48 台無しになった計画
悪魔アブタビムは東の最果てまで帰還していた。計画を台無しにされたことで憤慨している。アブタビムの手足だった悪魔三体も倒されてしまった。
「魔道士オーデルグ……、一体何者だ!? なぜ人の身でありながらあれほどの闇魔法を……!?」
アブタビムの顔が屈辱に染まる。
アブタビム自身、異世界から来た悪魔だ。面白そうな世界だと目をつけてやって来た。世界を観察しているうちに、誰かが世界をやり直しているのに気がついた。それは愚かな魔女がしていることだと知った。
インチキのようなやり直しを繰り返しながら、自分が特権を持つ存在だと気づいてもいない愚かな女。絶望させ、その顔を拝みたかった。絶望する愚か者を闇で汚してやりたかった。それがアブタビムの狙いだった。
警戒はしていたはずだった。アブタビム自身が異世界から来たから、他の者が来ることもあり得るとは思っていた。オーデルグも恐らくは異世界からやって来た魔道士だ。しかし、あの人智を超えた強さは警戒していてもどうしようもなかっただろうとアブタビムは感じている。
極めつけは魔道士ルーツに翻弄されたという事実だ。強い魔道士ではあったが、アブタビムの魔法を止めることも出来ていなかったし、アブタビムの警戒は途中から薄れていた。しかし、世界のやり直しの事を把握しているようには見えなかったのに、真の力を隠していたらしい。サナという魔道士と合流して見せつけてきたその強さもまた人の身では考えられないレベルだった。
異常な強さを誇る魔道士が三人に、どういうわけか魔女ドリスも恐ろしい力を発揮してきた。東の最果てにいる死界の始まりの巨人でも、あのパーティに攻めてこられてはどうしようもないことは明白だった。アブタビムが巨人に力を貸したところで、結果は見えていた。
「しかも、ウィルにあんな秘密があったとは……」
アブタビムはふと呟いた。アンデッド化させたはずのウィルが元に戻されてしまったし、そのウィルに過去へ戻る魔法がかけられたのもアブタビムは感知できていた。
そこでアブタビムは初めてウィルとベルビントが同一人物だったことを知った。ベルビントとマヤが繰り返しの中で必ず関係を持つことの裏付けをしなかったことを後悔した。
「私としたことが、手を抜いてしまったな」
手抜きせず、ウィルとマヤの裏事情まできちんと調査できていれば別の作戦を考えることもできたはずだった。しかし、それをしなかった落ち度をアブタビムは素直に認めた。
「相手にせず、逃げるか……?」
アブタビムは自問するように呟いた。
しかし、アブタビムはその考えを却下した。悪魔の身でありながら、逆に人間にいいようにされるなど笑止千万。最後まで戦って意地を見せる決意をした。
「だが、どうする……? 私の力では奴らにまともに立ち向かっても歯が立たない……」
アブタビムは思案を巡らえた。
「この世界のアンデッドは私の味方ではないが、ある程度利用させてもらうことにするか」
アブタビムは暗黒の使い手だ。だから、アンデッドを操る術も心得ている。この世界のアンデッドは独特でアブタビムの思い通りにはならなかったが、ある程度の操作はできた。
結局のところ、アブタビムの手札はそれを応用する以外にない。相手の魔道士オーデルグもまた闇の使い手だという事実が気にかかるところだったが、もはやそれ以外に手は残されていない。
アブタビムは、自分の力となるアンデッドを東の最果てに集結させようとしていた。




