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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
揺籃期

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たまに鍛冶職人の弟子(正しくは下働き)

 さて、今日は武具職人の店で手伝いだ。来なくていいのに、当然のようにギルが後ろから付いて来ている。

 ちなみに昨日、2週間に及ぶ狩りからニアムに帰還したばかりである。グルド達はこのあと1週間ほど、のんびり過ごす予定だそうだ。何故なら、トゲウサギの毒トゲでグルドとアラックは全身が湿疹だらけだからである。1週間という予定だが、治りが遅ければ次の狩りに行くまでもう少し掛かるかも知れない。

「お、来たか。ガキ共」

 店に入ると、ドワーフのガフがぎょろりと私達を見た。

 前世で誰もが思い描くであろうドワーフとまったく同じ、低身長、ひげもじゃ、ごつい腕の持ち主である。ある意味、完璧で素晴らしい。というか、髭というのは“ドワーフ(男)”の種族必須アイテムなのだろうか。むさ苦しいので、ガフを見るたびに剃ってみたい衝動に駆られて仕方がない。だけど、剃ってみてもしイケメンだったら……腰を抜かしそうだな。

「いつになったら来るのかと待ってたぞ。今日は剣を打ち直すからな。手伝え」

「わかった」

 無駄口は叩かず、私とギルは奥の工房へ向かう。ガフの店は、主に武器の修理を行う店だ。

 ―――グルド達は長期の狩りが多い。そのため、武器のメンテナンスは基本的に自分で行う。初めて短剣をもらったあと、グルドから丁寧に短剣の手入れの仕方を習ったものだ。

 しかし、こういうことは専門家からきっちり教えてもらった方が良いのでは?と私は考えた。ということで、2か月ほど前にガフに教えを乞うたのだが……その際、労働力提供を交換条件にされてしまった。

 工房へ行くと、10本以上の剣が置かれている。

「えっ。これ、全部、打ち直すのか?」

「お前らがなかなか来ないからな。納期が迫ってきて、どうしようかと焦ったぞ」

「他の人を雇えよ!」

「タダで使えるモンがいるのに、わざわざ人を雇うか」

 むう。便利扱いされている……。

 だが、通常の半値以下でナイフを売ってもらったりもしているので強くは出られない。それにドワーフの技術を間近で見られるのはいい経験になっているしな。

 そもそも、前世では剣は打ち直しても使い物にならなかったように記憶している。刀剣に興味がなかったので詳しいことは覚えていないが、再び熱を加えると金属の組成が変わるとか何とかで上手くいかなかったはずだ。

 しかし、この世界の鋼が前世とは違うのか、それともドワーフの秘技なのか。

 真っ二つに折れた剣はさすがに無理だそうだが、多少の欠けならば打ち直しで修繕できるらしい。

 私とギルは頭にタオルを巻き、大槌を持った。

 さあ、今日は夕方まで鋼叩きだ。気合いを入れなければ。


 日が暮れる頃にはヘロヘロになっていた。

 腕が持ち上がらない。指先も震えている。これじゃ、コップで水も飲めないかも知れない。

「よし、じゃあ、飯をおごってやろう。ついて来い」

 ガフは溜めていた剣が片付いたからだろう、汗を拭いながらご機嫌にのたまった。私とギルは声もなく、のろのろとガフの後に続く。

 それにしても。こんな火を使う仕事をしていて何故、その鬱陶しい長い髭が燃えないんだ。防火加工されているのか?ドワーフの髭の服を作ったら、もしかして耐火服として売れるのか……?

 私がそんなことを考えているとは露知らず、ガフは器用に顎の髭を三つ編みにし始めた。鍛造しているときはそのままのくせに、食事のときは何故か三つ編みにするのだ。意味が分からない。

「さ、行くか」

 ガフに連れられ、近くの大衆食堂へ行く。

「お、ガフ。今日はチビ連れか」

「お前、気を付けないとそのうちリンに店を乗っ取られるぞ~」

「怖いからなぁ、リン」

「こいつ、きっと100年生きた魔女だぜ」

「違う違う、魔族との混血だ」

「え?魔王の落とし児じゃねえか?」

 酷い言われ様だな。

 ニアムの外市に滞在する魔物狩人で、私のような子供は初めてらしい。おかげで、いつの間にかすっかり有名人である。ギルも狩人になるにしては早い年齢らしいが、私が悪目立ちしすぎて話にも上がらない。

「どうした、リン。おとなしいな」

 食堂の親父が注文もしていないのにガフにエールを渡し、私とギルの前にミルクを置いた。

 私は黙ってミルクを一気飲みし、親父に「おかわり」とコップを返す。ノドがカラカラだ。ギルも同じように一気飲みして、コップを親父へ渡す。

 最初の頃、「まだママのミルクが恋しい年頃かぁ?」とくだらない絡みをしてきた3流どころか4流、5流の狩人がいた。それを遠慮なく叩きのめして以来、私がミルクを飲むことを揶揄う奴はいない。

 大体、私はミルクは好きじゃない。

 が、体を作るにはタンパク質やカルシウムは重要だ。狩りに出ると肉、魚、卵などは充分量が食べられないのだから、摂取できるときにしっかり摂取しなければ。

 ……そして、これもギルがしっかり真似をしている。そのせいだろうか、ギルの成長率が著しい。私も背は伸びてきているのに、たった半年で5cm以上は伸びた。成長期にしても、これはずるいだろうと思う。

「なんでも好きなものを食え」

 ガフがエールを飲みながら、顎をしゃくる。私は遠慮なく注文してゆく。

 タンパク質に加え、亜鉛や鉄も必要だ。野菜も摂らなければ。

「トリの丸焼き。あと、野菜とレバーを炒めたやつ。豆の煮込み」

「オレも」

「……ギルよ。おまえ、リンの真似ばっかりじゃねぇか。そんなにリンが好きなのか?」

 にやっとギルは笑った。

 ムキになって否定すれば否定するほど周りは面白がるので、どうやら笑ってやり過ごすつもりらしい。……それよりも私の真似を止める方が効果があるというのに。

 どん、どん、と私達の前に大皿が置かれる。長期の狩りのあとのメニューはほぼ同じなので、厨房の女将さんは注文する前に作り始めていたようだ。違うメニューを頼んだら、どうするつもりだったんだ?

 ともかくも私とギルはすぐに食事を開始した。

「ちっこいくせに、まあ、よく食べるもんだぜ」

「あ、おい、リン。最近、肩がうまく上がらなくてよぉ。あとでマッサージしてくれ」

「今日はダメだ」

「いつもの倍は払う」

「ムリ」

「ちぇっ」

「え~、俺も腰をマッサージして欲しかったんだが」

「イヤ」

 以前、グルドやシムにマッサージをしてやったら、いつの間にかニアムで“神腕リン”という碌でもない呼び名が広まり、誰かれなくマッサージを頼まれるようになった。小遣い稼ぎになって助かる面はあるが……今日はもう、疲労困憊だ。冗談じゃない。

 この他にも、体調が悪いときの食事相談だの、効果的な筋トレ方法だの、やたら聞かれることが増えた。なんでも相談屋か、私は?!前世の知識は調子に乗ってあまり披露するもんじゃないな。

あとで活動報告にガフの落書きとSSを上げます~。

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