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ループする世界、時を超える想い  作者: シマフジ英
35/55

35 思いがけない再会(ルーツ視点)

「うわっ、ミスった!」

「やった!!」

 デルロイが叫び、ウィルが呟いた。養成アカデミーでの模擬戦の訓練だ。条件付きの模擬戦とはいえ、初めてウィルがデルロイから一本取った。俺は拍手をしながらウィルを出迎えた。


「やるじゃないかウィル」

「いや、どうだろ。だいぶ幸運だったと思うけど」

 ウィルは謙遜(けんそん)したが、嬉しさを抑えきれていない。幼い頃から見てきた最強の同級生に一回でも勝ったのだ。感情が高ぶるのは仕方のないことだろう。


「何だ、謙遜なんかすんなよ、ウィル! お前が頼りになるってことなんだからな!」

「わっ、デルロイ!」

 デルロイがウィルの背中をばんばんと叩く。本当に、ウィルはデルロイのお気に入りなんだなと思わされる。


「さてウィル。ちょっと魔力検査をしたいんだけど、この後いいかな?」

「え? いいけど……」

 俺はウィルを検査室に連れていき、魔力を見ると称して身体を見させてもらった。


「うーむ……」

 ウィルに魔力に乱れがある。いや、魔力ではない、何かが乱れている。これはもう、間違いないな。


「ルーツ……? 僕の身体に何か……?」

「いや、何でもない。魔導具使いになって魔力の訓練が減ったから、魔力量が落ちていないか確認しただけだよ」

「そっか。でも、ルーツには感謝しなきゃな。おかげで特別ルールとはいえ、一回でもあのデルロイから一本取れたよ!」

「前にも言ったけど、俺はきっかけを提供しただけ。努力したのはウィルだよ」

 俺は笑いながら検査室の機材を片付けた。


 ウィルはもう少しアカデミーで訓練していくとのことで、俺はアカデミーを出て道を歩いた。


「ふぅぅ、まいったな……」

 詳細に検査して分かった。間違いなくウィルだ、時空の乱れの発生源は。


「世界の矛盾か……、なるほどな……」

 原因は分かってしまった。ならば時空の乱れを解消する方法はただ一つ。世界の矛盾を消し去ること。急がねばならないだろう。もう時空の乱れは放っておいていい段階ではない。いつ決壊するか分からないのだから。


 俺は上空を見上げた。そこにある時空の乱れは、デルロイやマヤ、ドリスといった強い魔道士でも気づけないらしい。死界討滅軍にいるはずの凄腕の魔道士たちでもだ。しかし、時空の乱れは確かに大きくなってきている。


 その時、誰かが俺の後ろに立っているのに気づいた。


「ルーツ」

「えっ!?」

 その声を聞いた瞬間、俺は心の底から驚き、そして振り向いた。


「しばらくですね」

「サ……、サナ!?」

 そこに立っていたのは間違いなくサナだった。俺の幼馴染のサナ王女ではない。彼女とは魂の色が違う。俺がそれを間違えることはなかった。目の前の少女は、前の世界の破壊神トコヨニに創り出された、サナ王女のコピー人間だ。


「まったく、看取ったつもりだった私たちが馬鹿みたいじゃないですか。挨拶ぐらいしに来てくれても良いのに……」

「は……、ははっ……!!」

 今のサナの姿に、俺は思わず笑みを浮かべてしまう。


 前より綺麗になったとも感じるが、それ以上に驚かされるのは溢れ出ている魔力。俺と戦った時から考えても比べ物にならないほど強くなっている。どれだけの研鑽(けんさん)や経験を積んだのか。


