童話通信
童話の国に拠点をおいているトリスさんは、今日も夢が降ろうと向こうの世界から届くストーリーを仕分けしている。向こうの世界では自身が書いたストーリーを童話にしてほしいと望んでいる『人間』達が夢の数だけ息づいている。更に一人の『人間』が何作も纏めて童話の国にストーリーを届ける日もあるからそれはもう、大変!(一番数が多いのは、童話の国に合わせて『ファンタジー』……そして今最も人気の高い『転生』『異世界』『ザマア』系のジャンルも圧倒的に投稿数が去年の数を上回ってるな。自分は思うけど、ドロドロなストーリーは苦手だな)中には登場人物が修羅場状態になる流れの作品等も在るので、トリスさんの頭は少し痛い。ジャッジが難しい作品だからこそ、難易度の高さで人気が在るんだろう。その辺りは耐えるしかない。「作品ジャッジの具合はいかがですか?」童話の国唯一の出版社『幻想館』の編集長、カリータが現れた。「カリータ編集長!」トリスさんの背筋がピン、と伸びる。元々獣のような顔に猫を被ったトリスさん。「今年の応募作品もまた、不思議なストーリーが多そうですね」「はい。童話世界へ繋がるチャンスですから、応募者の方は過去に存在していたストーリーの数に合うほどですね」「やはり、そうでしょうね。なんと言いましても、応募者の皆さま方全員……」「ですね」「元登場人物ですからね」「みなさん、読まれるよりは書く役割の方がお好きみたいです」かつてストーリーのヒロインだった女性は、リアルの世界から童話の国を読んでいる。役割は逆転していた。