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ループする世界、時を超える想い  作者: シマフジ英
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51 最終決戦(ウィル視点)

 東の最果ての巨城。未来の世界で、僕たちは巨人のアンデッドと戦った。あれの素体となった人間こそがベルビントという名前だったから、あの巨人こそが本当のベルビントということなのだろう。僕が借りた名前だ。


 巨人に敗北して僕が時を超えてからここまで、体感時間はそれほど長くはない。ただし、実際はドリスが何度も世界を繰り返したから、僕の過ごした時間はとても長い。それも、時を超える前の僕が過ごした時も追加されているわけだから、本当に長い時を経ての再戦だ。


 ドリスによれば、繰り返す世界の中でもここまで到達したことはあったらしい。しかし、その時は悪魔アブタビムの介入のせいで戦うことはなかったという。だから、この巨人と戦った記憶があるのは僕だけだ。


 巨人は未来の時と同じように、大きな椅子に座っていた。僕たちが最上階に乗り込み、戦意を感じ取ったようで、立ち上がって咆哮を上げた。


「来るわよ!」

 ドリスが叫び、僕たちは散開した。


 巨人が手を振りかざすと、複数の魔法の発動が感知された。僕は魔導具スーツを操り、それらを撃ち抜いた。


「うらぁ!!」

 デルロイが前に出て攻撃を繰り出す。あの巨体に怯まない戦意は流石だ。


 未来のデルロイに比べて魔力は劣っているものの、この場にはマヤがいるし、何よりもドリスが物凄い魔力で存在感を放っている。チームで言えば、絶対に今の方が戦力は上だと断言できる。


「はぁぁ!!」

 ドリスが攻撃魔法を撃った。巨人は雄叫びを上げて気合を入れながらそれを弾いた。全力での防御だったようで体制を崩している。そこを僕が数発撃ち、デルロイとマヤも追撃した。


 少しずつではあるが削れている。この巨人はアンデッドの中でも再生力が高いから休んでいる暇はない。


 未来の世界では、僕が捨て身の禁呪で大きな攻撃をしたが、ドリスの魔法一発がそれを上回っているように見える。それを何発も喰らっているのに巨人は倒れていないから、結局、未来の世界の戦いは惜しくも何ともなかったのだ。


「うっ!?」

「ぐぁっ!?」

 マヤとデルロイが被弾したのか、小さい悲鳴を上げた。しかし、ハンドサインで問題ないことを僕とドリスに伝えてくれる。


 それを信じ、僕もドリスもフォーメーションを崩すことはなかった。


「そこ!!」

 僕は魔導具で属性の異なる魔法を三連射した。二発が巨人の足元に炸裂し、巨人がバランスを崩した。


 そこへドリスの強力な魔法が放たれた。巨人が吹っ飛び、壁に叩きつけられた。しかし、巨人も反撃の魔法を飛ばし、僕は魔導具のステップ機能で直撃を避けた。しかし、細かい爆風などは防げず、徐々にスーツにダメージが蓄積していく。


「くっ、第一装甲がもう駄目だ……」

 ダメージと魔導具から魔法を連発した反動で、凝縮した(ちく)魔法石を組み込んである第一装甲が機能不全になった。僕は止むなくその場所をパージした。


「ちぃぃっ、まだ倒れねーか、この野郎!!」

 怒鳴るデルロイからは出血が目立つ。マヤも致命傷こそ避けているものの、あちこちに被弾していて少しずつ動きが鈍くなってきていた。


「混合魔法!」

 ドリスが右手の杖と左手で異なる属性の魔法を使い、同時攻撃した。これはルーツの得意技だったはず。デルロイやマヤでさえ出来ない高難度の魔法行使だ。今のドリスには扱えるようだった。


 その攻撃は巨人を転倒させるに至った。凄まじい威力だ。やはり威力はドリスが担当するしかない。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!」

