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ループする世界、時を超える想い  作者: シマフジ英
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22 違和感(ルーツ視点)

 新たな世界に転生した俺はドリスという少女に出会った。死界討滅軍の養成アカデミーの生徒らしい。ドリスは俺を死界討滅軍に誘ってきた。俺が身を置くに相応しい場所と感じた。


 ……しかし。


 何故か、デジャブを感じる。俺の気のせいだろうか。どうもドリスとも初めて会った感じがしない。異世界から来たばかりの俺に知り合いなどいるはずもないから、間違いなく初対面のはずだが……。


 ドリスに、死界討滅軍の養成アカデミーがある街センクタウンへと案内され、俺は入軍試験を受けた。無事に試験に合格すると、連携の訓練のために養成アカデミーで一部の授業を受けることになった。ドリスと同じクラスだ。


 そのクラスにはドリスと同郷のデルロイ、マヤ、ウィルという生徒がいた。デルロイとマヤは既に正規兵を上回る実力を身に着けており、ドリスがそれに続くレベルだったが、ウィルは魔道士としては落第寸前の厳しい立場にあった。


 ドリスにウィルを見てほしいと頼まれ、自動魔導具を使った戦い方に転身することを薦めた。それはウィルの才能を開花させ、ウィルはたちまち同郷の三名と並ぶ実力者へと変貌した。


「ルーツ、ありがとう。これでウィルは戦えるわ」

「あ、ああ……」

 ドリスに返答した俺の言葉に疑問符が残る。


 ウィルの指導にいつもドリスは来ていたのだが、魔導具使いへの転身を驚くほどすんなりと受け入れていたし、何ならウィルの新しい戦法との連携がいきなりできていた。ウィルが作るものが予想できなかったから、少なくとも俺にはできない芸当だ。


 この世界に転生する前にユグドラシルの精から警告された、時の流れを巡る問題について俺は考える。もしドリスがこの問題に関して何らかの関係者で未来を知っているとしたら、それはドリスの行動の不思議さを説明できる気がする。連携の訓練で妙に俺の戦い方に合わせた動きができることも、その疑念に拍車をかけていた。


 しかし、ドリスにずばり聞くことができない。どうやら、時の流れの問題を巡って世界に矛盾が起きないように世界全体にかけられている呪いが発動しているようで、俺がドリスにその関連質問をしようとすると口が動かないのだ。文字に書くこともできない。


 ドリスの行動から探るしかないか。しかし、世界の矛盾とは何のことなのだろう。全く分からない……。



    ◇



 俺は死界討滅軍が課した連携訓練は終えていたものの、ウィルの指導をする役割があったからしばらく養成アカデミーにとどまった。期限が迫ってきたある日、ドリスから思わぬ提案を受けた。


「実地研修の補助?」

「ええ。ルーツと出会った時みたいに、私は実地研修を受ける予定なの。補助をお願いできないかと思って」

「研修先で実戦があれば良い訓練になるかもしれないけど、そうなるとは限らないのだろう? 必須科目というわけでもないし、どうして受けようと思ったんだ?」

「死界と戦うための武器があるかもしれないから。前の研修を受けたからこそ、ルーツとだって出会えたわけだしね」

「へぇ……」


 やはり、ドリスには何かあるのだろうな。しばらく一緒にいたが、先読みとしか思えない言動をすることがある。時の流れの問題とやらも解決しなければこの世界が危ういという話だったから、ドリスの行動には注意すべきだろう。


 俺はそう思い、補助役を引き受けた。


 ドリスが引き受けた実地研修は、魔物の巣食う古代神殿の調査だった。このような古代の建造物はこの世界にいくつかあり、強力な武器が眠っている場合があるらしい。ただしその可能性は低く、実地研修としても優先度は高くないものだ。


 俺とドリスは馬車で近くの村に移動し、その後は徒歩で神殿に向かった。道はほとんど残っておらず、森の中を進んでいく形だ。道中、魔物に襲撃される場面もあったが、ドリスは実戦にも慣れていたから問題なく撃退することができた。


「神殿って、あれか」

「そうね」

 進行方向に建造物が見えてきた。見たところ、そう大きい建物ではない。あれを調査するだけなら短時間で終わりそうなものだ。


「神殿内の魔物の様子、確認できる?」

「探知だな。了解」

 ドリスに答え、俺は探知魔法で神殿を調べた。建物の下から強い魔物の反応があった。どうやら地下があるらしい。


「地下があるな」

「そっか。でもそれなら、何か古代の武器が出てくるかもしれないわね」

 ドリスはあまり驚いた様子を見せなかった。これも先読みなのだろうか。


 神殿に入り、地下に移動する。古代の技術なのか暗くはなく、火魔法で灯りを用意する必要はなかった。中にも魔物はいたが、位置は探知魔法で把握できていたので、可能な限り交戦を避けた。しかし、最下層の扉の前に巨大な石人形がいる。


「うーん、あれは避けられないな」

「あの扉を守っているのかしらね」

 俺たちが近づくと、石人形が動き始めた。こちらに気づいたようだ。石人形の目が赤く光り輝く。


「気をつけて、撃ってくるわ!」

「む!?」

 ドリスの言葉通り、石人形の目から赤い光線が発射された。俺もドリスも横移動でそれを避けた。


 魔力を直接光線に変えているような攻撃だ。俺が前の世界で闇の魔力を操っていた時には取り入れていたやり方でもある。


「はぁっ!!」

 ドリスが水魔法で攻撃しようとする。しかし、石人形の大きな拳が振るわれており、ドリスの攻撃は間に合いそうになかった。


「ドリス、無茶だ!!」

 俺は叫び、風魔法の高速移動でドリスを抱えて石人形の攻撃を避けた。


「きゃっ……!」

 着地した時の衝撃でドリスが声を上げる。魔力を感知した俺は再度ドリスを抱えて跳んだ。予想通り、俺たちがいた位置を赤い光線が襲っていた。


 通路に入り、石人形から死角となる場所でドリスを降ろす。


「ドリス、慌てるな!」

「ご、ごめん……!」


 なぜ慌てているのかは分からなかったが、この相手はかなり強い。冷静に判断すると、ドリスが相手をするにはまだ早いと思われる相手だ。ドリスは何らかの縛りで魔力の成長に制限がかかっているようだから、あと数年後ならば余裕で勝てる相手かもしれないが。


 しかし今は今。だから、俺はある決断を下した。


「ドリス、あれの相手は俺がやる。君は下がって自分の身を守ることだけ考えろ」

「え……、ちょっと!」

 ドリスの返答を待たずに俺は石人形に飛び掛かった。


 実際、この世界に来てから一番の難敵だった。俺が闇の魔力を使っていた頃だったら簡単に勝てたかもしれないが、ないものねだりをしても仕方がない。


 相手の魔力を見て攻撃を予測して回避、さらにカウンターで攻撃。またはこっちから魔法で攻撃して戦闘が流れていく。腕力も相当強いようで、ただのパンチが物凄い威力だ。土魔法防御をしなかったら即死かもしれない。


 しかし、その痛みすらも、今の俺には心地よい。もちろん俺は死に急いでなどいない。俺が壊してしまったものの代わりに何かを救う、それが一番の目的であり、それができなくなることを考えれば死など望まない。俺はそんな選択を取って良い立場ではないはずだ。


 それでも、己を削って強敵と立ち向かうのは、今の俺にはこの上ない喜びだった。

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