01 学院初日
わたくしが、正式に第一王子殿下の婚約者になったのは、十歳の時だった。わたくしの生活は変わった。
王子妃となる為の勉強が始まったのだ。どれくらい勉強すればいいのだろう?先がみえない。
わたくしは不安だった。
そして殿下が学院に入学した。二つ年上の殿下は学院は楽しいと話してくれた。お話を聞いてわたくしは学院に入るのを楽しみに勉強を頑張った。
そして、入学式の翌日、わたくしは胸を弾ませて学院に向かった。
馬車を降りると殿下がいた。わたくしはカーテシーをして挨拶をした。
「おはよう、ミランダ」と殿下の返事が返って来た。
教室に同行してくれると思って殿下が歩き出すのを待った、殿下は戸惑っているようだった。わたくしはなにかまずい事をやったのかと不安に思った・・・そこに
「おはよう、ウィル」と明るい声がした。
金髪を結わずにふわりと風になびかせた女性が、殿下の腕に腕をからませた。
「おはよう、ランダ」と殿下の声がした。
二人はそのままわたくしを置いて歩いて行った。
わたくしもすぐに自分の教室に向かって歩いた。
あの人は誰?親しいの?ウィルって呼んでるの?いろんな思いがぐるぐる回ったが、わたくしとわかって目礼してくる人たちにうなずきながら、口角を少しあげる微笑みを保ちながら教室まで歩いた。
「おはようございます。ミランダ様」「ミランダ様、おはようございます」挨拶に答えながら席に向かうが、「ルーシー、同じクラスね」「クリス、よかったぁ同じクラス」と手を取り合う人たち・・・
わたくしもミランダと呼び捨てにして貰いたい。だけどそれを希望すると相手の負担になる事はわかっている。
だからわたくしは、微笑みを浮かべて、「おはようございます」とみなに平等に同じ挨拶を返す。
お昼もわたくしは個室で取るように言われているので、みなの輪から外れてそこに向かった。
当然、殿下もいらっしゃると思って静かに待っていると
「もう、ウィルったら」とあのランダさんの甘えた声が開いたドアから聞こえた。
「ミランダ! いるのか?」と殿下の声がした。意外だと言う思いが乗った声。
殿下と側近の四人とランダさん。あっと思った。用意された椅子は六脚・・・
素早く給仕に合図した。給仕が椅子をすばやく持って来てなにごともなかったように、全員が座った。
殿下がわたくしにランダさんを紹介するかと待ったが、殿下がなにも言わないので、わたくしもなにも言えなかった。
給仕は、殿下、わたくし、側近。の順番で、お肉かお魚かと尋ねた。ランダさんには聞かなかった。多分、お魚がなくなってランダさんはお肉になるんだなと思った。
それを疑問に思わなかったのはもしかして傲慢かも知れない、だけど婚約者で侯爵家令嬢だ。
給仕がいなくなるとランダさんがしくしく泣き出した。
「やっぱり、わたしが一緒にいるのはいけないのですね・・・その人が、いない時は六人で納まっていたのに・・・わたしは・・・余分ですね・・・」と切れ切れに言いながら。
その人・・・わたくしをその人と呼ぶのね・・・
そして殿下も側近をそれを注意しない。
余分と言えば余分だよね。だけど・・・殿下はちらっとわたくしを見ただけでランダさんを慰めていたけど、側近の四人はわたくしを睨みつけたり、ランダさんに優しい声をかけたり・・・
食事が給仕されると、殿下が
「僕の分の魚はランダにあげて、今日は予定が狂っただろう」と給仕に笑いかけた。給仕もわたくしをちらっとみると
「かしこまりました」と一番にランダさんに給仕した。
わたくしをいない者として、六人が楽しく話をしていた。なんとか食べ物を口に運び必死に飲み下した。
長く苦しい時間だった。いままでも王子妃教育で得た物を総動員した。教育は無駄じゃなかった・・・
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