 あまり驚いていないところを見ると、俺が生きていたことは……、正確には転生していたことは知っていたようだ。ユグドラシルの精あたりから知らされたのかもしれない。


「どうしてこの世界に?」

「異世界を冒険する機会に恵まれて、その成り行きでここにも来ました」

「そうか、そんなことをしているのか。ルーツも一緒に?」

「ええ、ここにも来ていますよ。ルーツにそう言われると非常に紛らわしいですけどね」

「くっくっく、全くだな!」

 そんな雑談をしていると、コピーのルーツが手を振りながら歩いてきた。ルーツも驚くほど魔力が研鑽されて逞しくなっていた。


 俺は彼らに未来を託したのだ。だから、この二人がより大きくなっていたのを見られて本当に嬉しかった。久々に高揚する心を抑えきれず、二人と順に握手を交わす。


「ルーツ、あなたが生きていることは、ジャックやリリィやブルーニーあたりには伝えても良かったんじゃないですか」

「いいんだよ、これで。俺は今はこの世界の人間なんだから」

「そう言う気がしていました……。ルーツに確認を取らずに私たちが勝手に伝えるのは違うと思ったので、彼らには何も言っていません」

「ああ、すまないな。それと、俺のことはオーデルグでいい。紛らわしいだろ」

「え……。まあ、俺たちは構いませんが、良いのですか?」

「ああ。別にオーデルグという名前に落ち目を感じていたりはしない。ここは分かりやすさ優先で良いよ」

「分かりました、オーデルグ。まあ、逆にこっちのルーツをオーデルグと名乗らせても良かったかもしれませんが」

「それはやめろ、ますます分かりにくい!」


 俺たちはそんなことを言い合って笑い合った。そういえば、かつては敵同士だったから、こんな風に談笑するのは初めてだ。


「さて。積もる話もありますけど……」

「今はほら……」

 ルーツとサナはそう言うと上空を見上げた。


「流石だな。気づいていたか」

「事情も聞いています。時の流れの問題、そして世界の矛盾、ですよね」

「ああ……。発生源の()()はもう特定しているんだが」

「二つなのですか? そういうことなら、俺たちも恐らく()()を見てきました」

「そこでオーデルグがこの街にいることを知ったのですよ。そこにいたスタッフが()()()()()()()()()()()()ので」

「そうか……」


 そして、この二人なら問題の本質も一目で分かるだろう。俺は確認のため、二人に聞いてみた。


「ルーツ、サナ。君たちはオリジナルとコピーの区別がつくか?」

「ちょうどここにルーツとオーデルグがいるからよく分かりますけど、二人は魂の色が違いますよ」

「俺も、そこは間違える気がしません」

「ははっ、期待通りの答えだよ」


 魂の色は誰もが違う。オリジナルとコピーの関係だったサナ王女と目の前のサナも違ったし、俺と目の前のルーツも例外ではない。()()()()()の者が複数いることは本来絶対にありえないのだ。


「だったら養成アカデミーに行こうか。君らが見れば一目で分かる」

「なるほど、そこにいるのですね、もう()()が?」

「ああ」


 二人は協力してくれる気まんまんだった。彼らが協力してくれるのなら百人力というレベルではない。闇の魔力を失った今の俺からしたら、彼らの強さは手の届かないレベルにあるのだから。


「だけど、俺たちが見たら、()()を認識している人間が増えることになる」

「それがさらなる世界の矛盾に繋がって、時空の乱れが加速することになるかも」

「そうか、そうかもしれないな……」

「だから、先に戦力を整えましょう。オーデルグ、これ、使いますか?」

「これは……?」


 サナが差し出してきたそれは、黒い外装だった。俺が魔道士オーデルグを名乗った時に使ったものと似ており、中に闇の魔力が貯められている。力を取り戻す気はあるかという問い掛けだ。


「まったく、準備がいいな……」

「また闇の魔力を使うことになってしまいますが」

「問題ない。一度乗り越えたから闇に飲まれたりはしないよ。ありがたく使わせてもらう」

「分かりました」

 俺はサナから闇の外装を受け取った。


「ただし、闇の魔力を受け入れるには少し時間がかかる。完了するまでに何か問題が起きたら、すまないが二人で対処してくれるか?」

「ええ」

「もちろんです」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 頼もしい戦力二人と全盛期ルーツへのパワーアップがキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! 同じ世界の別の星とかならともかく異世界だと流石に前作のキャラは出て来ないんだろうなぁと思ってたのでこの展…
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