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02 口惜しい日

家に戻ると兄の部屋へ行った。兄はわたくしと入れ替わりに学院を卒業した。そして今年一年好きなことをやりたいということで、隣国へ留学することになっている。


「ミランダ。帰ってきたか。どうだった学院は」と言うところで


「なにか、あったか?もしかして・・・」


「そのもしかしてです。ご存知のことを全部教えて下さい」と言うと


「そうか・・・」とわたくしに椅子をすすめた。



お兄様の話をまとめると


ランダさんは、ボーダード男爵の令嬢で病弱の為十四歳まで、領地で育ったそうだ。病弱だった為当たり前の教育を受けておらず、幼い子供のように無邪気に振舞うそうで、編入学したばかりの頃はそれを心配して同級生がいろいろ教えたそうだが、すぐに泣いて・・・そうね。すぐ泣く。


そして迷子になったと王子たちの教室のまわりをうろうろしていて、知り合いになった。学年が一つ違うとか・・・つまりわたくしは一年生、ランダさんは二年生、王子殿下は三年生ってことね。


迷子になって三年生の校舎をうろうろしていて転んで足をくじいて、側近がお姫様抱っこをして保健室に運んで・・・それ以来一緒に行動していたが、さすがに今年は控えているだろうと兄は思っていたそうだ。だって婚約者のわたくしが入学するんですもの。


朝のことを話すと相変わらず迷子の心配かと兄は、苦い顔をした。


そして、お昼のことを・・・わたくしの苦い推測は抜きに給仕の表情や側近のことは抜きで話すと、なにやら考え込んでしまった。


確かに学内は身分にたいしてうるさいことはない・・・だが、殿下がわたくしを蔑ろにしてもわたくしが殿下に物申すわけにはいかない。


他の人に対しても、侯爵令嬢で王子妃の婚約者であるということは、一番上であるが、一番不自由だと言えるのだ。


ランダさんがわたくしに無礼を働いても、不問。にっこり笑って許すと言うのが正解の世界だ・・・はーー



そして、わたくしはお兄様と話しているうちに、いままでの辛かった王子妃教育のことを思い出して感情がゆれた。


必死に、揺れを止めようと努力した。だけど止めようとすればするほど、揺れはひどくなった・・・


お兄様はそんなわたくしをそっと抱きしめると、


「ミーラー、ミラはまだ十五歳だよ。子供と言っていいんだよ。泣いてもいいんだよ。ミラが聞き分けよく我慢するからみんながミラに甘えてしまったんだ。甘えるのはミラのほうだよ」と優しく耳元で囁いてくれた。


わたくしはお兄様の胸でぐずぐずと泣いているうちに、口惜しさを感じて来た。そうわたくしはないがしろにされて口惜しかったのだ。


仮にも王子の婚約者。ふさわしくあろうと努力した。他の子が遊んでいる時も勉強した。教師に鞭を振るわれたこともある。だけど歯を食いしばって頑張った。本当に頑張った。


それを・・・それを・・・わたくしは号泣した。泣いて泣いて泣いた。


その間お兄様は、なにも言わず、ただ背中や頭を撫でてくれた。


やがて涙が止まったわたくしは、空腹を感じた。そろそろ夕食の時間だ。


お兄様は、軽く笑うと


「ポーラが心配して待ってるようだよ」と言うと


「入っておいで」と声をかけた。するとわたくしの侍女のポーラが入って来て、顔と髪をきれいにしてくれた。





いつも読んでいただきありがとうございます!


楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。



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