28 元凶のアンデッド(ルーツ視点)
「うおりゃああ!!」
デルロイが前衛で火魔法を撃ちながら魔法剣で攻撃する。アンデッド・ドラゴンが怯んだ。
「はあっ!!」
マヤが気合を入れ、デルロイが怯ませたところに追撃の風魔法を放つ。さらにウィルが追い打ちをかける。
「ドリス!!」
「ええ!!」
俺とドリスはドラゴンに同時攻撃を仕掛けた。流石のドラゴンも効いてきたようだ。
「ぜぇ、ぜぇ、なんてしぶとい野郎だ!」
「はぁ、はぁ、で、でも、だいぶ削れてる!」
デルロイとマヤが言った。その通りだと思う。並のアンデッドに比べて本当にタフな相手だが、少しずつ生命力を削れている。
デルロイとマヤは強者だし、ドリスもウィルも頼りになる仲間だが、このドラゴンを相手にするのは厳しいかと最初は思った。一瞬、俺一人で戦うことも頭をよぎったのだが、冷静に判断すると、この巨城を攻略するには俺がしっかり探知魔法を使うべきだろう。一人で残ることは自分で却下した。
……しかし、前にもこんなことがあった気がする。何故か、その既視感に苛ついてしまう。決して死に場所を求めているつもりなどないが、このドラゴンと一対一で戦えば俺とてただでは済まない。そういう己の身を勘定に入れない戦いを否定され、また非難もしたような気がするのだ。
これも時の流れの問題とやらに関わる事項なのだろうか。正直、一つ大きな問題があることに見当はついている。俺が感じるこの違和感も関係するのかは分からない。
いずれにせよ、今は目の前のドラゴンを倒すことが先決だ。俺も必死に魔法を放ち続けた。
戦いは一時間近く続いた。最後に、俺の水と風の混合魔法でバランスを崩したところを、デルロイとマヤの最大出力の魔法が炸裂し、アンデッド・ドラゴンはついに倒れた。五人の力を合わせてようやく削りきった強敵だった。
「や、やった……」
「消耗したぜ……」
マヤとデルロイがへたり込みながら言った。疲れている様子だが、当然だった。
「か、勝てた……」
ドリスは呆然として座り込み、泣き出した。
「ドリス、まだ終わってないぞ」
「う、うん……」
俺はドリスの隣で声をかけた。何やら未来が分かっている風のドリスだったが、この勝利は予期できなかったのだろうか。少し感激が過ぎるように思う。
そして、ウィルは頭を抱えながらしゃがみ込んでいた。声を発することもできていない。ウィルは魔力を消費しているわけではないが、集中力を使った反動だろうか。
俺たちは魔力を回復する薬を飲み、少しだけ休憩してから巨城に乗り込んだ。
◇
探知魔法でアンデッドを回避しながら上階へと進む。しかし、どうしても倒さないと進めないアンデッドは倒していった。人型のアンデッドが多く、どうやら生前の力を宿しているのか魔法を使ってくる者さえいた。大勢で囲まれては突破などできないだろう。
そして、俺たちは最上階に到着した。
「な、なに、ここは……」
「空間がおかしくなってるぞ……」
ドリスとデルロイが言った。
彼らの言う通り、その場所は死界の瘴気が濃すぎて異空間のようになっている。渦のようにうごめく紫色のモヤ、中心に行くほどドス黒い死の瘴気、そこから死界が世界を侵食しているのだと物語っているような光景だ。
「あれが元凶か」
俺はその中心部を見て呟いた。一体の巨人が巨大な椅子に腰掛けている。
一体あれが何なのかは分からない。この施設は魔導研究所だったらしいから、その実験の過程で生み出されたのかもしれない。事故で誕生したのか、目的を持って創り出されたのかなど知る由もない。
「な、何て魔力……」
ドリスが呟いた。その通りだった。先ほど戦ったアンデッド・ドラゴンとは比べ物にならない。
「これは、どうするか……」
俺は思わず口に出した。
倒さなければならないのは間違いない。そうしなければ死界はこの世界の全てを覆ってしまい、人間の敗北だ。しかし、この五人で倒せる相手なのかはかなり疑問だった。どうやら眠っているようだから起きる前に撤退して力を蓄えるという選択肢もあるだろう。
それでも、今を逃せば守りがより固くなることは容易に想像できる。死界の強敵はあのアンデッド・ドラゴンだけではないだろう。そういう強いアンデッドに多数守りにつかれてしまっては、再びここに到達するのはより困難になるかもしれない。
どう倒すか考えていたその時、闇の魔力が動いたのを感じた。それは攻撃だ。誰かが狙われている。
「ドリス!!」
「えっ!?」
地面から黒い何かが突き出て、ドリスを一突きにしようとした。俺は間一髪、防御魔法でそれを防いだ。
いやしかし、前にもこんなことがあった気がする。すぐに追撃が来て、俺の防御魔法が破られる、そんな予感がした。
「くそっ!?」
俺は悪態をつき、その予感に駆られて防御魔法を使いながらドリスの方に跳んだ。
すると、ドリスが何かを呟いた。
「発動せよ、ジルヴァディニド!!」
その声が発された瞬間、世界が停止したような気がした。




