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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
変容期

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砂に囲まれた秘境の地へ

 ───目が覚めたら、窓のない石作りの簡素な部屋だった。

 両手両足には枷が付けられている。双剣も火竜のナイフもない。

 とりあえず、腹が減っていないので闇に飲み込まれてからそんなに時間は経っていない、と思う。

 さて、どうするか。

 現状を把握するまでは……まあ、下手に動かない方がいいよな。

 まったくもって、急展開だ。一体、何が起こったんだ?まさかと思うが転移魔法だろうか?そういう魔法はないと聞いていたんだが……。

 ともかく無駄に体力を消費せず、相手の出方を待とうと再び簡易ベッドに寝転ぶ。ギルのことも気になるが、たぶん無事なはずだ。フードの男は、ギルを諦めて私の方を選んだようなことを言ったし。

 という訳でしばらくただゴロゴロしていたら、扉が開いた。

 黒いフードの男が入ってくる。

「もう起きていましたか。君はやはり闇に対して親和性が高い」

「……あんた、深淵の塔の魔術師だろ?何故、闇の精霊魔法を使うんだ?ああ……なんだ、テネブラエ魔導国の人間なのか」

 男がぎょっとする。

 ふふん。私の記憶力の良さと目の良さを侮ってもらっては困る。男の声と顎の黒子は聞き覚え見覚えがあるし、男の手袋に六芒星のテネブラエの印があるのは見て取れた。

 戦闘中は余裕がなかったけれど、落ち着いている今ならそこから類推するのは簡単だ。

「……まったく、油断ならない子供ですね。さすがアルマーザを意のままに動かせるだけはある」

 いや、全然動かしていない。どちらかといえば、振り回されている方だぞ?

 しかし、男は勝手に話を進める。

「まあ、いい。いろいろと話す手間が省けますからね。……そう、私はテネブラエの人間ですよ。邪魔なアルマーザを消す役目を与えられてエルサール王国の深淵の塔へ潜入していましたが……ふふふ、君という面白い逸材を見つけた」

「面白い?」

 珍獣枠だろうか?

 少し顰めっ面になっていたら、男が近寄ってきた。

「魔法を使えないくせに、綺麗な魔法陣を描くというその能力です。その力……我々に役立ててもらいましょう」

「……嫌だと言ったら?」

「喚び出しの生贄になるだけですよ」

「なるほど、私に拒否権はないと。……でもその代わり、言う通りにすれば成功報酬は貰えるんだろう?そうでないと、こちらだってちゃんとした魔法陣を描く気にならないし」

 男を見上げ、当然の要求をする。くっくっくっと肩を震わせて男は笑った。

「たいした子供だ。少しは怖がった方がこちらの同情を引けるかも知れないのに」

「そんな気もないくせに、よく言う」

「そうですね、無駄な駆け引きは止めましょう」

 男の態度が改まった。私の前に膝を付く。

 フードの影から、ねちっこい視線がこちらに絡み付いた。

「───君がこちらの望む魔法陣を描けたら、一生遊んで暮らせる富と、大きな屋敷と、美女を用意しましょう」

 …………ちょっと待て。

「美女は要らん」

「ああ!……そうか、君は女でしたね。では、美少年を……」

「要らんわ!」

 私を男扱いしたこともどうかと思うが、美少年て。子供だぞ、私は(中身ではなく見た目)。そんなもん、侍らせる訳がないだろう。

 というか、一生遊んで暮らせる富も大きな屋敷も欲しくない。欲しくなったら、そのときに自分で手に入れる。

 ……が。

 それをここで言って交渉を長引かせても仕方がないか。こいつらが本当に報酬を支払う気があるかどうか、怪しいもんな。または報酬を与えるが、私をずっと飼い殺しにするかも知れない。どっちにしろ私だってこいつらの言う通りの魔法陣を描く気はないのだ。適当なところで手を打とう。

「金は欲しいが、屋敷は要らない。宝飾品とドレスにしてくれ。あと、うまい食事」

「いいでしょう。交渉成立ですね」

 男は口元をにんまりとさせた。本気で信じたかどうかは謎だが。

「ああ、成立だ。……だけど、たかが魔法陣だろ。わざわざ素人の私を拐ってまで描かせるのか?」

「ただの魔法陣ではありませんよ。我々がもう何年も描こうとしているのに、描けない魔法陣です」

 ?!

 そんな魔法陣、あるのか??


 枷を付けられたまま、部屋の外に連れ出された。

 上に行ったり下に行ったり、長い廊下をぐねぐね曲がったり。延々と歩く。途中、渡り廊下のようなところで外の景色が見えた。

 ……周囲すべてが砂漠だった。

「一番近くの人が住む村まで、一月は掛かります。逃げ出そうとしない方が賢明ですよ」

 私が思わず足を止めて砂漠を眺めていたからだろう、男が笑い含みに言った。

「……転移の魔法はないと思っていたが、闇の魔法にはあるのか?」

「さて、どうでしょう」

 まあ、正直に教えてくれる訳はないか。

 だけど、この砂漠。噂に聞いていた砂漠のどこかにあるというテネブラエ魔導国で間違いない。エルサールからはきっと、かなり離れていることだろう。私が何週間も意識を失っていたはずはないから、これはもう転移魔法に違いない。

 ───やがて、だだっ広い何もない部屋に着いた。男が私を振り返る。

「ここに、魔法陣を描いてもらいます」

「ここに?……どのくらいの?」

「この空間いっぱいの魔法陣ですよ」

 ん~、20か、30メートルくらいだろうか?これは……でかいな。

 それだけでかいと、まずちゃんと円を描くのが大変だなぁ。

 だけど、ガイドとなる印を随所に打っておけば問題はない気がする。

「大きすぎて、誰も綺麗に描けないってことなのか?」

「いいえ。何故か分かりませんが、途中で描けなくなるのです」

「途中で?」

「半分まで描けた者がいません」

 どういうことだろう?

 しかし、男は細かいことを説明する気はないらしい。気になるが……まあ、とにかく実際に描き出してみればいいか。

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