと自らの調べを分け与えるように。


やがて茶屋の静けさが昼へと移ろうころ、私は杯を置き、鞄から絹装丁のノートを取り出した。白紙のあいだには、春に摘んだノコギリソウの花弁が一片、今日のような朝のために押し挟まれていた。その脈をなぞると、身体にも独自の季節があるのだと知らされる。その思いを抱きつつ筆をとり、最初の淡い一筆が広がり、ちょうど半月の輪郭となった。


日が傾き始めるまで、私は筆に心を任せ、絵を描き続けた。色や形は言葉にならぬ思いを宿す器となり、内なる織物を外へと映し出した。


夕陽が空を黄金と深紅に染めるころ、私は家に戻った。その一日は固有の言語を持ち、囁きながら私を導いてくれた。


目を閉じると、静かな力と共に今日の重みが胸に降り積もった。明日はまた新しい冒険と啓示を運んでくるだろう。しかし今は、夕べの抱擁に身を委ね、我が存在の無言の交響に耳を澄ませる。


語られぬものを含めて、この繊細な体験の数々は背景へと溶けていった。選択や感情に及ぼす影響は、心地よい深みへと沈み、私に思い出させた――旅路の形を理解するのは、私自身なのだと。


【とじ✿】♡


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