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ループする世界、時を超える想い  作者: シマフジ英
32/55

32 乱れる時空(ルーツ視点)

「どうなってる……」

 俺は空を見上げながら呟いた。時空の乱れがさらに酷くなっている。少し前まではこうではなかったはずだ。


 そろそろ本格的に世界の危機だ。あの時空の乱れでは、あそこから何が出てくるか想像もつかないし、乱れ自体が世界を滅ぼすかもしれない。死界が世界を覆うより、恐らくあの時空の乱れが世界を滅ぼす方が早いだろう。


 時の流れの問題、それによる世界の矛盾に耐えきれなくなった時、世界は崩壊する。あの時空の乱れは確実にその始まりだ。


 しかし、一体世界の矛盾とは何なのか。ユグドラシルの精は答えまでは教えてくれなかったし、口にできない呪いが世界にかけられているから俺自身が答えを見つけるしかない。


 そんな中、マヤに肩を抱かれながらしゃくり上げるドリスが拠点から出てきた。


「ドリス、マヤ、どうした……?」

「ルーツ……」

「わ、ドリス、ちょっと!」

 ドリスは隣にマヤがいるにも関わらず、俺に抱きついてきた。そのまま再び泣き始める。余程参っているらしい。マヤも少し困っているようだった。


 やはり、ドリスも関係しているのか。ドリスがこんな状態になるのは、時空の乱れと関係が? ドリスは、未来のことを知っている様子を見せる時があるからそう感じてしまう。


 時の流れに関することを俺が口にすることは呪いのためにできない。だから、何か問題があるのならドリスが説明してくれると助かるのだが……。


「ドリス、何か、俺にしてほしいことはないか?」

「分かんないよ……。今言うべきなのか、もっと粘るべきなのか……。もうそれも分からないよ、教えてよ……、ルーツ……」

「え……?」


 何故か、似たような会話を誰かとした気がする。何か、大切な約束をしたような。


 しかし、結局ドリスは何も言わなかった。制約があるのだろう。本当は今すぐに協力を求めたいけれど、今はまだ言えないということか。ドリスは少し落ち着きを取り戻した後、東方面の監視任務についた。


 そしてしばらく経つと、東方面からアンデッド・ドラゴンが侵攻してきたという情報が入った。伝えてきたのはドリスだ。


 俺とドリス、マヤ、デルロイ、ウィルでアンデッド・ドラゴンを迎え撃ちに出た。一台の馬車が逃げてきていたので、その逃走をまず優先させる。


「はぁぁ!」

 俺は火魔法と風魔法の同時使用でドラゴンを攻撃し、デルロイが前衛を引き受ける。さらにマヤとドリスで魔法攻撃を放ち、ウィルが援護をする形だ。


 ドリスは先ほどまでの憔悴(しょうすい)ぶりとは違って右へ左へ飛び回って魔法を使っているが、若干自暴自棄になっている気がする。しかし、この五人の連携なら足止めなら容易のはずだ。


 しかし、これにも違和感を感じる。粘れば勝てるのでは、いや、勝ったことがあるのではないかと思えるほどの既視感を覚えるのだ。このドラゴンと戦ったこと自体が初めてのはずだから、そんなはずはないのだが。


「時の流れの問題……?」

 俺はふと誰にも聞こえない声量で呟いた。


 思考に頭を持っていかれ、少し連携が乱れた。俺は戦いに集中し、考えるのは後にすることにした。


 やがて残りの避難が完了し、俺たちも逃走することになった。


「よっしゃ、逃げるぞ!」

「皆、こっちだ!!」

 デルロイとウィルが叫ぶ。


「ドリス、行くよ!」

 マヤが怒鳴った。ドリスがアンデッド・ドラゴンへの迎撃体制を解除しなかったからだ。俺はドリスの元に跳んだ。


「ドリス!」

「えっ!? あ、うん、ごめん!」

 俺はドリスと共に街の方へ急いだ。ドラゴンが追ってきたが、街に用意してあった最後の馬車に乗り込み、街の西門から出てぐんぐん距離を引き離していった。


「ふぅ、終わったね……」

「いや、まだだぞウィル。周囲の警戒を怠るな」

「まあ、いいじゃないデルロイ」

 マヤが最後に言い、警戒を他の乗員に委ねることを提案した。


「ドリス、大丈夫か?」

「うん、平気。さっきはごめんね、ありがと」

 ドリスが返答してきた。気丈に振る舞ってはいるが、まだ落ち着いたわけではあるまい。拠点に着いたら少し休ませないといけないなと俺は思った。



    ◇



 拠点の村に着くと、避難の残タスクが多数残っていたが、俺はドリスの休憩を要望した。ドリスが憔悴していた様子は多くの者が見ていたので、了承された。マヤ、ウィル、デルロイが作業を引き取ってくれた。


 俺はドリスを連れ、食堂に赴いた。村人のほとんどは既に避難済みだが、有志で残ってくれている者が回している食堂だ。お茶を注文し、二人でゆっくりとした。


「私、皆に気を使わせてばっかだね……」

「何か抱えてるんだろ? 気にするな、皆分かってくれるさ」

「うん……」

 しばらくそうしていると、店の外がざわつき始めた。


「何だ……?」

「病人でも出たんじゃない? 皆に任せて、私たちはここにいよ」

「あ、ああ……」

 ドリスが俺の手を握ってまで引き止めてくる。心底うんざりしたような顔をしていた。


「見たくないことでもあるのか?」

「うん。きっと見たらおかしくなる。だから、ここにいよ……」

「ああ、いいよ……」

 任務は休憩中だったから席を立つ理由もない。何より、ドリスが本当に嫌がっていたから俺たちはそのままその場に留まった。

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