 しかし、そのドリスも肩で息をしている。本来、今のドリスが扱うべき魔力量ではないのだ。肉体の消耗も激しくて当然だった。


「マヤ、階段付近!!」

「っ……!?」

 デルロイが叫んだ。下階から騒ぎに反応したアンデッドが上がってきていた。マヤは階段付近に土魔法を撃ち、階段を破壊した。これでしばらく時間が稼げる。


 巨人がさらに複数の魔法を同時展開する。僕はすかさずそれらを撃ち抜いた。いや、撃ち抜こうとした。


「くそっ、スーツが……!?」

 魔導スーツの限界が近づいている。一つを除いて撃ち落としたが、残り一個には魔導具がオーバーヒートして攻撃できなかった。僕は止むなく、発動の遅い不得意な魔法を使い、その一つを防いだ。


「うおおおお!!」

 しかし、相殺しきれない。僕の魔法なんてこの程度だ。しかし、渾身の力を振り絞って、その一撃だけは消し去った。


 複数魔法を使って体勢の崩れていた巨人をドリスとデルロイとマヤが攻撃していた。しかし、今の複数魔法はもう僕だけではしのげない。


 全員肩で息をしている。限界が近い。それでも、巨人の動きも鈍くなってきている。僕たちの攻撃のダメージが蓄積してきているのだ。


 その時、ドリスの頭上に使い魔(ゾリー)が現れた。


「ゾリー、どうしたの!?」

「ドリス、そろそろじゃないか!?」

「分かったわ!」


 その話は打ち合わせ済みだ。魔女の秘法はジルヴァディニドだけではない。強力な攻撃魔法も存在する。ジルヴァディニドと同様、行使にはゾリーの力も必要らしい。


 そして、いくら魔力ブースト状態のドリスでも一発が限界だという。ゾリーは今が使い所だと判断したのだ。


「いいじゃねーか!」

「それまでは私たちが支える!」

「ウィル! 遅れるなよ!」

「ああ!!」

 魔導スーツが限界を迎えつつあって自分で魔法を使い始めている僕に、デルロイは気合を入れた。


 ああ、勿論だともデルロイ。ここで踏ん張れなかったら、僕は何のために時を超えたのか分からない!


 ゾリーを肩に乗せたドリスが光り輝く。巨人もそれが攻撃だと判断したようで、ドリスを止めようとしてきた。僕たちは必死の攻撃でそれを阻止した。


 そして、せっかく蓄積させたダメージを回復されないようにデルロイとマヤは大魔法を使い続けた。


「ぐぐぐぐ……!!」

「くぉのぉぉおお……!!」

 デルロイとマヤは必死に声を上げて踏ん張っているが、そろそろ限界だ。僕の魔導スーツも作動率は10パーセントほどに落ちており、付け焼き刃の魔法を使わざるを得なくなっている。


 しかし、魔導スーツにも奥の手があった。自爆魔法を仕込んである。使うのは人間ではないから、失うのは魔導具セット一式だけだ。


 僕はデルロイとマヤにハンドサインでそれを合図した。二人は力を振り絞り、僕の道を切り開いた。


 そして巨人に接近した僕は、自爆魔法用の魔導具セットを巨人に投げつけた。自動で作動し、巨人を襲う。


 巨人はたまらずといった様子で咆哮を上げた。


「皆、どいて!!」

「「「!?」」」

 ドリスの声掛けに反応し、僕らは飛び退(しさ)る。


 ドリスから極太の光線が飛び出し、巨人を襲った。自爆魔法からの追撃だ。効いているようだった。しかし、巨人はその魔法を弾き返そうとする。


「うああああーーーー!!」

 ドリスは大声で気合を入れ、魔力をその魔法に注いだ。巨人も同じように咆哮を上げている。


「ドリス、頑張れ!!」

「やっちまえ!!」

 僕とデルロイは叫んだ。


「ドリス、踏ん張って!!」

 マヤも声を上げる。


 きっと、それが勝敗を決める最後の攻撃だと誰もが確信していた。デルロイもマヤももう魔力が尽きているし、僕も全部出し尽くした。


 そして……。


 ドリスの魔法は巨人の身体を爆散させた。

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